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コラム

建てる前のエネルギー計算は、実際のところあっているのか?

2015年4月27日

テーマ:環境・省エネ性能検討制度

コラムカテゴリ:住宅・建物

どのくらいのエネルギーを消費するのかを、”設計段階で把握すること”はとても大事ですね。
「でもそれって本当にその通りになるの?」

いいところに目をつけてくださいました! ホント、その通りですよね。
いくら計算でそうなったからといって、実際住んでみたら
「ぜんぜんちがうじゃん(>_<)」
ではまったく意味がありません。

計算結果が実際その通りになる前提として、

①断熱材やサッシ・玄関ドアの正しい施工・取り付けがなされていること

②気密がきちんととれていること(隙間風が入ってこないように!)

③暖房の室温設定・換気の風量設定についての正しい理解

これらがかなり影響してくるはずなので、ただ見た目が図面通りに住宅をつくるのではなく、正しい施工方法の習得と、住まい方についてのアドバイスが必要です。温度設定がたった1度上がっただけでも、灯油消費量はグンと上がってしまいます。
成人の大人であれば19~20℃/湿度50%前後が快適とされ、年を重ねれば重ねるほどじわじわと高くなり、60歳では23~24℃程度になります。必然、年間暖房コストは上がってゆくのですが、こんなことも設計段階で把握できていれば安心です。

私は設計段階で、10年以上も前から”QPEX(キューペックス)”という新住協が提供するプログラムソフトを用いて計算しています。このプログラムソフトはエクセルがベースで、過去に何度も修正を繰り返され、計算値と実際の消費量とのずれを補正し、気象データーを膨大に詰め込んだものです。本来かなり高額になってくるはずですが、低燃費住宅の開発に役立てられるべきだとの趣旨で、本当に格安だと思っています。

計算結果はこんな風に出力され、お客様に提示されます。


なかなか難しい言葉が羅列される中で、「年間暖房エネルギー消費量=灯油」が一番わかりやすい数値だといえます。
KM様邸の計算結果は791㍑。最新版のQPEX ver.3.31での計算値です。

Q値は1.496、なかなか優秀な値ですが、これくらいかかるんですね~(@_@;)
コストパフォーマンスでいうと、このあたりが最も”いいところ”と言えます。

ちなみに次世代省エネ基準(今年の3/31で廃止された基準)クリア相当だと年間灯油消費量=1623㍑というびっくりな結果が得られます。
「次世代」という文言から、いかにも「最先端」という感じを受けますが、
1600リットル~100円/㍑とすると、16万円/年間というところまで説明できているかは疑問ですね。
これをちゃんとあらかじめ説明しましょう、というのが前々回のブログの内容でした。
長野県環境エネルギー性能検討制度

先日この計算結果(年間灯油消費量791リットル)をはじき出したKMさんから、先日過去4年間の灯油消費量の集計結果を頂戴いたしましたので、公開をいたします。
計算値と実際のところを比較検証し、誤差があまりないことが確認できました。
まさにどんぴしゃです(^J^)

私たち建築設計の技術者は、このあたりまでちゃんとフォローしてゆくことが必要だと思います。
計算値と実際が、あまりにもかけ離れているようでは詐欺だと言われても仕方ありません。
自信を持って消費エネルギー量を示すには、計算と結果の比較検証をしてゆくことが不可欠です。

この記事を書いたプロ

塩原真貴

木造住宅を耐震・断熱構造に生まれ変わらせるプロ

塩原真貴(株式会社Reborn)

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