【変えられてゆく暮らし】 あなたはこの“変化”をご存じですか?
給与のデジタル払い、メリット・デメリットは?
2022年6月、経済産業省が発表したデータによると、2021年の日本のキャッシュレス決済比率は約3割(32.5%)。
クレジットカードが一番多くおよそ27%、次にSuicaやPASMO、WAONやnanacoなどの電子マネーが2%、コード決済1.7%などと続きます。
過去2015年の18.2%に対し、普及率は年々上がっていて、私たちの生活に無くてはならないツールになっています。
そんな環境においていよいよ4月から、選択肢の一つとして、銀行口座を介さずにスマホ決済アプリなどで直接給与を受け取れるデジタル給与(給与のデジタル払い)が解禁に。
利用者の利便性が高まることが期待されますが、不安はないのでしょうか。
政府が推し進めるキャッシュレス化。国内外の経済活動活性化や消費の拡大、インバウンド消費の増加なども期待されています。
企業側としては、
・振込手数料コスト削減の可能性
・キャッシュレス化を推進したい政府がキャンペーンなどを行った場合、キャッシュバック等お得なキャンペーン展開が期待される
・従業員への福利厚生のひとつとなる
・給与支払いが現金の場合が多い外国人労働者への対応がしやすくなる
などが期待されます。
また、従業員側には
・普段から利用しているツールを使えば現金チャージなどが不要になる
・週払いや即時払いなどの場合の給与受取が柔軟になる
・支出の管理がしやすくなる
・ポイント還元やキャッシュバックなどのキャンペーン適用を受けられる
・銀行口座がない従業員でも給与を受け取りやすくなる
などが想定されます。
しかし、同時にデメリットもあります。
- ・企業側の給与支払いの煩雑化、負担増(情報取得や決済アプリとの連携、銀行口座との分割を希望した場合など)
- 場合によっては新たな給与システムの導入が必要となる
- 資金移動業者を経由することになるため、資金移動業者が取り扱う際のルールや、経営破綻時の補償などが明確になっていないためトラブルになる可能性
- 悪意ある第三者による不正送金
- 情報漏洩、ハッキングなどのリスク
などにも注意が必要です。
デジタル給与は定着するのか?
デジタル給与が支払いの選択肢の一つとして解禁されたものの、事業者側に義務付けられるものではありません。また、世界的にみるとまだまだキャッシュレス後進国である日本、口座振り込みなど従来通りの方法を希望する従業員も多いでしょうし、企業側も手間や労力、コスト増を考えると慎重にならざるを得ません。まだまだ様子見、といった状況が続きそうです。
崩れる銀行のアドバンテージ!?
これまで労働基準法では、賃金は現金払いを原則としていて、労働者が同意した場合には銀行口座へ振り込める、という状況でした。
これにより、銀行は給与の振り込み先という圧倒的なアドバンテージを維持してきましたが、この4月からのデジタル給与解禁で、PayPayや楽天ペイといった、大手の資金移動業者の口座への賃金支払いが認められることになり、前述の通り企業側は振込手数料が抑えられる可能性があり、払い方が柔軟になることで副業やフリーランスなど自由な働き方も広がるかもしれません。
今後ますますキャッシュレス普及率が上がっていけば、自然とデジタル給与の普及も進むことでしょう。
デジタル給与は資産運用の追い風となる?
デジタル給与の解禁で注目されるのは、資産運用の間口拡大。
若い世代はつみたてNISAなど投資への関心も高く、デジタル給与を入口として、銀行や証券、資金移動業者が連携する銀・証・資の経済圏を構築する動きが進展しそう。
給与の振り込み先をPayPayなどに指定するとポイント付与率が上がるといった囲い込みをして、その先で各社それぞれグループ内での資産運用に移行させる仕組みづくりが進められています。
ただ、”金融教育難民”ともいえる40代以上には後ろ向きな意見もあるようで、国を挙げての動きになるにはまだまだ課題が残りそうです。