塾長の考え(成功の原因、失敗の原因)①

「羽生(はぶ)を出せ!」
これが当時「将棋AI」の、
プログラムを作成していた人たちの、
心の声。
「羽生(はぶ)」とは、
当時の将棋7大タイトルを、
1996年に全冠制覇し、
最強の将棋棋士として、
将棋界に君臨していた、
現在55歳の、
羽生善治(はぶよしはる)のこと。
2017年に史上初の、
永世7冠王になり、
2018年には将棋棋士で、
初の国民栄誉賞を授与された。
現6冠王の藤井聡太竜王名人が、
出てくる前の平成時代(30年間)、
絶対王者的存在だった。
この将棋界のシンボルといえる、
羽生善治を公開の場で倒す。
一方的に叩きのめす。
その結果、
自分たちが開発したAI将棋の、
優秀さを天下に知らしめる。
それはすなわち、
自分たちのやってきたことの、
「優秀さ」を万民に認めさせる。
その野望を達成しようと、
開発者たちが次々と、
プログラムを改良し、
それまでの将棋棋士の棋譜を、
すべてAIに学習させ、
どこからどう見ても、
絶対にプロ将棋棋士が勝てないような、
完璧に近い「将棋AI」を作る。
それに燃えていた時代である。
自分が中学生のときから、
ずっと憧れてきた将棋棋士たち。
その最高峰の存在である、
羽生善治を倒そうとしてくる、
それら「将棋AI」に対して、
「絶対に負けないでくれ!」
そういう想いをもって、
「人間対AI」
の対決を数年間見守った。
そして、
最終的には当時の名人である、
佐藤天彦名人との一騎打ちに、
とうとう持ち込まれて、
時の名人が2連敗することで、
「AIの勝ちだ!」
と勝利宣言されて終戦となった。
AIが人類の知恵を越えて、
技術進歩が加速度的に進んで、
社会変化が人類には、
「予測不能となる」
と推定される、
「技術的特異点」のことを、
シンギュラリティというのだが、
その年は
「2045年だ!」
と数年前まで言われていたが、
その目測は甘かった。
今では、
「2030年に超える」
と言われている。
今では各国が、
AIを開発するために、
驚異的ともいえる予算を組み、
「AI大戦争時代」に突入した。
私の世代も含めて、
いわゆる現在親御さんたちの、
誰もが見たことも聞いたこともない、
人類以上の知能をもつAIが、
仕事および生活全般に浸透するという、
人類史上初の時代がやってくる。
「将棋の分野では…」
当時のAI開発者の1人が、
そう前置きした上で、
「AIが人類を越えた日」
と勝利宣言を出した。
戦争経験がない私だが、
その宣言は、
降伏要求の最終宣言のように、
思われた。


