塾長の考え(自立型の指導)②
午前9時57分。
私は目の前の作業を止めた。
東京大学の入試問題(国語)の整備、
これを2001年から2020年まで行った。
今年の3~4月までに、
東大志望の生徒が来た時のために。
受験指導上必要なときは、
すぐに指導できるようするためである。
午前9時57分から10時までの間、
私は黙想をした。
午前10時は合格発表の時刻だからだ。
宮崎大学医学部医学科(地域推薦枠)。
北斗塾予備校から生徒が1名受験している。
Hちゃん(2浪目)だ。
その発表だ。
時刻は…10時7分を過ぎた。
「合格したな…」
私の希望は確信に変わった。
不合格だった生徒は通常、
発表時刻から7分以内に連絡してくるからだ。
ただし、
信頼関係がしっかりとできている生徒の場合だが。
午前10時24分、
私のいる部屋に生徒が現れた。
もちろんHちゃんである。
「受かりましたぁ(笑顔)」
「そうだろうね」
「ありがとうございました!」
「うん」
そこから目の前に座ってもらって、
くわしくいろいろと聞いた。
まず先日のこと。
「明日はお母さんは仕事を休みます」
「え、そうなの?発表を一緒に見るため?」
「はい、多分」
「いい思い出ができるね、お母さん」
「そうだといいんですけれど~」
そして今。
「で、お母さんといっしょにPCで見たんだよね?」
「はい」
「10時ぴったりにつながった?」
「最初ダメで、2回目にはつながりました」
「ふんふん、それで?」
「お母さんが受験番号は言わないでって」
「え、何で?」
「え、わかりません」
「じっくりまずは全体を見るということか…」
「で、私が先に受験番号を見てから…」
「お母さんに報告するという…こと?」
「はい、それで私が言おうとしたら…」
「もうそのときは笑顔でしょ、自分が」
「はい、そうなんですよぁ(笑)」
「で、何て?」
「私が『あ、あった』って言いました」
「で、お母さんは何と?」
「『良かったね~、おめでとう!』って」
ここが大事なところ!
私の任務(責務)が終了した瞬間だ。
その後、
お父さんに電話で連絡した。
お父さんが電話越しに泣いていることがわかり、
Hちゃんもその場で泣いた。
それを見てお母さんもこらえきれず泣いた。
それから、
お父さんのお母さん(おばあちゃん)にTV電話。
おじいちゃんが「バンザーイ!」と言って喜んだ。
それから、
お母さんのお母さん(おばあちゃん)に電話。
「良かったね~、おめでとう!」と言われた。
その後、
おじいちゃんが親戚一同に一斉にLINEをした。
親戚みんなが「おめでとーう!(祝)」となった。
その後、
お母さんがおじいちゃんに電話をした。
「本人からみんなに直接言いたかったのに!」
おじいちゃんは注意をされた…。
こんな幸せな光景が生まれた。
これが、
私が塾長として32年間もの間、
塾を続けてこられた、
本当の原動力である。