社内コミュニケーションがしっかりとれている企業が得られるメリットとは
部下のマネジメントにたずさわる管理職の方が、遅かれ早かれ向き合うことになるのが「部下の転職」です。
手塩にかけて育ててきた部下が会社を辞めてしまうのは、とても残念なことです。上司としては、なるべく長く働いてもらいたいと考えるものですね。
部下が会社をやめる理由、そして、転職をする前に部下からどういったサインが出ているのかなどについて見ていきましょう。
一生涯で転職を経験する人は80%以上
働く人の多くは、一度や二度は「転職」の二文字が頭をよぎったことはあるでしょう。エン・ジャパンが転職回数について調査したアンケートでは、各年代における転職経験の有無は次の通りになっています。
<転職をしたことがある人の割合>
20代:63%
30代:80%
40代:86%
50代:84%
60代:82%
(エン・ジャパン、「退職」に関するアンケート2014年)
60代まで働くと仮定すると、80%以上の人が転職を経験するということがわかります。1人の社員が転職するとなると会社にとっては一大事ですが、アンケートを見てみると、ごくごくありふれたことだということがわかります。
会社を辞める部下の気持ちとは
部下が辞めることは、貴重な戦力を失うことになりますので、できれば離職を阻止したいと考えます。会社側で改善できることがあれば最大限善処することで、転職を思いとどまってくれる可能性が、ほんのわずかながらでもあるからです。
部下が伝える離職理由にはどのようなものがあるのか、大きく3つに分けることができます。
【スキルアップ・独立】
ポジティブな転職理由として挙げられるのが「スキルアップ・独立」です。
自分の興味のある商材を扱う業界で再チャレンジしたい、未経験だが、企画・マーケティングに興味があるので若いうちにチャレンジしたい、独立起業したい、資格を取得して子供のころからの夢を叶えたいといった具合に、自身のキャリアビジョンに基づいたスキルアップ・独立を意図しているケースです。
【会社への不満】
ネガティブな転職理由として挙げられるのが「会社への不満」です。
労働時間が長すぎる、仕事にやりがいを感じられない、上司や同僚と合わない、仕事が自分に合っていなくて辛いなど、さまざまな理由が考えられます。原因は一つだけではなく、いくつもの不満が積もりつもった結果として転職をするケースが多いでしょう。
【プライベートな理由】
結婚・出産・育児・介護・パートナーの転勤など、プライベートな事情によってやむをえず離職するケースもあります。
「スキルアップ・独立」「プライベートな理由」については、離職の意向を聞いた時点で、転職を思いとどまらせることはほぼ不可能といっていいでしょう。
「スキルアップ・独立」に関していえば、自身のキャリアアップを前提にした前向きな転職だからです。別れを惜しみつつ、転職後のパートナーシップやビジネス上のコラボレーションなどに期待するのがよいでしょう。
また、「プライベートな理由」も同様に引き止めることが難しい離職理由です。誰しも仕事とプライベートのバランスを取りながら人生を歩んでいくものであり、一人ひとりの人生に及ぶ事柄に、会社が介入することは難しいでしょう。
パートナーの転職など、本人の気持ちだけではどうすることもできないケースもあります。
しかし、「会社への不満」が離職理由なのであれば、ほんのわずからながらでも、離職を防ぐことができるかもしれません。
部下が会社を辞めるサイン
離職を防ぐためのポイントをお伝えする前に、部下が会社を辞めるサインについてお話したいと思います。
ネガティブな理由で離職を検討している場合、なんとなく元気がなかったり、仕事にやる気が見えなかったりといった具合に、モチベーションの低下が本人の表情や仕事への取り組み姿勢などに表れてきます。
具体的には、最低限の仕事が終わるとさっさと帰ったり、誰ともコミュニケーションを取りたがらなかったり、ミスが多発したり、遅刻が増えたり、休みがちになったりといったことが起こってきます。「会社とのかかわりを極力減らしたい」といった気持ちが、仕事への姿勢などに出てきます。
部下の退職を防ぐポイント
部下の退職を防ぐには、上記のようなサインを出した時点で対策をとることが何よりですが、どうしてもサインに気づくことができず、退職に関する相談があった際には、「本人の気持ちをくみ取りながらじっくりと話を聞いて本音を引き出すこと」が大切です。
話を聞く際には、二人で話せる会議室やカフェなど、まわりを気にせずに深い話ができる場所がよいでしょう。そして、離職の意向が伝えられた際には、その悩みに沿って、どのような解決方法がありえるのか、一緒になって考えることが大切です。
たとえば、「今の仕事が自分に合ってなくてしんどい」といった場合には、さまざまなアクションが考えられます。
自分の強みだと感じている部分があれば、その強みを生かした部署への異動がありますし、具体的に苦手だと感じている業務については別の担当者に割り振ったりといったことも考えられます。
マネジメント層には、一人ひとりのパフォーマンスを最大化することが求められています。そのためにできることを話し合うことが大切です。上司の熱意が伝わり、解決策がうまく作用すれば、離職を阻止することができるかもしれません。
しかし、部下が離職を決意するまでに、日頃から社内コミュニケーションを密にとり、仕事の進捗状況だけでなく、仕事への思い、そして今後のキャリアプランについても話をしておくようにしましょう。