経営者・管理者は、知っておくべき職場における社員のストレス要因

小野由樹子

小野由樹子

テーマ:部下から信頼されるコミュニケーション

日本では、職場ストレスや過労が大きな社会問題になっています。精神的なダメージを受けた社員の長期的な休職や、職場で受けたパワハラに対する訴訟など、さまざまな問題が発生しています。
今回は、職場で社員が感じるストレス事例と共に、ストレスを抱える社員を減らすための対処法について解説します。

職場における社員のストレスとその軽減方法

労働安全衛生法が2015年に改正され、50人以上の従業員が在籍している企業では、ストレスチェックを行うことが義務化されるようになりました。

今や、働く社員のメンタルマネジメントは、企業に求められる最重要課題の一つになっています。一人ひとりの社員が、心身ともに健康を維持しながら、やりがいを持って働き続けることができる環境を構築することが求められています。

そのような時代背景のなか、実際に企業で働くスタッフが感じるストレスにはどのようなものがあるでしょうか。以下に代表的な事例をご紹介します。

対人関係に関するストレス

対人関係のストレスは、職場におけるストレスの大部分を占めているといっても過言ではないでしょう。

対人関係の問題に起因するパワハラ、セクハラ、モラハラ、マタハラなどの言葉は近年、とくにクローズアップされるようになり、職場内ハラスメントの実態が顕在化されるようになってきました。

それでも、声をあげられるのはほんの一部の人だけです。ハラスメントに悩まされている人は今も決して少なくありません。

都道府県労働局に寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は、毎年着実に増加しており、平成28年度には7万件を突破しています。精神障害を発症し、労災補償を受ける人数も年々増加の一途をたどっており、平成28年度には500件近くにも達しました。

ハラスメントやストレス対策には、相談窓口を設けたり、定期的な面談の機会を設けたりするなどして、積極的に対策していくことが大切です。

仕事配分、配属部署、役職、役割などのミスマッチによるストレス

仕事配分のミスマッチ(過剰な仕事量を担当する)は、過労を引き起こす可能性があるものです。配属部署や役職、役割のミスマッチは、モチベーションや生産性の低下を招く可能性をはらんでいます。

これらのストレスを減らすには、事前に本人が思い描いているキャリアビジョンや得意分野・強みなどをしっかりヒアリングし、適切な仕事量の分配や適性のある配属を行えば防げるものばかりです。

ストレス要因を減らし、本人のパフォーマンスを最大限に発揮するには、定期的に上司との面談を設けることをおすすめします。他部署の上級社員や役職者と行うメンター制度や、年齢の近い先輩社員との面談を取り入れてみるのもよいでしょう。

ワークバランスの崩れによるストレス

ワークライフバランスが崩れてしまうと、モチベーションや企業への満足度が著しく低下してしまいます。プライベートを楽しむ気力がなくなってしまうばかりか、意欲的に仕事に取り組もむやる気さえ、そがれてしまうことでしょう。

こういったストレスを軽減するにあたっては、社員一人ひとりの取り組みではどうにも解決できない場合が多いです。そのため、抜本的な見直しが必要になってきます。

社会保険労務士などに就業規則の刷新をサポートしてもらったり、新たな就業ルールを設けたり、福利厚生を充実させるなど、制度面で適切な改革を行うことが大切です。

そのほか、出勤日は10時間働くかわりに週休3日にしているユニクロの事例などもユニークで、休日を増やすことでスタッフの満足度を向上させています。

働く時間・場所を固定されていることによるストレス

自分が働く時間や場所をコントロールできないことに対して、ストレスを抱く人もいます。

たとえば、仕事の進行ペースやスケジューリングなどを自分が思うようにコントロールできないことで、強いストレスを感じてしまうのです。

このカテゴリのストレスを軽減するには、自分の好きな場所で仕事をするフリーアドレス制度や在宅で仕事を行うリモートワーク、フレックスタイム制度などが効果的です。
また、働くスタッフの状況(育児・介護など)に応じて、働きやすい就業時間を個々に設定してあげるのもよい方法でしょう。

事前に「可視化」することで多くのストレスは抑えられる

ストレスの事例をご紹介しましたが、いずれの場合においても、「一人ひとりに向き合った対応」を心がけることで、職場内のストレスの多くを解消できる可能性があります。

働けば働いた分だけ報われていた高度経済成長期の日本では、収益を上げていくための枠組みをトップダウン方式で作り上げました。そして、従業員をがむしゃらに働かせ、会社の方針に従わせるだけで、一定の売上を維持することができました。

しかし現代は違います。労働人口の減少と共に、海外労働者も含めて男女・年齢問わず多様な境遇の人たちが支え合いながら、お互いに思いやりを持ち、誰もが働きやすい職場環境を構築していくことが求められています。

多様性をふまえた職場環境を作るためには、面接の段階で、会社の就業規則や社風、企業ビジョンなどをしっかりと伝えつつ、求職者のキャリアビジョンや強み・スキルなどをしっかり把握し、共有しておくことが大切です。こういった取り組みにより、大きなミスマッチや、ストレスを防ぐことができます。社員一人ひとりとの対話を大切にして、ストレス軽減を目指しましょう。

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