組織が機能しないのは、コミュニケーション不足?
昨今、数多くのメディアで取り上げられているのが、社内のコミュニケーション不足です。メールやチャットといった連絡ツールの発達にともない、対面によるコミュニケーションが減少していているのが現状です。このコラムでは、社内のコミュニケーション不足がもたらす問題について解説します。
なぜ、社内のコミュニケーションは必要なの?
そもそも、なぜ社内のコミュニケーションを充実させる必要があるのでしょうか。その理由の一つが「組織の生産性」です。
アメリカのマッキンゼーによる調査によると、スタッフ間で密な連携が図られることで、組織の生産性は20~25%も向上し、年間1.3兆円ドル(日本円で140兆円~)もの経済効果をもたらすことを報告しています。
一方、アメリカのSMB Communicationの調査では、社内のコミュニケーション不足による経済損失を従業員一人当たり年間2万6000ドル(日本円にして300万円相当)であると試算しています。
このように、社内のコミュニケーション不足は、売上低下に直結します。「企業存続をおびやかす重大かつ深刻な問題」をはらんでいるのです。
社員はコミュニケーションが不足していると感じている
現場の社員の実感はどうなのでしょうか。HR総研によるアンケート「社内コミュニケーションに関する調査(2016年)」によると、「社内のコミュニケーションに課題があると思うか」という問いに対して、実に74%もの企業が「大いにそう思う」「ややそう思う」と回答しています。
このアンケートは上場、および未上場企業229社の人事担当者からの回答をまとめたもので、1000人以上の大企業の場合も300人以下の中小企業の個別統計もほとんど大差はありませんでした。社員の人数を問わず、日本企業全体で露呈している問題といっていいでしょう。
社内コミュニケーションがうまくいかない原因は?
このように、社内コミュニケーションが不足し、日本企業で問題となっている原因は何なのでしょう。
その大きな原因の一つは「組織風土・社風」です。HR総研の調査では、「コミュニケーションを阻害している原因」の第1位に、「組織風土・社風」がランクインしています(54%)。そのほか、ITツール依存(33%)や食事会・飲み会の減少(21%)なども要因として挙がっています。
社内コミュニケーション不足がもたらす問題とは
先述の通り、社内コミュニケーション不足がもたらす問題は、「組織の生産性の低下」が最も大きいですが、それ以外にも以下のような問題を引き起こす可能性があります。
【離職率の向上】
スタッフ間のコミュニケーションが不足することで、個人が抱えている悩みや課題などが見えづらくなります。
そうこうするうちに個々人のなかでストレスが蓄積していき、大きな不満となって爆発し、結果的には離職へとつながっていくのです。
離職率が高い組織では、新しい社員を雇うための採用コストも余計に発生してしまうため、経営を圧迫することにもなります。中途採用の採用コストは、売上の5%~10%にものぼるといわれていることからも、企業にとって採用にかかる費用は大きな負担になっています。
【営業機会の損失】
スタッフ間のコミュニケ―ションが行われていない組織では、一人一人のスタッフが自分の手の及ぶ範疇の仕事しかしなくなってしまう可能性があります。そのため、規模の大きな仕事やチームワークを生かした仕事を獲得する機会を失ってしまう恐れがあります。
メンバー間や部署間で協働して仕事を成し遂げるモチベーションがあれば、チームプレーで売上や成果の最大化を狙うこともできるようになるでしょう。
【顧客満足度の低下】
顧客の要望にしっかりと応える迅速なレスポンスや、顧客の利益につながる成果物の提供が「顧客の満足度を追求するアクション」とすれば、それは一人で成し遂げられることばかりではありません。
スタッフ同士が互いの強みや知見を共有し、顧客の利益につながるリソースを提供し合うことが何よりも大切なのです。
スタッフ間のコミュニケーションが不足している組織では、誰が何の仕事をしているのか、得意な分野は何なのかわからず、自分の手の及ぶ範疇での仕事しかできないため、顧客満足度を最大化することは難しいでしょう。
上に挙げたように、社内コミュニケーションの不足から、さまざまな問題が発生します。コミュニケーションが希薄になってきたと感じている経営者の方は、問題を放置せず、早いうちからしっかりと対処することが大切です。
「三人寄れば文殊の知恵」のことわざの通り、スタッフ同士がお互いのスキル・知識・情報を共有し、それらの知見を有効活用することで、顧客満足度が向上し、ひいては中長期的な売上拡大にもつながっていきます。
また、コミュニケーションを図ることでスタッフが抱える問題にもいち早く気づくことができ、離職に至るのを未然に防ぐこともできます。