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多くの方が、腰痛で鍼灸治療を受けると、痛い腰に鍼をすると思われています。実際、鍼灸の学校でもそのように教えてことがあります。
しかし、実際に痛いところに鍼をして、痛みはどうでしょうか?
何件も治療院に行ったけど変化無かったとかの経験はありませんか?
当院では、痛みのある部位ではなく、痛みのあるところではなく遠隔部位、例えば、肩の痛みに足関節部位などに鍼灸治療をしています。その方法をご紹介いたします。
例えば、私は、16年間高齢者総合福祉施設で鍼灸治療を行ってきましたが、麻痺がある、腰が痛くて動けない等の患者さんは、服を脱いだり着たりするのも大変、ベットから車椅子に移乗するのも一人では難しいことを多く経験しました。こんな時に腰痛出あれば、腰ではなく、仰向けに寝ている状態や車椅子に座っていても治療できるとしたらどうでしょうか?
患者さんや介助者にも負担なく出来る方法でもあります。その方法が、「董氏揚氏奇穴」という方法です。
鍼によって引き起こされる生理反応
鍼によって引き起こされる方法は、下記のようなものがあります。これらは董氏楊氏奇穴に独自の反応ではなく、鍼灸全般にも見られる反応ですが、「遠隔」であることが臨床上は極めて重要な意味を持ちます。
①血流増加
②鎮痛
③抗炎症
④神経系の調整
董氏奇穴とは、どのようなもの
奇穴というのは、いわゆる経外奇穴の「奇穴」ではなく、「奇妙な」「珍しい」「特に効く」といった意味で使われています。位置は、一般の経絡に沿っており、経脈間の幅のあるベルトを指すことが多い。体幹部は、あまり使用しない、主として、手と足に取穴する。
漢の時代から董家に門外不出の奥義として伝えられてきた鍼の技法のこと。董氏奇穴は、最近まで口伝で生き延びてきた、限りなくオリジナルに近い存在。さらに、体系化がなされたことで、原理原則を修めた者であれば、等しく再現できる稀有な手法でもあるのです。
董氏奇穴の歴史
董家に口伝されていたが、董景晶(1916-1975)が董家外部の者に伝授、初めて世間に知られるようになりました。
1949 年( 33 歳)、軍に入隊し、家伝針灸をもとに開発した独特の針法。生涯に 30 万人の患者を診、うち 10 万人はボランティアで治療した患者。 軍隊で苦しむ兵士の治療によって実践的な針灸を生み出す。治療効果が高く、 1971 年にカンボジアのロンノル大統領の脳卒中後遺症を治療して名声を博し、 国民栄誉賞を授与された。
董景晶が、1962年より弟子を募集し教育が行われた。董景昌の直接の弟子は、 73 人。その弟子のひとりである楊維傑が中心となって『董氏針灸』を整理して体系化がなされた。1973年に董景晶の講義や談話を楊維傑がまとめて『董氏鍼灸正経奇穴学』を出版した。楊維傑は、多くの書籍を著し、教育、出版、研究を行い董氏鍼灸の世界に普及するのに大きな貢献をした。そこで、我々は、董氏揚氏奇穴と呼んでいます。
董氏楊氏奇穴の特徴
一番の特徴は、患部に鍼を刺入しない遠隔治療であること。主に肘から指先、膝から足先のツボを用いることが多い。 身体を巡る“気”の経路である経絡同士の関係や、740余の独自のツボ(奇穴)を利用して、患部から離れたポイントを刺激することで種々の生理反応が引き出されます。
それ以外に
①治療効果が高いこと
②治療に使うツボの数が少ないこと
③奇穴を使うこと。
などが挙げられます。
独自の奇穴
「董氏楊氏奇穴」の名の通り、740余りの独自の奇穴をもつ鍼灸学校の教科書には載っていません。
連綿と受け継がれてきた董氏奇穴の歴史の中で、特にパワフルなものが今に遺されているのです。
また、ツボは、十四経絡(生命エネルギーのルート)上にツボが並んでいますが、董氏楊氏奇穴は、経絡上ではなく手指、手掌、前腕、上腕、足指、下腿、大腿、耳、頭顔面、前胸部、後背部などに全身を12に区分して表記されています。
反応の速さ
鍼をしたことによる生理反応は、速やかに引き起こされます。特に、鎮痛効果の発現の早さと強さには目を見張るものがあり、場合によっては数本の鍼で痛みを取り去ってしまうこともあります。
適応の広さ
特に痛み症状に対して董氏楊氏奇穴を用いていますが、鍼によって「血流増加・抗炎症・神経系の調整」が行われるのであれば、痛み以外の症状にも効力を発揮するであろうことは容易に想像できます。
事実、耳鳴りやめまい、その他自律神経症状に対しても董氏楊氏奇穴は用いられています。
特別な方法で治療するの?
治療には、複雑な手技は、行わず、鍼の刺入深度や方向によって効果がでる方法です。
手技の特徴的な方法は、下記の様なものがある。
①倒馬法。1本鍼をした後に、1穴から数穴鍼をする方法で効果の足りないときに補足してゆく方法。
②動気法。鍼を刺入後、患部を動かし気を動かす方法。
実際の症例①
80代後半の女性で、主訴は腰痛です。
ベッドから起き上がるのがる時に痛みが起こり、日常はコルセットを着用して車椅子で過ごしています。
また、尿道カテーテルされたいるので、治療室でベッドに移動するのもしんどいので、車椅子に座った状態で治療を行いました。
治療は、腰ではなく、頭に鍼をしました。
頭に数本鍼をした直後、動いてもらうと痛みが軽減していました。それからしばらく鍼を刺したままおいて、鍼を抜くともっと改善していました。
実際の症例②
70歳女性
半年前より右肩を動かそうとする痛くて上がらない。トイレに行ってもズボンがあげられない。病院に行ってリハビリをしてもなかなかよくならない。
左の足関節部に鍼をすると痛みが軽減し、上がるようになる。
鍼を刺した直後に「えっ、上がる、痛くない。」と驚かれていました。