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中隆志

被害者救済に取り組む法律のプロ

中隆志(なかたかし)

中隆志法律事務所

コラム

犯罪被害と国家の責任

2011年7月20日

犯罪被害を受けた人というのは、落ち度がない人が大半である。
 こうした犯罪被害を受けた人が蒙った損害を被害者やその遺族本人に負担させてよいのかというのが根本的な問題としてある。
 犯罪がこの世から消えてなくなることはないであろう。悲しいことではあるが、机上の空論を述べていたとしてもどうにもならない。
 壊れ窓の理論のように、社会的に犯罪が発生しないような周辺環境を整えることは出来ても、それで犯罪が全てなくなる訳ではない。

 犯罪被害が被害者の落ち度なくして発生するものである以上、誰しもが被害者となりうる危険性がある。JRの駅で突き落とされた男性も、自分がそのような被害に遭うとは想像もしなかったであろう。
 その意味で、誰しもが被害者になりうるのであるから、犯罪被害の蒙った被害を社会全体で支える仕組みが必要だと思うのである。
 何度かこのブログでも書いたが、私が犯罪被害者支援に関わるようになったことも偶然である。たまたま弁護士会の法律相談に来られた人が深刻な犯罪被害を受けた方であった。弁護士としても私はまだ駆け出しであった(別に今偉くなった訳ではないが)こともあったし、その頃は被害者のために法律は何もないといって等しく、乏しい証拠資料で検察審査会に不服申立をせざるを得なかった。その事件は責任能力が問えないとして不起訴となっていたからであった。
 結果として検察審査会での不服申立が通り、再捜査の末一転して起訴となった。
 新聞でも相当報道され、この事件をきっかけとしてテレビにも出演した。
 今は不起訴になった事件であっても、ある程度の記録を謄写することが出来る。隔世の感がある。

 しかし、犯罪被害者に対して、法制度が整ってきたとはいえ、これを真に社会全体で支える仕組みというものは構築されていないと思うのである。
 犯罪被害が蒙った全ての経済的・精神的損害を補償する制度がないのである。
 被告人に対して判決を取得したとしても、それはただの紙切れでしかない。
 世の中では、判決が出たらそれで被害回復がされたかのように誤解している人もいるが、被害が回復されたといえるためには、判決によって認められた損害が現実に支払われなければならない。
 しかし、被告人には通常資力はなく、支払われることはない。一部支払われる制度はあるにはあるが、大変お寒い保障内容である。

 犯罪被害による補填を国が代位して行ったとしても、国家予算の中の割合でいえばたかがしれているはずであり、真剣に制度設計を考えれば可能なはずである。無駄なところに予算を割いて、票の獲得ばかりに走る現代の政治家に理念はあるのであろうか。

 私は犯罪被害については、国家が代位して支払い、その後に国家が被告人等から回収する制度を作るべきだと前から述べているが、「ムシャクシャして」何の関係もない人を殺害するという事件が発生することを見るにつけ、1日も早くこうした制度が構築されることを望むのである。
 その回収することについて、国が弁護士に費用を支払って委託すれば、新たに公務員を雇用する必要もないと思うのである。

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