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原木きのこ「京茸」の愛称に込めた想い|京ことばで名づけた4つの個性をご紹介

宮西真也

宮西真也


京都京北の山あいでは、原木きのこの秋の収穫がもうすぐ始まります。ほだ木の様子を見て回りながら、毎年この時期になると「今年もあの子たちに会える」と、少しそわそわした気持ちになります。

私たちの原木きのこには、「京ぽんぽん」「京おはな」「京てずま」「京でぼちん」という、ちょっと変わった名前がついています。なぜ「京茸」というブランドを掲げ、一つひとつに愛称をつけたのか。今日は収穫を前に、その命名に込めた想いと、それぞれのこだわりをお話ししたいと思います。

業界衰退というピンチから生まれた「京茸」

私がきのこ栽培を始めたきっかけは、母が運営していたNPO法人の事務局で、京都市の森林公園の現場責任者を任されたことでした。キノコ狩り体験を担当するうちに興味を持ち、栽培に乗り出したものの、周りに教えてくれる人はいなかったため、気温や天候が生育にどう影響するのかをつぶさに観察しながら実践と改善を繰り返してきました。

公園の閉鎖が決まったときに、購入してくださっていた方々から「栽培を続けてほしい」という声をいただきまして、2023年に独立しました。社名の「百里衆(おざとしゅう)」には、里山と共に歩む百姓集団という意味を込めています。

しかし、株式会社百里衆を設立して育てたきのこをどう売っていくかを考えたとき、目の前にあったのは「業界の衰退」という大きな事実でした。

実際、生しいたけの生産量は6万1,750トンで、そのうち菌床栽培が95.1%を占めています(出典:林野庁「特用林産物の生産動向」令和7年特用林産物生産統計調査、2025年実績・2026年発表)。

原木しいたけの生産者は約1.1万戸ですが、それも高齢化の進行により10年間で半減しています(出典:林野庁「令和6年度 森林・林業白書」、2023年実績・2025年発表)。

このように、原木で育てるきのこはいわば絶滅の危機にあります。だからこそ、埋もれない名前が必要だと考えました。

※菌床栽培との違いについては、以前のコラムでも詳しくご紹介しています(https://mbp-japan.com/kyoto/miyanishi-shinya/column/5221246/)。

読めなくても伝わる「京都の木の子」という名

京茸(きょうたけ)とは、株式会社百里衆が京都市右京区の京北で育てるきのこのブランド名のことです。京都というブランドと、そこで生まれた木の子であること。このド直球ストレートな組み合わせなら、たとえ読み方が分からなくても、「京都の木の子」という意味はきっと伝わると考えました。

そのうえで、きのこ一つひとつにも愛称をつけました。名前を与えることで独自の息吹が吹き込まれ、京茸ブランドの中でそれぞれが存在感を示せるのではないか。食べてくださる方にも愛され、覚えていただきたい、そんな願いを込めています。

なお、京北産であることを誇りとして示すためにも、愛称の頭に「京」をつけることに迷いはありませんでした。さらに、京ものは世界に通じるものだという思いから「京ことば」を使うことを発案しました。それぞれのきのこの特徴とシンクロする言葉を一つずつ取り合わせています。

私自身、食事の提供や食品の販売、広告の制作と、会社員時代にさまざまな形で商品の流通やプロモーションに携わってきましたが、お客様にどう届けるかを考える視点は、この名づけにも生きていると感じています。

看板坊や「京ぽんぽん」と香りの「京おはな」

「ぽんぽん」は、京ことばで赤ちゃんのお腹のことです。ぷっくりと肉厚な原木しいたけの見た目と、思わず手に取りたくなる愛おしさがぴったりだと感じて名づけました。京ぽんぽんは、京茸ブランドを背負って立つ看板坊やです。

原木栽培では、山から切り出した木に穴をあけて菌を打つのですが、菌糸は木の繊維に沿って伸び、木の養分を吸収しながら育っていきます。私は京北の風や湿度、温度を読みながら、じっくりと菌を回すことを何より大切にしています。

京ぽんぽんは、クヌギやコナラなどの原木に菌を打ち、半年以上かけて培養します。手間も時間もかかりますが、身が詰まってぷりっとした食感と、森の中にいるような豊かな香りが生まれます。京都の料理店や、主に関西圏の百貨店、ホテルチェーン、星付きのレストランにもお届けしています。

「おはな」は、花街を意味する京ことばでして、原木まいたけの芳醇な香りと、花びらが開いたような品のある姿を重ねました。

京おはなは、なんといっても香りです。鼻を突き抜けるような芳醇な香りと、ジューシーでシャキシャキとした食感が特徴で、京都府産の自伐原木から育ったピュアな京都っ子です。

不思議な「京てずま」と希少な「京でぼちん」

「てずま」は、京ことばで手品のことです。原木霊芝の姿には、手品のように魅惑的で不思議な雰囲気があり、その様子がこの言葉にぴったりだと考えました。

京てずまの特徴は、爆発的な生命力。原木まいたけのおよそ半分、約2年で、原木はセルロースだけの状態になってしまいます。京おはなと同じく、京都府産の自伐原木から育ったピュアな京都っ子です。

「でぼちん」は、額(おでこ)を意味する京ことばです。おでこのようにツルンとした原木なめこの見た目と、「ちん」とつく響きの愛くるしさに惹かれて名づけました。

京でぼちんは、シャキシャキとした食感と強いヌメリ、深い森の香りが持ち味です。京都府産の自伐した桜の原木が調達できたときだけ仕込むため、いつでもお出しできるわけではない希少なお品です。

ちなみに今は原木えのきの栽培にもチャレンジしていて、新しい仲間を迎えられる日を楽しみにしています。

こうして手塩にかけて育てたきのこは、生のままお届けするだけでなく、「おばんざい」シリーズとしても展開しています。きのこ農家だからこそできる味わい方を、京都らしいおばんざいの形でお福分けしたい、そんな気持ちで仕立てています。

限定生産・限定消費を貫く理由

京茸では、限定生産・限定消費を徹底しています。限られた人手と設備のなかで無理に量を追えば、品質が揺らぎ、京茸ブランドの看板に泥を塗ることになりかねません。

品質に見合ったきのこを、それにふさわしい価格で届けることは、衰退する業界に新しい風を吹かせるための合理的な戦略だと考えています。原木きのこの仕事が、一人でも多くの若い世代にとって「職業の選択肢の一つ」になる業界へ引き上げたいという思いが根っこにあります。

私たちは、どんぐりを拾って苗木を育て、植樹し、必要な分だけ伐採して原木に使います。使い終わったほだ木は、埋め込みマットなどの昆虫商品として余すところなく活用しています。「伐って、使って、植えて、育てる」。この循環型林業が、原木きのこ栽培の大きな可能性です。

原木きのこの生産は、これからの社会に大きく貢献できる可能性を秘めています。京都京北を皮切りに、日本各地で原木きのこ栽培による里山保全を、フランチャイズのような仕組みで実現していきたいと思っておりまして、京茸の名前と品質を大切に守っているのは、その地盤を固めるためでもあります。

京ぽんぽん、京おはな、京てずま、京でぼちん。京ことばの愛称には、京都京北の原木きのこを覚えていただき、里山の営みを未来へつなぎたいという願いを込めています。株式会社百里衆が育てる京茸のきのこを、ぜひ一度味わってみてください。

商品のご案内や最新情報は京茸のホームページ(https://kyotake.jp/)とWEBSHOP(https://kyo-take.stores.jp/)でご覧いただけます。

飲食店での取り扱いや、里山・原木栽培に関するご相談も、お問合せフォームからお気軽にどうぞ。

まとめ

名前は、きのこと食べてくださる方をつなぐ最初の架け橋です。京茸の4つの愛称が、原木きのこと京都の里山を知っていただくきっかけになればうれしく思います。

・香りや食感にこだわった原木きのこを料理に取り入れたい飲食店の方
・京都らしい食材を贈り物や自宅用に探している方
・原木きのこ栽培や里山保全の仕事に関心がある方


お問い合わせはこちらから

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宮西真也
専門家

宮西真也(農業)

株式会社百里衆(おざとしゅう)

シイタケを中心としたキノコ類の栽培を手掛ける。原木栽培にこだわり、どんぐりから苗木を育てて植林し、原木として活用。使用後は埋め込みマット等の昆虫商品として余すところなくリサイクル利用されています。

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