原木シイタケと菌床シイタケの違いは?里山を守る循環型林業の仕組み

「きのこ栽培で、いちばん難しいことは何ですか?」
お客様や見学にいらっしゃった方からよく聞かれる質問ですが、私の答えはいつも同じで、「湿気との付き合い方」だとお伝えしています。
京北の里山で原木椎茸「京茸(きょうたけ)京ぽんぽん」を育てていると、湿気は敵にも味方にもなる、本当に気まぐれな相手だと感じます。
今日はこの「湿気は敵か、味方か」というテーマで、季節ごとに変わる管理の難しさと、私が日々向き合っている自然の湿度を読み解く目について、現場の感覚をそのままお話ししたいと思います。
目次
湿気は敵か味方か?きのこ栽培の一番の悩みどころ
きのこ栽培を始めた頃は私も戸惑ったのですが、湿気は多ければよいというものでもなく、少なければ安心というものでもありません。
原木椎茸のもとになる子実体(しじったい)とは、私たちが「きのこ」として口にする、あの傘と軸の部分のことです。この子実体は、原木に張り巡らされた菌糸が十分に養分をためたうえで、外の湿度や温度に反応して一気に顔を出します。つまり湿気は、きのこが生まれるための大切な合図であり、味方なのです。
ところが、その湿気が多すぎたり、こもったままになったりすると、今度は傘が傷んだり、品質が落ちたりする原因にもなります。きのこを呼び込んでくれる味方が、油断するとそのまま敵に変わる。その紙一重を見極めるところに、生産者としての経験と勘が問われます。
季節ごとに変わる湿度管理という難所
私が栽培をしていて毎年あらためて痛感するのは、湿度の管理に「これさえやれば大丈夫」という決まった正解がない、ということです。
子実体は生き物です。同じ発生舎(はっせいしゃ)の中でも、その時々の気象条件でまったく違う表情を見せます。
発生舎とは、原木を並べてきのこを発生させるための栽培ハウスのことですが、外が乾いた晴れの日と、しっとりと湿った曇りの日とでは、舎の中の空気もきのこの様子もがらりと変わるため、あらかじめ完璧な準備をしておく、という発想ではなく、その日その時の変化に合わせて対処していくことが何より大切だと考えています。
さらに季節が移れば、難しさの中身も変わります。空気が乾きやすく、いくら湿らせてもすぐに水分が逃げてしまう時期もあれば、逆に湿気がこもって舎の中がむっとしてしまう時期もあります。そのため、「湿度を保つ」という作業でも、季節によって気をつけるポイントがまるで反対になることも珍しくありません。
マニュアル通りに同じことを繰り返すのではなく、目の前の原木と空気の状態を見ながら手を入れていく、この季節ごとの読み合いこそ、原木栽培のいちばんの難所であり、面白さでもあると感じています。
自然の湿度を読み解く職人の目と、機械の合わせ技
では、その気まぐれな湿気とどう付き合っているのか?私のやり方は、機械の力と自分の目を組み合わせています。
発生舎の中では、温度によって自動で電源を制御する噴霧器とファンを使い、湿度を一定の範囲に保つようにしています。霧で湿り気を補い、ファンで空気を動かして、こもりすぎを防ぐ。ここは機械にしっかり働いてもらう部分です。
ただ、機械だけにすべてを任せることはありません。最後に頼りになるのは、やはり自分の目です。私が大切にしているのは、きのこを毎日つぶさに観察すること。傘の開き具合、軸の張り、表面のつや、こうした一つひとつのサインを見ながら、収穫のタイミングと出荷のタイミングを目視で微調整していきます。
この、自然の湿度を読み解く職人の目とは、数字だけでは測れない、きのこの「今」を読み取る感覚のことだと私は思っています。
教えてくれる人が周りにいない中で栽培を始めた私は、気温や天候がきのこの生育にどんな影響を与えるのかを、ひたすら観察し、実践と改善を繰り返してきました。うまくいかなかった日も、思いがけずよく育った日も、その都度「あの時の空気はどうだったか」を覚えておく、そうした地道な積み重ねが、今の目を育ててくれたのだと思います。
同じ発生舎に毎日通っていても、二日として同じ日はありません。だからこそ、機械の数字を入り口にしながら、最後は自分の目できのこと向き合うことを、私はこれからも大切にしていきたいと考えています。
肉厚プリプリの食感は、適時の収穫から生まれる
湿度の読みは、収穫の見極めとも切り離せません。適切な湿気のもとで育ったきのこは、傘の開き方や表面のつやに、収穫の合図がはっきりと出ます。逆に、湿気が乱れた環境では、そのサインが読みにくくなる。そのため、日々の湿度管理と目視の観察は、私の中では一続きの作業です。
京茸の原木椎茸「京ぽんぽん」は、肉厚で、まるでアワビのようにプリプリとした食感が特徴です。この食感は、ちょうどよいタイミングで収穫してこそ生まれます。少し早くても、少し遅くても、あの歯ごたえは出てきません。湿気を読み、きのこのサインを読み、その瞬間を逃さない。その積み重ねが、京ぽんぽんの食感を支えています。
私たちの京茸は、決して安い品ではありませんが、せっかく口にしていただくのですから、より美味しく味わっていただきたい。そのために手間を惜しまないことが、生産者としての私の役割だと思っています。
伐って、使って、植えて、育てる循環の中で
私が湿気とここまで丁寧に向き合うのは、おいしいきのこをお届けしたいという思いだけではありません。京茸というブランドを育てることが、地域の里山を守ることにつながっているからです。
百里衆では、「伐って、使って、植えて、育てる」という循環をすべて自分たちの手で担っています。きのこを育てる原木を山から伐り出し、どんぐりを拾い、苗木を育ててまた植える。使い終わったホダ木も、昆虫商品の埋め込みマットなどとして余すところなく活用します。
どんぐり拾いから育苗まで、循環の工程すべてに携わっている、環境貢献度の高いオンリーワンの取り組みだと自負しています。
市場に出回る椎茸の多くは、おがくずや米ぬかを固めたブロックで育てる菌床栽培です。短期間で安定して供給できる方法ですが、私が手掛けているのは、半年以上の時間をかけて天然木で育てる原木栽培です。湿気を読み、季節を読み、きのこの今を読む。その一つひとつが、循環型林業を続けながら美しい里山の景色を次世代へつないでいくための営みなのです。
湿気は、敵にも味方にもなります。しかし、その気まぐれな相手を読み解く目を持てば、自然はきっと応えてくれると私は信じて、今日も発生舎に通っています。
まとめ

湿気は読み解く相手であって、恐れる相手ではありません。自然の湿度に向き合う職人の目があってこそ、肉厚でプリプリとした京ぽんぽんの食感が生まれるのだと思います。
・原木栽培ならではの肉厚なきのこを味わいたい方
・料理店や百貨店などで上質な原木椎茸をお探しの方
・里山保全や循環型林業の取り組みに関心のある方
京北の里山で京茸「京ぽんぽん」を育てる株式会社百里衆が、心を込めてお届けする原木きのこを、ぜひ一度味わってみてください。商品のご案内やお問い合わせは、ホームページ(https://kyotake.jp/)からお気軽にどうぞ。
※「京茸(きょうたけ)」は、株式会社百里衆が商標権を所有するきのこブランドです。


