相続税について③ ~不動産の評価方法~
皆様、こんにちは。
今回のテーマは「相続税」です。
税制の変更に伴いまして、平成27年1月1日以降の相続につきましては、基礎控除額が引き下げられております。
そのためもあってか、相談会をさせていただいておりましても、お問い合わせをいただく事が多い、皆様にとっても関心のある方が多いテーマだと思います。
まず、相続税とはどういう税金なのか、というところですが、税務署発行の『相続税のあらまし』には、「個人が被相続人から相続などによって財産を取得した場合に、その取得した財産に課される税金」となっております。
では、相続によって財産を取得されたら、すべての方が課税されるのでしょうか。
こちらは、相続財産の総額と、「基礎控除額」を比較して、相続財産の方が多い場合に、相続税が課税される、ということになります。
仮に相続税が課税される場合、その申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヵ月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署に申告・納税をする、という規定になっております。
一方で、相続税が課税されない場合(相続財産の方が、基礎控除額よりも少ない場合)には、相続税は課税されませんので、それを示すような申告もする必要はありません。
この申告をする税務署というのは、被相続人、つまり亡くなった方の住所地を管轄する税務署ですので、亡くなった方と相続される方の住所地が違う場合は、注意が必要です。
また、相続税は申告と納税がセットで10ヵ月以内という規定になっておりますので、申告だけをしたので、とりあえず一安心という訳ではありません。
加えて、相続税は相続人全員による連帯納税となります。
ですので、例えばAさん、Bさん2人の相続人が相続税を課税されたとして、Aさんがきっちり納税を済ませても、Bさんが納税をされなかった場合は、AさんにもBさんの分の相続税を納税する義務があります。
また、相続放棄をした方は、初めから相続人でないものとみなされますので、相続税の課税対象にはなりません。
ただ、こちらは家庭裁判所において、正式に相続放棄の手続きをされた方のみとなりますので、相続人同士における遺産分割協議で、相続をしないことにした、相続分を放棄した、というだけでは、相続税を連帯納税する責任は、残ったままとなります。
相続放棄の手続きは、「自己のために相続があった事を知ってから、3ヵ月以内」という規定がありまして、それを過ぎてしまいますと、原則として正式な相続放棄をすることは出来ません。
3ヵ月という期間につきましては、日常の生活においては長く感じられるかもしれませんが、「ご家族が亡くなってから3ヵ月」ということになりますので、恐らくほとんどの方が、あっという間に経過してしまう期間なのではないかと思われます。
相続税の基礎控除額について
※相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
上の式は、相続税が課税されるかどうかを確認する、基礎控除額を求めるものですが、同じ財産を相続されたご家族でも、法定相続人が多いか少ないかで相続税が課税されるかどうか変わってくることになります。
つまり、ご家族(法定相続人)の人数が多い方が、基礎控除額が増えて相続税が課税されにくくなる、という仕組みとなっております。
この法定相続人の数につきましては、下記の点に注意が必要です。
①胎児は人数に含められない
②相続放棄をした方がいても、人数に含められる
③養子については、元々実子がおられる方は1人まで、実子がおられない方は2人まで含められる
④特別養子は実子と同じ扱いとなる
①につきまして、民法に「胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなす」という規定があり、相続人としての権利能力を認めていますので、少し混同してしまいますが、相続税の基礎控除額を考える場合の法定相続人には含められないということになります。
こちらには、胎児の生まれた日以後2ヵ月以内におきまして、相続税の申告期限を延長できるという規定もあります。
②は、相続放棄によって相続人の順位が変動することにより、本来の相続税額が増減しないようにという規定だと考えられます。
③は、相続税を回避する目的の養子縁組が、過去に問題になった為の規定となっております。
相続税の計算方法について
では、相続税が課税されることなった場合、どのように計算されるのでしょうか。
それは、おおよそ次の様な順番で計算されます。
①相続財産(課税価格)より基礎控除額を差し引いて、残ったものが相続税の「課税遺産総額」となる。
②課税遺産総額を、法定相続の割合であん分し、その数字に税率を掛けて、その総合計が「相続税の総額」となる。
③相続税の総額を、実際に相続する割合であん分したものが、相続人それぞれの「納付税額」となる。
・相続税の税率は下記表の通りとなります。
※税率表の見方
法定相続分の取得額に応じて税率が変わり、3,000万円以上の場合、控除額を差し引くことが出来ます。
例えば2,000万円なら、2,000万円×税率15%=300万円ですが、50万円が控除されて250万円となります。
それでは、具体的に相続税の計算をしてみましょう。
次のような場合で考えてみます。
・相続財産(課税価格)は8,000万円
・相続人は、配偶者と子供2人(基礎控除額=4,800万円)
・遺言はなく、3人で協議した結果、配偶者5,600万円(70%)、子供が1,200万円(15%)ずつ相続することになった。
①課税相続財産の確認
相続財産(課税価格)8,000万円-基礎控除4,800万円=課税遺産総額3,200万円
②相続税の総額の確認
課税相続財産:3,200万円
法定相続の割合:配偶者2分の1、子供4分の1×2人
配偶者分の計算:3,200万円×2分の1=1,600万円
1,600万円×税率15%-控除額50万円=190万円
子供分の計算 :3,200万円×4分の1=800万円×2人
800万円×税率10%=80万円×2人=160万円
⇒相続税の総額=190万円+160万円=350万円
③相続人各々の納付税額の計算
相続税の総額:350万円
実際の相続割合:配偶者70%、子供15%×2人
⇒配偶者の納付税額:350万円×70%=245万円
子供の納付税額 :350万円×15%=52.5万円(一人あたり)
先程の計算で、配偶者の納付税額は245万円として算出されましたが、実際にはこれが0円となります。
それは、「配偶者の税額軽減」と呼ばれる控除によって、配偶者は1億6,000万円までか、法定相続通りの課税価格の場合、相続税が課税されないからです。
相続税には、この他にも納付税額が低くなる様な控除がありますので、次にこちらをご紹介致します。
主な相続税の控除について
相続税の控除には、主に次のものがあります。
これらを用いる場合、たとえ相続税が課税されなくなった場合でも、すべて申告する必要があります。
①配偶者の税額控除
先程ご紹介したもので、配偶者はその相続において1億6,000万円までか、法定相続通りの課税価格の場合は相続税が課税されません。
法定相続通りということは、例えば4億円の財産を配偶者と子供1人で相続した場合、法定相続通りですと、配偶者は2億円の相続ということになりますが、それでも相続税は課税されないことになります。
②小規模宅地等の特例
被相続人が居住用に使用していた宅地等のうち、「特定住居用宅地等」に該当する場合は、その面積330㎡までの部分を80%減額して評価出来るというものです。
また、事業用の場合は、用途によって200㎡までで50%減額、400㎡までで80%減額というものがあります。
これは、宅地(土地)の評価のみとなりますので、建物の評価は含まれませんが、例えば宅地(土地)の評価が1,000万円だった場合、相続税が課税されるかどうかを計算する場合、80%減額、つまり200万円として計算できますので、かなりの効果があります。
主に用いられることの多い、「特定住居用宅地等」に該当するのは、次の場合となります。
1、配偶者が取得した場合(同居をしていなくても構いません)
2、同居の親族が取得した場合
被相続人の居住用に利用されていた家屋に居住していた親族であって、相続開始の直前から申告期限まで引き続き同居していて、かつ、その宅地等を申告期限まで保有している場合
3、いわゆる3年家なき子が取得した場合
被相続人に配偶者も同居の親族もいない場合で、被相続人の親族で、相続開始より3年以内に、日本国内において自己または自己の配偶者が所有する家屋に居住したことがなく、かつ、その宅地等を申告期限まで保有している場合
4、被相続人と生計同一親族が取得した場合
被相続人と同居していない親族が、相続開始直前から申告期限まで引き続き居住し、かつ、その宅地等を申告期限まで保有している場合
具体的な例をみていきましよう。
1、配偶者が取得した場合
・ご夫婦で同居
・ご自宅の宅地(土地)の名義がご主人
・ご主人が亡くなり、奥様が相続で引き継いだ場合、などです。
※夫婦の同居は条件ではありませんので、別居していてもこちらに該当します。
2、同居の親族が取得した場合
・配偶者が先に亡くなっており、子供と同居している
・ご自宅の宅地(土地)の名義は親
・親が亡くなり、同居していた子供が相続で引き継いだ場合、などです。
※2世帯住宅に居住していた場合も、こちらに該当します。
ただし、建物の登記区分が別々の場合、親名義の部分のみが該当します。
3、いわゆる3年家なき子が取得した場合
・配偶者が先に亡くなっており、一人で居住している
・ご自宅の宅地(土地)の名義は親
・親が亡くなり、子供が相続で引き継いだ
・引き継いだ子供には、自分や配偶者名義の持ち家は無く、3年以上賃貸住宅に居住している場合、などです。
※平成30年の税制改正で、持ち家の有無を問われるのが、引き継いだ夫婦のみではなく、3親等以内の親族などへ対象が拡大され、更に過去に居住家屋を所有していたことがある方も除外されることになりました。
これにより、遺言等で孫に遺贈をして引き継がせたり、親が子供の自宅を買い取ったりして、引き継ぐ方に持ち家のない状態をつくって、この特例で相続税を抑えようとすることは出来なくなりました。
4、被相続人と生計同一親族が取得した場合
・子供が進学・就職の為に一人で居住して、親が仕送りをしている
・週末には実家に帰り、これまでと同様に親と生活している
・居住している建物の宅地(土地)の名義は親
・親が亡くなり、居住している子供が相続で引き継いだ場合、などです。
※この生計同一親族と認められるには、個別の判断がなされますので、該当しないとされる場合もあります。
また、特別養護老人ホームなどに入所して、居住することが出来なくなった場合でも、「老人福祉法」や「介護保険法」などに規定された施設に入所した場合は、この特例に該当されることになっております。
③未成年者控除
相続や遺贈によって財産を取得した方が満20歳未満の相続人である場合、10万円×(20歳-相続開始時の年齢)について、相続税額が控除されます。
④障がい者控除
相続や遺贈によって財産を取得した方が、日本国内に住所を有する障がい者の方で、かつ、相続人である場合、10万円×(85歳-相続開始時の年齢)について、相続税額が控除されます。
次回は、相続税を検討する際の、相続財産の計算方法についてお伝え致します。
よろしくお願い致します。