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コラム

特別受益とは ~遺留分や生前贈与、生命保険との関係、その持戻しや時効について~

2018年2月6日 公開 / 2021年1月8日更新

テーマ:特別受益

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続問題相続 手続き相続対策

皆様、こんにちは。

 今回は「特別受益」につきまして、お伝えさせていただきます。
 特別受益という言葉は、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、相続手続きにおきましては、相続財産を確認するにあたりまして、とても大きな意味をもちます。

 まず、特別受益という言葉ですが、民法の規定をおおよそ記しますと、「被相続人から遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、その相続財産全体に贈与の価額を加えて、遺贈、贈与を受けた者は、すでに受けた贈与を相続分より控除した額が、その者の相続分とする」となっております。
 
 一言でお伝えしますと、遺贈を受ける方、生前贈与を受けていた方は、相続財産を先に受け取ったと考えられるから、その分相続できる割合を少なくし、相続人同士の公平を図るという目的の制度、ということになります。
 先に贈与を受けていた方を「特別受益者」といい、相続財産を確認する際に、特別受益者が受けていた財産を、亡くなった時の遺産に加えることを「特別受益の持戻し」といいます。

 例えば、兄弟二人が父親の相続をするとした時に、兄は父親の生前、自宅の新築資金を贈与してもらい、弟は贈与を受けていなかった場合、仮に兄弟で2分の1ずつ相続をすることになったとしても、亡くなった時に遺された財産だけで考えますと、弟からすれば、「兄はすでに生前贈与を受けているのに、これで2分の1なの?」と、疑問に感じられる場合があるのではないでしょうか。

 下記の状況だったとして、もう少し具体的にみてみましょう。
・相続人は兄弟2人で、父親の相続が発生し、2分の1ずつで相続する
・兄は住宅資金として1,000万円の生前贈与を受けていた
・父親が亡くなった時の遺産が2,000万円

①相続財産の確認
 相続財産=遺産2,000万円ではなく、贈与1,000万円+遺産2,000万円=3,000万円として考えます。
 これを「みなし相続財産」といいます。
②具体的相続分
 2分の1ずつで相続しますので、1,500万円×2(兄弟1人あたり)となります。
③実際の相続額
 すでに兄は1,000万円の生前贈与を受けていますので、兄は,500万円、弟は1,500万円を相続する、ということになります。
 
 なお、兄が受けていた生前贈与がもし3,000万円だった場合は、3,000万円+2,000万円で、合計5,000万円となり、1人あたりの相続分は2,500万円となりますが、兄は贈与分だけで超えてしまいます。
 この場合、弟は亡くなった時の遺産である2,000万円しか相続出来きず、兄が弟に返還する義務もありません。
 これについては、相続人同士の絶対的な公平よりも、亡くなった方の贈与という意思を尊重する、と考えることになります。

 次のような場合はどうでしょうか。
・相続人は母親と兄弟2人で、父親の相続が発生し、法定相続(母親2分の1、兄弟4分の1ずつ)で相続する
・兄は住宅資金として1,000万円の生前贈与を受けていた
・弟は父親の形見として、200万円相当の時計を遺贈してもらうことになっている
・父親が亡くなった時の遺産(時計を含む)が2,000万円

①相続財産(みなし相続財産)の確認
 遺産2,000万円+贈与1,000万円=3,000万円
②具体的相続分
 みなし相続財産を法定相続割合で換算しますと、
 母親:1,500万円、兄:750万円、弟:750万円ですが、
 兄は、贈与1,000万円を引いて-250万円となり、本来の相続分を250万円超えていることになります。
 弟は、遺贈200万円を引いて550万円となります。
③実際の相続額
 現存している財産は、みなし相続財産3,000万円-贈与1,000万-遺贈200万円=1,800万円となります。
 この場合、具体的相続分に対して、現存する相続財産が不足していることになり、兄が超過した250万円分をどのようにするか、という問題があります。
 こちらに対しては、具体的相続分の合計に対する、それぞれの相続割合を現存している財産にあてはめて、実際の相続額を算出するという方法が多くとられております。

 今回のケースにあてはめますと、
 具体的相続分の合計2,050万円(母親1,500万円+弟550万円)
 それぞれの相続割合=母親:1,500/2,050(約73%)、弟:550/2,050(約27%) 
 現存している財産1,800万円 となりますので、

 →母親:1,800×(1,500/2,050)=約1,317万円
   弟 :1,800×(550/2,050)=約483万円 となります。

特別受益にあたる財産とは

 それでは、どのような遺贈、贈与であっても、それは特別受益に組み入れる必要があるのでしょうか。
 また、相続人のもつ遺留分との関係はどのようになるのでしょうか。

 まず、特別受益に組み入れる財産の範囲ですが、「婚姻、養子縁組の為や、生計の資本として受けた贈与」という規定となっております。
 婚姻、養子縁組の為とは、持参金や家財道具の調達などの為の贈与となり、生計の資本としてというのは、居住用の土地や建物そのものや購入資金、大学などの学資、独立時の開業資金など、ということになります。
 どれが特別受益に該当するかにつきましては、他の相続人や遺産総額全体との兼ね合いで、個別に判断されることになりますが、日常のちょっとした贈与までも、全てを特別受益に組み入れる、と考えられるわけではないかと思われます。
  
 次に、特別受益の持戻しの要件ですが、贈与された時期については制限がありません。
 ○年前の贈与なので時効、ということはないのです。
 例えば、住宅資金を親から負担してもらった方は、何年後に相続が発生した場合でも、その住宅資金分は特別受益として先に受け取ったことになりますので、それを持戻すことになります。
 
 ただし、被相続人が持戻しをしないでほしい、という意思表示をしていた場合は別です。
 例えば、「長男には住宅資金として1,000万円を贈与しているが、これは相続財産に組み入れないでほしい」という意思表示があれば、それは特別受益の持戻しがされません。
 
 この意思表示を「持戻しの免除」といいますが、それは遺言書で示してもいいですし、贈与時にしても構いません。
 遺贈に関しましては、亡くなった後に贈与されるという性質上、遺言書で行う必要がありますが、持戻しの免除は意思表示ですので、基本的には書面でされていなくても有効となります。
 それでも、相続関係者が全員周知出来るようにされておかれた方が、後々の相続人同士のトラブルの防止になると思われます。

 そして、持戻しの免除をした場合の遺留分との関係ですが、持戻しの免除の意思表示をしていた場合でも、それが他の相続人の遺留分を超える範囲であった場合、その相続人は、自己の遺留分を侵害されているとして、遺留分減殺請求をすることが出来ます。
 これは、遺言書において、特定の方のみへ相続させる、と示した場合と同じで、被相続人の意思表示よりも、相続人の遺留分の保護を優先させたもの考えられます。

 また、生命保険金との関係についてですが、一般的に生命保険金の受取人が相続人だった場合、通常の生命保険金は被相続人の死後に請求するものですので、相続人自身の固有財産として、相続財産には含まれないとされ、遺産分割の協議対象にする必要はありませんでした。
 
 こちらが特別受益にあたるのではないか、ということに関しまして、平成16年最高裁判所の判決で、「保険金額の遺産総額に対する割合、保険金受取人である相続人と、他の相続人との被相続人への関係、相続人それぞれの生活実態などを総合的に考慮した結果、認められないほどの著しい不公平がある場合には、特別受益の持戻しの対象となる」、という見解を示しております。
 
 これは、認められないほどの著しい不公平がある場合は、相続財産として特別受益の持戻しを認める、ということになります。
 実際に、高額の生命保険金がある場合におきまして、それが特別受益になるという判断も、その後に示されております。

 最後に、特別受益をみなし相続財産に加えた時の評価につきましては、「相続開始時の評価」とするのが一般的とされております。
 また、贈与を受けた方の財産がなくなってしまったり、評価が増減した場合であっても、相続開始の時に元のままであるものとみなして考える、という規定になっております。
  
 例えば、居住用の建物を贈与された方が、火事などでその建物を無くしてしまった場合、相続時においては、贈与を受けた建物はもうないから、その贈与自体はみなし相続財産に含められないのでは、と思われたとします。
 このような場合でも、相続時には建物がまだあると考えて、その評価額を特別受益として、みなし相続財産に含める、ということになります。


 次回は、「相続税について」お伝えしようと思います。
 よろしくお願い致します。

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