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キャンプと法律 -キャンプ実践編-

西村友彦

西村友彦

テーマ:弁護士業務雑感

前回前々回に引き続き、キャンプと法律についてである。
今回は、実際にキャンプをする際に関わってくる法律について、書いてみたい。


キャンプ場の木は勝手に切ってはいけません



最近のキャンプブームの傾向として
以前と比べて、より「ワイルド」なキャンプを楽しむようになっている
ということがあげられるのではないかと思う。


例えば、道具などでいえば
・火を熾す際に、ライターやチャッカマンなどは使わず
 ファイヤースターター(いわゆる「火打石」)を使う
・着火剤は使わず、麻紐や小枝など自然の物を使い
 薪にナイフを入れてフェザースティックを作る
などである。

また、前々回書いたことにも関わるが
・キャンプ場ではない、河原や山林で「野営」に近いようなキャンプをする
ことも挙げられる。

そのような「ワイルド」なキャンプをできることが
玄人っぽい、キャンプスキルが高い、と評価されているように思われる。
僕がキャンプを始めた10年前には主流ではなかったことだ。


そのように自然の物を利用していくと
最初は、落ちている枝や松ぼっくりを焚き火の火熾しに使う
というところから
植わっている木のいい感じの大きさの枝を切る
ということに進んでいってしまう可能性がある。


しかし、キャンプ場の木は、キャンプ場の所有者が所有している「物」であり
キャンプ場の所有者が「切っていいですよ」と許可していない限りは
「他人の物」を損壊したものとして、器物損壊罪になり
それが、薪として利用する意思で切れば、更に重い罪である窃盗罪になる。

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金である。

落ちている枝や松ぼっくりにしても
厳密にはキャンプ場所有者の所有権が及んでいると思われるため、理屈は同じである。
(もっとも、それらを利用することは許可されている場合が多いであろうが。)


キャンプ場の木は、勝手に切ってはいけない、ということは
くれぐれも頭に入れておいて欲しいところである。
前回も書いたが、「行ったときよりも綺麗にして帰る」気持ちを持っていただきたい。




高校生だけでキャンプはできるのか?



最近のキャンプブームのもう一つの傾向として
キャンパーの低年齢化もあげられるのではないかと思う。

昔はキャンパーといえば、親子連れか、子育てを終えたベテラン世代
がほとんどだったのではないだろうか。
(統計を見たわけではないので、あくまでイメージである。)


「ゆるキャン」という、女子高校生が主役のコミックも
キャンパーの低年齢化には一役買っているのではないだろうか。


さて、高校生や、中学生であっても
保護者の同伴なしでキャンプすることは、可能である。


もっとも、法律上は、未成年者の法律行為は取り消すことができるとされており
キャンプ場の利用契約も、原理的には、取消可能である。
(契約が取り消されれば、遡って契約がなかったことになる。)

現実的には、キャンプ場利用契約が取り消される
ということは、あまり想定しにくいため、この点が問題になることは考えにくい。


それよりも、未成年者が、キャンプ場の施設や他の利用者に損害を与えてしまった
というケースが、一番問題になるのではないだろうか。

未成年者であっても、中学生以上であれば
民法上は責任能力があるとされており、他人に損害を与えた場合には
未成年者自身が責任を負い、保護者は例外的な場合以外責任を負わない。

これは、損害を与えられた側としては、損害賠償をする際に
未成年者のみしか相手方にできず、保護者には請求できない、ということを意味する。


キャンプ場としては、そうなってしまうと
資力のない未成年からは、現実には損害の賠償を受けられないことになる。
更には、他の利用者が損害を受けた場合には、未成年者を安易に受け入れたとして
キャンプ場が責任を追及されることも起こり得る。

したがって、キャンプ場としては
未成年者にキャンプ場の利用を認める際には
保護者の利用に対する同意書だけでなく
損害を発生させた場合には、保護者も連帯して責任を負う旨の書面も
取っておくことが望ましいだろう。



最後に



キャンパーの裾野が広がり、様々な形でキャンプを楽しむ人が増えていることは
キャンプ業界としてはよいことだと思う。

その皆がキャンプを楽しむために、一人一人がマナーを守り
皆が気持ちよくキャンプができるよう、心がけていくことが必要だと思う。





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弁護士西村友彦(にしむらともひこ)

夷川通り法律事務所

事業内容
■ 企業法務
■ 民事事件
■ 家事事件
■ 少年事件

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西村友彦
専門家

西村友彦(弁護士)

夷川通り法律事務所

トラブルを未然に防ぐことを目指し、中小企業、個人事業主を含む企業法務、不動産関係、信託、離婚、遺産分割、宗教法人関係、少年事件など幅広い分野の事件に対応し、解決へと導いていく弁護士として活動している。

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