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平成23年度税制改正による消費税改正-95%ルールの見直し

2011年8月24日

テーマ:経営に役立つ情報

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 税制改正

 平成23年税制改正によって消費税について、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から、課税売上高が5億円を超える事業者はいわゆる「95%ルール」の適用対象外とされることになりました。

 非課税売上である普通預金の利息はほとんどの会社であると思います。また、社員等への住宅の貸付がある法人も珍しくありません。よって、課税売上割合が100%という法人はほとんど無くなり、今までは全額仕入税額控除できていた消費税相当額が、今後は控除できない部分が生じてくるということになります。

 このため、平成24年4月1日以降に開始する事業年度からは、自社の課税売上割合を算定し、その課税売上割合に相当する消費税額を計算する必要が生じます。控除税額の計算方法は二種類あり、個別対応方式と一括比例配分方式と呼ばれています。
 その違いをひと言で言うと、考え方が簡単な一括比例配分方式、そして厳密な考え方をする個別対応方式です。一般的には個別対応方式が有利だと言われています。


(1)一括比例配分方式

 言葉通り仕入税額を一括で取扱、控除税額を計算する方法です。
一括比例配分方式では以下の計算式によって控除可能な金額を計算します。

 控除仕入税額=課税仕入れにかかる消費税の全額×課税売上割合

 課税仕入れにかかる消費税の金額が全部で10,000万円、課税売上割合が99%だとすると、控除仕入税額は10,000万円×99%=9,900万円となります。
 今まで全額の1億円が控除できていましたから、たった1%で100万円の増税です。

 一括比例配分方式のメリットは、もう一つの方法である個別対応方式と異なり、課税仕入れの内容を区分する必要が無く、課税取引なのか、非課税取引なのかの区分をすれば良いだけです。厳密な区分を求める個別対応方式よりも経理担当者の手間がかからないとされています。

なお、課税売上割合は以下の算式で計算されます。

その課税期間中の課税売上高(税抜き)
 課税売上割合= --------------------------------
その課税期間の総売上高(税抜き)

 なお、課税売上割合を算定する際の注意点として国税庁のタックスアンサーにはつぎに記載がありました。

1  総売上高とは、国内における資産の譲渡等の対価の額の合計額をいい、課税売上高とは、国内における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額をいいます。

2  総売上高と課税売上高の双方には、輸出取引等の免税売上高及び貸倒れになった売上高を含みます。また、売上げについて返品を受け、又は値引、割戻し等を行った場合は、それらに係る金額を控除します。

3 総売上高には非課税売上高を含みますが、不課税取引、支払手段の譲渡、特定の金銭債権の譲渡及び国債等の現先取引債券(売現先)等の譲渡に係る売上高は含みません。
  ただし、現先取引債券(買現先)等の取引のうち売戻価額と買収価額との差額に相当する金額は、総売上高に含みます。なお、その差額が差損となる場合には、総売上高から控除します。

4  総売上高に加える、特定の有価証券等の対価の額は、その譲渡対価の額の5%に相  当する金額とされています。

(2) 個別対応方式

 さて、個別対応方式の場合は、課税仕入れを
   ①課税売上のために必要な課税仕入
   ②非課税売上のために必要な課税仕入
   ③課税売上・非課税売上に共通して必要な課税仕入

の三つに区分して、それぞれ以下のように取扱います。

①課税売上のために必要な課税仕入にかかる消費税 = すべて控除
②非課税売上のために必要な課税仕入にかかる消費税 = 控除しない
③課税売上・非課税売上に共通する課税仕入にかかる消費税=課税売上割合を乗じ控除


 個別対応方式は、すべての課税仕入れがどのような売上に対応しているのかを、上記三種類の区分に区別します。会社の経理担当者にとっては、実務上の手間という点では、一括比例配分方式よりも、作業量も確認作業も増え、また税務上の判断も必要になってきます。

 わかりやすい例で言えば、土地を取得し、その土地の造成費用が発生したとします。 個別対応方式を採用している場合、今後はその土地を何に使うのかを考えなければなりません。つまり、この土地が
* 製品を作るための工場用地として使うのなら、①の区分。
* 社員を居住させるための、社員寮を作るための土地だと②の区分。
* 財務部や営業部が入るような本社の社屋を建設するための土地であれば③の区分。
  になります。

 一括比例配分方式の場合は、全てが③の区分のみで控除額を計算しますが、個別対応方式では①の区分は全額控除し、②の区分に該当するものは一切控除しない。そして、③の区分に該当するもののみ課税売上割合を乗じた金額を控除します。


<非課税売上のために必要な課税仕入の具体例>
・有価証券の売買手数料
・更地のまま販売する土地の造成費用/仲介手数料
・賃貸住宅の建築費

<課税売上・非課税売上に共通して必要な課税仕入の具体例>
・通信費、水道光熱費などの一般管理費
・土地建物一括譲渡時の仲介手数料
・課税仕入を行った課税期間の末日までに使用目的が決まっていないもの

 なお、区分の判断をどの時点で行うべきかについては、課税入れを行った日の状況により行います。そして、その判定が合理的なものであれば、後日なんらかの理由で用途変更が生じても区分の修正は不要です。

選択時の注意点

 ②の区分である非課税売上に対応する消費税額が多額にならない限り、一般的には個別対応方式のほうが有利といわれています。しかし、どちらが本当に有利か不利かは、実際に計算してみないと判明しないのが実務です。
 ただし、一括比例配分方式については2年間の継続適用が求められています。つまり、一括比例配分方式を選択した場合には,2年間は個別対応方式へ変更することができませんので注意が必要です。一方で個別対応方式から一括比例配分方式への変更はいつでも可能です。

この記事を書いたプロ

村田裕人

資産税・相続税のプロ

村田裕人(税理士法人 京都経営ネットワーク)

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