真壁石。神奈川県でも多く使われている白御影石
川崎登戸の町石屋、吉澤石材店の吉澤光宏です。
今現在お墓に建っている五輪塔・石塔にあわせて、岡山県の北木島で産出される北木石(きたぎいし)を使った石塔のお見積りを提出してみました。
この石は比較的古くから東京近郊にも入ってきていて、建築物やお墓・鳥居などの材料として使われています。
同じく岡山産の万成石(まんなりいし)ともども、お墓に行くとけっこうな確率で、古い北木石製の石塔が建っているのを目にします。
この写真に写っているお墓(左手のもの)は明治45年2月の建立。106年前のものです。まだ手磨きのツヤがよく残っているのがわかりますね。
粘りと耐久性に富むとパンフレットに書かれていますが、まさにその通りです。
今回提案させていただいたのは北木石の「瀬戸赤」と呼ばれる石。わずかに赤っぽく優しい色目が特徴的です。
現在も採れている北木石はこの瀬戸赤の他に、もう少し石目の大きな「中目」と呼ぶ白っぽい石があります。
これら北木石は関西はもとより、採掘地から遠く離れた東京でも長く使われた実績がある石です。この先100年・150年先を見据え、建てて安心な石の一つであろうと思います。
もちろん石屋としてもお勧めできる良材の一つですね。
北木石、いかがですか?
国内の石と外国の石
さて。ここでひとつ。
世界各地から数多くの御影石が日本に入るようになり、国内の石に類似した石も見かけるようになりました。そうした影響もあり、国内の石は昔ほど多く使われなくなっています。北木島においても採掘業者数はかなり減少したと仄聞しています。
しかしながら、これは国内の石の品質が劣るためではありません。
日本の石には長い年月にわたって様々な形に加工され、使われてきた歴史があります。このため、経年変化や傷み方の様子もある程度わかっているのが強みです。
むしろ秀でた石が多いと言えます。
ただ誤解してほしくないのですが、私はいたずらに国産石材と外国産石材の優劣を語るつもりは全くありません。国産材は素晴らしい石が多いですが、外国材にも優れた石があります。
また、ときおり石の強度や吸水率などを気にするお客様もいらっしゃいます。もちろんこれらを軽視もできませんが、そうした数値は石をあらわす一つの側面に過ぎません。
それらがその石の価値すべてを決めるのではありませんし、ましてその石でできたお墓の価値を決めるわけでもありません。
石に込められた採掘者・加工者の思い。そしてお墓を建てる方(施主)の、亡き人への思いを紡いだ『物語り』がその石の、お墓の価値を決めていくのだと思います。
大切な方をお祀りするお墓。そこにより価値を感じていただける方にこそ、日本の石をお勧めしたいと思います。