【第3部】「制度改正」を「企業成長」の転換点に ~ 2026年度の法改正の整理と対策

江崎充豊

江崎充豊

テーマ:経営


 こんばんは、マネジスタ湘南社労士事務所です。
今回は、法改正と整理の第3部、企業がとりうる対策についてお話します。

はじめに:義務化を強みに変えるために

 第2部では法改正が企業に与える影響を財務と労務の視点から整理しました。
法改正は経営にインパクトを与えますが、対応次第では組織強化や人材確保のチャンスに変えることも可能です。
 第3部では、ピンチをチャンスに変えるために、どのような対策があるかを考えていきます。

財務の切り口:キャッシュフロー管理と制度の活用

1.人件費等のシミュレーション

 事業計画策定では、利益に左右する費用の影響を考慮することが不可欠です。
そのためには、支援金の段階的引き上げや雇用率アップを見越した費用のシミュレーションをしておくことが大切です。
 不透明な費用をあらかじめ事業計画に織り込んでおくことで、計画がより精緻になります。

2.「実質手取り増」につなげる企業型DCの導入

 マッチング拠出(社員が掛金を上乗せすること)の制限が撤廃されることを機に、企業型確定拠出年金(DC)を導入・再設計をするのも手です。
従業員の拠出分は所得控除の対象となり、所得税・住民税の負担を軽減できます。
 従業員は税負担を受けながら将来の備えができ、会社は法定福利費を増やすことなく従業員のライフプラン形成制度を提供する、いわば「Win-Win」の対策となる可能性があります。

3.DX投資による生産性向上

 賃金差異の公表義務化に伴い、給与水準の引上げ圧力が強まります。
賃上げ圧力に対応するためには生産性向上が不可欠です。IT導入補助金などを活用し、労務管理や営業プロセスの効率化を考える必要があります。

労務の切り口:実務に即した規程・マニュアルの整備

1.カスハラ防止規程とマニュアル整備

  2026年10月の義務化に向け、就業規則にカスハラに対する方針を追加する必要があります。
規程を作るだけだと、実際に発生したときに「誰が対応するか」、「どのように対応するか」など現場が混乱します。
 そのため、「どんな要求がカスハラに当たるか」「発生時に現場で誰に報告し、誰に対応を代わるか」という具体的なフローを記したマニュアルが必要となります。

 また、ホームページなどに「カスハラに対する基本方針」を掲載することも、対外的な意思表示と社員を守る会社方針を明確にすることにも繋がります。

2. 賃金差異の説明資料の作成

 従業員101人以上の企業は、単に数字を出すのではなく、「なぜ差異があるのか」を合理的に説明する事が必要です。
 「勤続年数の構成」「職種間の男女比」などをデータ化し、「差異があるが、女性管理職育成計画により3年後には解消を目指す」といった現状を踏まえた今後の対策を明確に打ち出す事ができれば、公表することがむしろ会社の評価向上に繋がる可能性があります。

3.治療と仕事の両立支援規程の策定

 「治療と仕事の両立」は努力義務ですが、今後の義務化を見据え制度を先取りすればES向上に繋がる可能性があります。
 時間単位有休や短時間勤務などを規程に盛り込むことで、「万が一の時も会社が配慮してくれる」という心理的安全性につながり、社員の離職を防ぐ防衛になるかもしれません。

まとめ

 2026年度の法改正は、中小企業にとって財務と労務の両面で対応に迫られます。
しかし、確定拠出年金のような制度を活用し、ハラスメント対策などで心理的安全性を高めることができればES向上に繋がり、また増加する費用を計画に織り込みつつ生産性向上を図ることができれば、労務・財務ともに「強い会社」に変える事が出来ると思います。
 財務と労務の両輪を適切に回し、この改正をチャンスに変えることを考えて見てはどうでしょうか。

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江崎充豊
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江崎充豊(社会保険労務士)

マネジスタ湘南社労士事務所

現役銀行員としての財務分析力、社労士としての労務知識を融合させ企業を支援。資金調達や事業計画、人事労務体制整備からデジタルツール導入まで、経営者が本業に集中できる環境作りをアシストする。

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