文系社会人のためのプログラミング講座#07 プログラミング学習総復習

片岡美紀

片岡美紀

テーマ:生成AI時代の事務スキル

プログラミング学習が続かない本当の理由と、初心者が挫折せず基礎を身につける方法

「プログラミングを学び始めたけれど、続かなかった」

そんな経験を持つ方は、決して少なくありません。特に、事務職やデスクワークに従事する非エンジニアの方が、リスキリングの一環としてプログラミング学習に取り組む際、多くが同じ壁にぶつかります。

IT講師として数多くの初心者を指導してきた経験から、その「続かない本当の理由」と、挫折せずに基礎を身につけるための具体的な方法をお伝えします。

プログラミング学習が続かない3つの理由

理由1:文法(言語のルール)と考え方を同時に学ぼうとしている

多くの入門書や学習サービスは、プログラミング言語の文法を教えることから始めます。しかし初心者にとって、これは二重の負担になります。

プログラミングには、大きく分けて2つの学習要素があります。ひとつは「プログラムの構造・考え方」、もうひとつは「特定の言語の文法ルール」です。

このうち、構造・考え方は、実はどのプログラミング言語でも共通しています。変数、条件分岐、繰り返し、関数、配列、イベント——これらの基本概念は、JavaScriptでもPythonでも、VBA(Excelマクロ)でも同じです。

一方、文法は言語ごとに異なり、細かなルールを正確に覚える必要があります。初心者が挫折する多くのケースは、この「言語ごとに違う文法」と「どの言語でも同じ考え方」を、同時に詰め込もうとして、頭がパンクしてしまうことに起因します。

理由2:インプット中心で、手を動かしていない

解説を読む、動画を見る——こうしたインプットは、理解した「つもり」を生みますが、実際に使える力にはなりにくいものです。

プログラミングは、知識として頭に入れるだけでなく、実際に組み立てる練習を通じて身につく技能です。読んで理解した内容も、自分の手で組み立ててみると、意外なほど手が止まります。この「わかったつもり」と「実際にできる」のギャップこそが、学習が続かない大きな要因です。

理由3:最初のハードルが高すぎる

いきなりコードエディタを開き、英語のキーワードが並ぶ画面に向き合うことは、非エンジニアにとって大きな心理的負担です。最初の一歩が重すぎると、その先に進む前に手が止まってしまいます。

挫折しないための解決策:「構造」と「文法」を切り離す

これらの課題を解決する方法として、私が提案しているのが、プログラミングの「構造」を、文法から切り離して先に学ぶというアプローチです。

具体的には、コードを一切書かず、身近な文房具である「付箋」を使って、プログラムの構造だけを体験的に理解します。

付箋を使う利点は、次の通りです。

第一に、心理的なハードルが極めて低いことです。付箋は誰もが日常的に使う道具であり、身構える必要がありません。

第二に、手を動かすことで、構造が体で理解できることです。付箋を動かす・並べる・剥がすという物理的な操作が、プログラムの動きと直感的に対応します。

第三に、どの言語にも通用する土台が身につくことです。構造の理解は言語に依存しないため、その後どのプログラミング言語に進んでも、学んだ考え方がそのまま活きます。

6つの基本概念を「総復習」で統合する

私が連載しているプログラミング入門講座では、この付箋を使ったアプローチで、プログラミングの6つの基本概念を段階的に解説してきました。

具体的には、データを覚える「変数」、条件によって処理を分ける「条件分岐」、同じ処理を繰り返す「ループ」、処理をまとめる「関数」、複数のデータを並べて管理する「配列」、きっかけで処理が動く「イベント」の6つです。

そして、その集大成となる総復習回では、これら6つの概念を、ひとつの身近なアプリケーションの中で統合します。題材に選んだのは、事務作業でおなじみの「やることリスト(ToDoアプリ)」です。

やることを追加し、完了させ、削除する——この一連のシンプルな操作の中に、6つの基本概念すべてが自然に含まれています。学習者は、付箋を動かしながら、これまで個別に学んできた概念が、実際のアプリの中でどう連携するのかを体感できます。

重要なのは、この総復習でもコードを書かない点です。付箋で「どう動かすか」を組み立てられれば、それはプログラミングにおける「設計」に相当します。設計ができていれば、実際のコーディングは、設計図を言語に翻訳する作業に過ぎません。

まとめ:基礎は「手を動かして」身につける

プログラミング学習が続かないのは、あなたの能力や適性の問題ではありません。多くの場合、学ぶ順序と方法に原因があります。

文法から入るのではなく、構造から。インプットだけでなく、手を動かすアウトプットを。そして、最初のハードルは可能な限り低く。

この3点を意識するだけで、プログラミング学習の挫折率は大きく下がります。特に、非エンジニアの方がリスキリングとして基礎を身につけたい場合、付箋を使った構造理解は、確実で負担の少ない第一歩となります。

連載の最終回では、実際に付箋を動かすワークに加え、ブラウザ上で動作するサンプルアプリを用意し、操作するたびに6つの基本概念のどれが働いているかを可視化しています。プログラミングの全体像を、無理なく、そして「自分の手で」つかんでいただける内容です。

プログラミングに苦手意識をお持ちの方こそ、ぜひ一度、付箋を手に取ってみてください。

▼連載最終回「総復習」の本編はこちら
https://note.com/miki_minaruki/n/nb8506048d8f6
▼連載を最初から読む(第1回:変数)
https://note.com/miki_minaruki/n/n77c3bf4a2ff6

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片岡美紀
専門家

片岡美紀(IT講師)

株式会社ミナルキ

非エンジニアの視点から従業員の苦手意識に寄り添い、実務や課題に合わせて研修内容をカスタマイズ。演習を多く取り入れながら、デジタル化を自走できる人材の育成を支援します。

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