繊細さを“困った”から“才能”へ 子どもたちが自信をもって輝ける社会をつくるために

不登校の子どもが、習い事までやめたがるのはなぜでしょうか。
「根性がない」「すぐ飽きる」と誤解されがちですが、その背景にはHSC(ひといちばい敏感な子ども)の特性が隠れていることがあります。不登校の原因は一見わかりにくいものですが、実際には集団生活で人以上に疲労を抱えてしまうことが大きな要因です。
学校に通えない自分を責め、不甲斐なさを強く感じやすいHSCの子は、「せめて習い事で頑張ろう」という周囲の期待さえ、自分をさらに追い詰める材料になってしまいます。その結果、勉強も習い事も「全部なし」にしてしまうケースが少なくありません。
誤解されやすい原因
多くの大人は、習い事をやめたがる子どもに対して「忍耐力が足りない」「親のしつけが甘い」といった誤解を抱きがちです。しかしそれは、子どもの内面を見誤ってしまう危険なラベル付けです。
実際には「努力不足」ではなく、心と体の土台が疲れ切っているのです。学校という集団環境で力を発揮できず、日々の緊張や比較で自己肯定感を下げてしまう‥これが、習い事にまで足が向かなくなる本当の理由です。
本当の理由:HSC特性と不登校のつながり
HSCの子どもは、
・周囲の目線や評価に敏感すぎる
・集団の中で本来の力を発揮できない
・小さな失敗でも「人よりも不甲斐ない」と強く感じてしまう
といった傾向があります。
このような感受性の高さが、学校生活という「集団が前提の場」では強い負担になります。
その疲労を抱えたまま習い事に通っても、心に余裕がなくなり、続けること自体が難しくなるのです。これは決して甘えや性格の問題ではなく、特性に気づかれず育った結果として“できない子”にされてしまうリスクなのです。
実例:個人関わりで見せた変化
私自身、長男の姿から大きな学びを得ました。
集団生活では自分を責め続け、自己肯定感を大きく下げていた彼も、個人と深く関わる環境では驚くほどのパフォーマンスを発揮しました。
つまり、子どもは「力がない」のではなく、環境によって力を発揮できたり失ってしまったりするのです。日本の教育は集団が前提ですが、そこに合わない子どもをどう支えるかが、これからの教育に求められています。
支援の方向性:大人にできること
私たち大人にできるのは、「やめないように頑張らせること」ではありません。
むしろ、子どもが安心して自分らしくいられる環境を選び、整えることです。
具体的には、
・習い事を休んでも責めない言葉をかける
・他の子と比較しない
・「あなたはそのままで大丈夫」というまなざしを持つ
といった、小さな配慮が子どもを支える大きな力になります。
ピアノなどの個人レッスンは、集団では得られない安心感を提供しやすい場でもあります。だからこそ私は、子どもたち一人ひとりの特性に合わせて自己肯定感を育てる活動に力を注いでいます。
まとめ
不登校やHSCの子どもが習い事をやめたがる理由は、決して「性格の弱さ」や「努力不足」ではありません。背景には、集団に適応しにくい特性と、それに伴う強い疲労や自己否定感があります。
大切なのは、その子が力を発揮できる環境を見極め、安心の土台を整えること。
学校に通うことが難しくても、習い事が続かなくても、それは「できない子」ではなく、「まだ環境が合っていない子」なのです。
未来を担う子どもたちが本来の力を伸ばすために、私たち大人ができること。それは子どもの特性を理解し、安心できる場を増やすことだと考えています。



