決めるって、怖い──納得解を育てる判断力【継ぐ人のための経営ノート④】

平岡誠司

平岡誠司

テーマ:経営のモヤモヤをワクワクに(しごと編)

決断することの怖さ


事業承継やM&Aによって経営を引き継いだ後継者が、最初に直面するのは「決断することの怖さ」です。とくに未経験者にとっては、社長という肩書きがあっても、何をどう判断すればいいのか分からない。そんな不安がつきまといます。

価格改定、人材採用、設備投資、取引先との契約見直し──どれも経営の根幹に関わる判断であり、正解がない。しかも、家族経営の文脈では、前任者(親や配偶者)のやり方が社内に深く根付いているため、自分の判断に自信が持てないというケースが多く見られます。

平岡商店がこれまで支援してきた事業再生や承継の現場でも、「決められない社長」「決めるのが怖い社長」は決して珍しくありませんでした。

判断力は「現場×数字×対話」で育つ


経営者の判断力は、経験だけで育つものではありません。とくに小規模な家族経営の事業承継では、後継者が現場の肌感覚を持っていないことが多く、経理や資金繰りの知識も不十分なまま、銀行や取引先との交渉に臨まなければならない場面が出てきます。

そこで必要なのが、「現場」と「数字」を行き来しながら、「対話」を重ねるプロセスです。

- 現場で起きていることを数字で確認する
- 経理データや資金繰り表を使って、事業の動きを可視化する
- 社員や銀行、取引先と話すことで、数字の背景を理解する

この三つが揃ってはじめて、「判断の材料」が整います。そして、その材料をもとに、自分の言葉で納得解を導き出す力が育っていくのです。

「納得解」を持てる社長になるための育成支援


平岡商店の伴走支援では、後継者が「納得解を持てる社長」になるための育成プロセスを重視しています。

たとえば、ある地方の製造業では、未経験の後継者が事業承継後に資金繰りの悪化に直面しました。経理の仕組みも不透明で、銀行との関係も希薄。現場では社員が「前の社長の方が分かっていた」と口にする状況でした。

そこで、現場の業務フローを一緒に見直し、数字を使って事業の構造を整理。資金繰り表を作成し、銀行との対話をサポートすることで、後継者自身が「なぜこの判断をするのか」を説明できるようになりました。結果として、銀行の信頼を得て融資条件が改善し、社内の空気も変わっていきました。

このように、経営における判断は「正解」ではなく「納得解」。その納得を支えるのが、現場と数字と対話の三位一体なのです。

コーチがいることで、納得解の質が変わる


迷ったとき、誰かに相談できることは大きな支えになります。とくに、現場を知っていて、数字も読める経験者がそばにいると、納得解の質が大きく変わります。

平岡商店の「ビジネス・ストレングス・コーチング」では、後継者が自分の言葉で納得解を導き出せるよう、現場と数字の両面から伴走します。

- 判断の材料を整理する
- 見落としがちな視点を補う
- 判断の背景を言語化するサポートをする

決めることは怖い。でも、迷いながらでも、自分で納得して決める経験を重ねることで、経営者としての軸が育っていきます。

次回は「孤独と責任──経営者が抱える“見えない重さ”」についてお話しします。

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Mybestpro Members

平岡誠司
専門家

平岡誠司(小規模事業者向け経営支援家)

株式会社平岡商店

経営者の実践経験を活かし、経理の見える化・日繰り・在庫管理を軸に、家族経営の経営管理の仕組みづくりを実行支援します。現場の気づきを経営判断につなげ、“らしさ”をいかした経営を一緒に育てていきます。

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