シニアな方々の人生の話

先日、ある福祉機器展に足を運びました。
会場には、最新の介護ロボットや生活支援ツールが並び、その進化に驚かされる時間となりました。
かつての福祉機器は「できないことを補う道具」という印象が強かったのですが、今は少し違ってきているように感じます。
“日常の困った”を“できる”に変えてくれる存在。
単なる補助ではなく、「生活のパートナー」のような役割へと進化している――そんな印象を受けました。
人手不足が深刻化する中で、介護者の負担を軽減する介護ロボット。
そして、高齢者や障害のある方が、自分らしく暮らしていくための生活支援ツール。
どれも本当によく考えられていて、「ここまでできるんだな」と感じることの連続でした。
福祉機器や介護テクノロジーは、今や生活の質(QOL)を大きく変える力を持っている。
そんなふうに感じたのは間違いありません。
ただ、その一方で、ふと立ち止まるような感覚もありました。
それは、
“できることを増やすこと”と、
“その人らしさを守ること”は、
本当に両立できているのだろうか、という小さな違和感です。
以前、あるお客様がこんなことをおっしゃっていました。
「これから動けなくなることも考えて、ベッドの横に自分の物を置けるようにしたい」
メガネ、本、ちょっとしたメイク道具。
それらを、自分で手に取れる場所に置いておきたい――
その思いを叶えるために、私たちは工夫を重ね、
介護ベッドのサイドレールに小物を入れられる仕組みを一緒に作りました。
それは単なる収納ではなく、
人の手を煩わせずに、自分でできることを保つための工夫であり、
その方の自尊心を守るためのものだったように思います。
自尊心のともしびとは、
「誰かにしてもらう前に、自分でやろうとする気持ち」を支える、小さな力なのかもしれません。
だからこそ、今回の展示で、少し気になったことがありました。
介護ベッドのブースで、
「サイドレールに取り付けられる収納はありますか?」と尋ねてみたところ、
「フットボードに収納があります」という回答でした。
確かに、それは介護をする側にとっては便利なものだと思います。
けれど、ベッドで過ごすご本人にとっては、そこに手が届かないこともあります。
安全性やデザインなど、さまざまな理由があるのだと思いますが、
それでも、
「自分でできる」という感覚を支える工夫は、
もう少し大切にされてもいいのではないかと感じました。
それは、機能だけでは測れない価値だからです。
また、別のお客様の言葉も思い出しました。
「福祉用具が増えていくのを見ると、自分が情けなくなるのよ」
「せめて好きな色や柄が選べたらいいのにね。でも仕方ないわよね」
その方のお部屋は、もともと統一感のある素敵な空間でした。
そこに福祉用具が増えていくことで、どうしても存在感が強くなり、少し浮いてしまう。
その違和感は、見た目以上に心に影響していたのかもしれません。
実は私自身も、家族の介護をしていた時期に、
増えていく福祉用具の存在に、少し気持ちが重くなるような感覚を持ったことがあります。
だからこそ思うのです。
福祉機器には、
機能だけでなく、
・好みの色
・部屋に馴染むデザイン
・使っていて心地よいと感じられる質感
といった、“感性”の視点も、もう少しあってもいいのではないかと。
福祉機器は、誰かの人生の一部になっていきます。
それは単なる道具ではなく、
その人の暮らしを形づくる存在でもあります。
だからこそ、
「できること」を増やすことだけで十分なのでしょうか。
それとも、
「その人らしくいられること」を支える存在であってほしいのでしょうか。
自尊心のともしびを消さないために。
そんな視点も、これからの福祉機器には大切なのではないかと感じています。
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