高齢期の整理収納は「片づけ」だけではない ― 思い出のモノが支える心の力

弘瀨美加

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テーマ:シニア世代の心身の特性に配慮した整理収納



「もう使わないなら処分したらいいのに」
子世代から見ると、そう思うモノが、高齢者にとっては“人生そのもの”ということがあります。

先日、ご相談いただいたAさんのお話です。
Aさんは、親御さんの介護のため、約20年間海外で暮らしてこられました。
親御さんを看取った後、日本にUターン。
現在は、お子さんの住まいの近くで新しい生活を始められています。

ただ、一つ心残りがありました。
海外で暮らしていた家に置いてきた、お気に入りの食器です。
今度、その家に行き、どうしてもその食器を持ち帰りたいとのこと。
現在のお住まいは決して広くありません。
お子さんからは「これ以上物が増えるのは困る」と反対もされたそうです。

それでもAさんにとって、その食器は単なる“食器”ではありません。
親御さんとの時間。
異国の地での暮らし。
頑張ってきた日々。
人生の大切な記憶が、その器に詰まっているのです。

高齢期になると、過去を振り返ることには大きな意味があります。
懐かしい記憶をたどることは、不安やストレスを軽減し、
自分の人生を肯定的に捉え直す助けになることがあります。

「こんなこともあった」
「私、頑張ってきたな」
そうした記憶は、心の安心感や自信につながり、
高齢期を支える大きな力になることも少なくありません。

つまり、高齢者にとって長年連れ添ったモノや思い出の品は、
“過去の遺物”ではなく、今を生きる心の支えであることがあるのです。
だからこそ、高齢者の整理収納では、
ただ「減らす」「捨てる」だけではなく、
そのモノが持つ意味に耳を傾けることが大切です。

一方で、子世代との価値観の違いもあります。
自分にとって宝物でも、子どもにとって同じ価値とは限りません。
だから私はAさんに、こんなお話をしました。
「もし、お子さんに負担をかけたくないと思うなら、
『私がいなくなった後は処分して大丈夫』と伝えておくのも一つですよ」と。
口頭でもいいですし、お手紙などに書き残しておく方法もあります。

“今の自分を支えるモノ”を大切にしながら、
“その先の家族への配慮”もしておく。
それもまた、高齢期の整理収納なのかもしれません。
整理収納とは、単に空間を整えることではなく、その人の人生に寄り添うこと。
改めて、そう感じた出来事でした。


シニア世代の心身の特性に配慮した整理収納・comfy living


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弘瀨美加
専門家

弘瀨美加(講師)

comfy living

在宅介護経験者だから伝えられる実践的な整理収納スキルに強み。高齢者の心身の特性に配慮した収納のテクニックで安全で安心な住環境の整え方を提案。介護する人される人、双方の気持ちの負担も軽くなるよう努める。

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