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離婚後でも相続権がある人、相続権がない人の違いとは

太田英之

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テーマ:相続

夫婦が離婚した場合、財産の相続権はどのようになるのでしょう? 
離婚して夫婦関係が解消されると相続権はなくなります。そのため、例えば元夫が亡くなったとしても元妻は財産を相続することはできません。しかし、子供は別です。
今回は、離婚による元夫、元妻、子供の相続についてご説明します。

離婚後の配偶者に相続権はある?

相続において、配偶者(妻など)は強い立場にあります。法定相続では、相続人となる子供が何人いても被相続人(亡くなった人)の配偶者は、相続財産の1/2を受け取ることができます。

子供が2人いる場合は、子供たちはもう1/2の半分、つまり1/4ずつ受け取ることになりますし、子供が3人の場合はそれぞれ1/6ずつということになります。

配偶者の権利が大きく認められているのは、被相続人の財産形成にあたって配偶者が果たした役割・貢献が大きいと考えられるからです。また、例えばご主人が亡くなった後の妻の生活保障という意味もあります。

ただ、離婚後はどうかと言えば、離婚後の元配偶者には相続権がありません。離婚によって夫婦関係が解消されてしまえば、相続には全く関係のない「他人」ということになるからです。

離婚後でも相続権がある人

しかし、離婚後でも子供には相続権があります。AさんとB子さん夫婦が離婚し、子供のCさんはB子さんが育てることになったとします。

その後、Aさんが亡くなった場合、元配偶者のB子さんには相続権はありませんが、AさんとB子さんの子供であるCさんには相続権があります。これは、例えばAさんが別の女性と再婚し子供・D子さんをもうけていたとしても変わりません。D子さんと同じように、Cさんには相続権が認められています。

もちろん、Aさんが再婚した女性(相続開始時の配偶者)には相続権があります。ただ、もしAさんが再婚した女性に連れ子・Eさんがいたとして、Eさんに相続権があるかと言えば、Eさんには相続権はありません。AさんがEさんをかわいがっていたとしても事情は変わりません。Aさんと血のつながりのないEさんには相続権がないのです。

この場合、AさんがEさんに相続権を与えたいと思うのであれば、養子縁組をする必要があります。養子縁組をすることで、EさんはAさんの「法律上の子」になるからです。

離婚歴がある場合に起こりうる相続トラブル

離婚歴がある場合に起こりうる相続とトラブルをいくつか見てみましょう。

【前妻の子が現れた】
F子さんのお母さんが再婚したのは、F子さんがまだ小さいときのことです。親子三人で仲良く暮らしていましたが、先にF子さんのお母さんが亡くなり、今年になってお父さんが亡くなり、F子さんが相続人となりました。F子さんはすでに、Aさんと養子縁組をしています。

しかし、そこへ前妻の子が現れました。F子さんのお母さんは後妻で、前妻に子があったのです。F子さんはそのことを知らなかったので、遺産は100%と自分が受け取ることになると考えていたのに、急に相続分が50%になり、納得できません。

【父が再婚していた】
両親が離婚した後、Gさんは母親と暮らしていました。父親とは、もう何年も顔を合わせていません。その父親が亡くなり相続が発生しましたが、驚いたことに父親は再婚していました。相手はGさんと同い年の若い女性です。

Gさんの父親はかなりの財産を作っていましたが、Gさんの母親には相続権はありません。

Gさんから見れば、父親の再婚相手は、単に財産のために結婚したとしか思えません。遺産分割協議では両者の口論となり、解決の目処が立ちません。

【内縁の妻】
H子さんは長年、Iさんと暮らしていました。Iさんには離婚歴があります。しかし、子供はいません。肉親としては、兄妹が2人いるだけです。

そのIさんが急逝し、H子さんは途方に暮れました。何がしかの財産は相続できると思っていたところ、内縁の妻には相続権がないことがわかったからです。Iさんの兄妹2人は、相続財産はすべての自分たちのものと主張しますが、H子さんは承諾できません。

相続トラブルを回避する

上の3つは、稀なケースというわけではありません。むしろ、ありがちなケースと言っていいでしょう。

相続におけるトラブルは個々のケースにそれぞれ事情があり、トラブルを回避するための一定の方法があるわけではありません。しかし、被相続人が遺言書を作成しておくことで、大きなトラブルにならないようにすることは可能です。

遺言には「遺言事項」と「付帯事項(付言事項)」があります。「遺言事項」は、相続分の指定や遺産分割方法の指定など財産の処分・分配に関することであり、「付帯事項(付言事項)」は
被相続人の思いを伝えるものです。

上に挙げた「内縁の妻」のケースであれば、H子さんへ一定の財産を遺す旨が明記されていれば、H子さんの暮らしも立つことになります。

「前妻の子が現れた」「父が再婚していた」のケースにおいても、財産の分配とともに、前妻の子との関係や再婚に至る経緯を伝えることで、トラブルが大きくなるのを防ぐ可能性があります。

遺言書は遺された大切な人たちを争いから守るために、とても有効です。財産を明確にし、どのように引き継いでいくのかを記しておくことは、自分の意志を成し遂げることにもなりますので、財産の多少を問わず遺言書を作成しておくことをおすすめします。

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太田英之
専門家

太田英之(司法書士)

クローバー司法書士事務所

不動産登記・商業登記申請業務をはじめ、相続・遺産承継業務に力を入れる。後見制度や信託制度に関する知識・経験も豊富。会社や個人からの相談を親身に聞き、法的課題を整理、解決策を提案するスキルに強みをもつ。

太田英之プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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