「その子の内側の体験の世界」に「楽しく心地よい刺激と運動」を加える50

吉田洋一

吉田洋一

テーマ:子育てとは

 子育てとは、「その子の内側の体験の世界」に「楽しく心地よい刺激と運動」を加えることです。
 この子育て論を訪問の皆様方へ周知したく、コラムへ掲載しております。
 「その子の内側の体験の世界」の子どもさんには、いろいろな特性があります。
 発達障害であるかどうかということではなく、また、それが何だかんだではなく、その子を理解してあげることが重要なのです。
 そのかかわりは胎児から始まります。

 前回のコラムをもう一度掲載します。

 「その子の内側の体験の世界」のキーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」でした。
  その子の特性を理解し、その子が社会に積極的にかかわることをサポートするという意味です。

 その子の特性つまり「その子の内側の体験の世界」を理解し、その子が社会に積極的にかかわることが子育てですと解説しました。
 では、それはどういうことなのかを皆様方が知りたがっていることなのでしょう。
 それは、その子に「楽しく心地よい刺激と運動」を与えることなのです。
 胎児や乳児、幼児(3歳児まで)は「心地よい刺激」です。幼児(4歳以上)以上は「楽しい運動」です。4歳以上の幼児には「心地良い刺激」は並行して内在します。 

 これが、私の研究における、育児方法であり、「子どもの心身の発達」及び「子どもの心身の伸びしろ値の向上」です。
 この取り組みは、すべて脳科学を基にするものです。
 また、テニス指導においても同様です。よって、テニス指導においては、他のスポーツ指導者とはすべて異なるものです。
 また、この画期的な指導法は「脳を育てること」につながるものです。

 「楽しく、心地よい」身体運動と刺激が、脳をつくるは、別にしてコラム掲載しています。
 また、脳をつくることが「子育て」ですと、別にしてコラム掲載しています。
 どれもこれも、子育てにつながり、またその子の特性を理解しながら、社会へとつなげていけるのです。
 
 「脳を育てること」が「子育て」ですので、皆様ももう一度、最新の脳科学における「運動と脳」の新常識をご理解ください。
 前に解説していることを再度述べるかもしれませんが、子育ての皆様が「子どもの脳のことを理解しながら、「子育て」をこれからもお願いいたします。

 ご注意申し上げますが、脳というと大人の皆様方は「知識脳」つまり「暗記脳」と早合点しますが、「知識脳」ではありません。
 お分かりにならないとは思うますが、子育てに積極的に使うのは「運動脳」です。
 もう一つ大事なのは、勝ち負けだけの「運動脳」を使うのではなく、「自分の伸びしろ値」を上げる「運動脳」を使うことです。

 子育てにとても重要なことを述べました。
 皆様方であれば、どのような「心地よい刺激」や「楽しい運動」を子どもへ提供していただけるのでしょうか?
 「心地よい刺激」は、養育者が積極的にかかわることが重要です。
 「楽しい運動」は、この子には何が「楽しい運動」なのか見つけてあげることが重要です。
 前回は「脳を育てる」を再掲し、皆様方へ「子育て」のご理解を促しました。
 今回のコラムは「楽しく、身体を動かす」です。
 これも、「子育て」にとてもたいせつなものです。


 「運動脳」の解説47

 神経発達症(発達障害)のケア2

 コラム「脳を育てる」から今まで述べてきましたが、神経発達症(発達障害)とは、「何らかの精神発達のおくれをもち、それが生きにくさをもたらしている」と定義され、これが脳の機能障害によるものです。
 そして、神経発達症(発達障害)のケアには、「楽しく、心地よい運動」をして、神経伝達物質の分泌量を適量確保することや神経細胞(ニューロン)と神経細胞(ニューロン)の接点であるシナプスを増やすことですと述べました。
 さらに、前回「アストロサイト」の異常が、神経発達症(発達障害)に関わっていて、その原因の一つに脳の発達を助けるホルモンであるインスリン様成長因子(IGF)の遺伝経路を阻害していることがわかりました。
 そのインスリン様成長因子(IGF)は、「楽しく、心地よい運動」をしているときに、BDNF(脳由来神経栄養因子)によって、その量を増やすと述べました。
 つまり、BDNF(脳由来神経栄養因子)を増やすことができれば、これも神経発達症(発達障害)のケアになるということになります。
 前のコラム「神経細胞(ニューロン)の維持と成長に関わる神経栄養因子1及び2」で、「神経栄養因子BDNFはシナプスの近くの貯蔵庫に蓄えられ、血流が盛んになると放出される」と述べましたが、具体的にBDNF(脳由来神経栄養因子)の量を増やすためには、どのようにしたらいいのでしょうか。

 脳科学の研究から、BDNF(脳由来神経栄養因子)の放出つまり増加について説明します。(アメリカの医学博士ジョンJ.レイティ著「脳を鍛えるには運動しかない」NHK出版)
 米国カリフォルニア大学アーヴァイン校の脳老化・認知症研究所カール・コットマン所長は、マウスに運動させて脳内のBDNF(脳由来神経栄養因子)量を測定する実験をしました。重要なのはマウスが「自発的に運動する」ことでした。無理やりランニングマシンで走らせたら、どんな結果が出ても人為的ストレスによるものだからです。人間と違って、げっ歯類はもともと体を動かすのが好きなようで、走ったマウスの脳は、BDNF(脳由来神経栄養因子)が増えていました。また、長く走ったマウスほどその量が多かったのです。特に海馬で急増していました。コットマン氏の研究によって、運動が学習のメカニズムを細胞レベルで強化することを証明しました。BDNF(脳由来神経栄養因子)は、情報を取り込み、処理し、結びつけ、記憶し、つながりをもたせるのに必要な道具をシナプスに与えているのです。
 カナダのマギル大学の心理学者ドナルド・ヘップ氏は、実験用のラットを何匹か家にもち帰って、ペットと同様に触られたりおもちゃにされたことにより、学習検査でははるかにいい成績を収めました。ヘップ氏は、この現象を「使用がもたらす可塑性」と呼びました。ヘップ氏の研究がなぜ運動に結びつくかというと、脳にとって運動は新しい経験になるからです。刺激の多い環境に置かれたラットたちは、学習作業をうまくこなしただけではなく、空のケージにぽつんと置かれたラットに比べて脳が重くなっていました。実験は「環境富化」と呼ばれ、ゲージにおもちゃや障害物、回し車を置いたり、食べ物を隠したりして、ラットたちをひとつのゲージにまとめ、互いと付き合いながら遊べるようにしました。感覚刺激と社会的刺激の多い環境で暮らすと、脳の構造と機能が変わることがわかりました。もちろん、ラットの脳は、BDNF(脳由来神経栄養因子)が増えていました。
 米国イリノイ大学神経科学者のウィリアム・グリーノー氏は、「環境富化」によって、神経細胞(ニューロン)に新たな樹状突起が生じることを確認しました。その新しい枝は、学習、運動、社会との接触という環境の刺激によって生まれたもので、その結果、シナプスは結びつきを増やしました。その結びつき部分の髄鞘が厚くなることも確認されました。このような成果にもBDNF(脳由来神経栄養因子)が深く影響を与えていました。(p54-p60)

 以上の研究の成果から、「自発的に運動する」ことや「環境の富化」が、BDNF(脳由来神経栄養因子)を増やすことになることを実証しました。

 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

吉田洋一プロはIBC岩手放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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