子育てには「心地よい刺激と楽しい運動」を138
子育てとは、「その子の内側の体験の世界」に「楽しく心地よい刺激と運動」を加えることです。
この子育て論を訪問の皆様方へ周知したく、コラムへ掲載しております。
「その子の内側の体験の世界」の子どもさんには、いろいろな特性があります。
発達障害であるかどうかということではなく、また、それが何だかんだではなく、その子を理解してあげることが重要なのです。
そのかかわりは胎児から始まります。
前回のコラムをもう一度掲載します。
「その子の内側の体験の世界」のキーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」でした。
その子の特性を理解し、その子が社会に積極的にかかわることをサポートするという意味です。
その子の特性つまり「その子の内側の体験の世界」を理解し、その子が社会に積極的にかかわることが子育てですと解説しました。
では、それはどういうことなのかを皆様方が知りたがっていることなのでしょう。
それは、その子に「楽しく心地よい刺激と運動」を与えることなのです。
胎児や乳児、幼児(3歳児まで)は「心地よい刺激」です。幼児(4歳以上)以上は「楽しい運動」です。4歳以上の幼児には「心地良い刺激」は並行して内在します。
これが、私の研究における、育児方法であり、「子どもの心身の発達」及び「子どもの心身の伸びしろ値の向上」です。
この取り組みは、すべて脳科学を基にするものです。
また、テニス指導においても同様です。よって、テニス指導においては、他のスポーツ指導者とはすべて異なるものです。
また、この画期的な指導法は「脳を育てること」につながるものです。
「楽しく、心地よい」身体運動と刺激が、脳をつくるは、別にしてコラム掲載しています。
また、脳をつくることが「子育て」ですと、別にしてコラム掲載しています。
どれもこれも、子育てにつながり、またその子の特性を理解しながら、社会へとつなげていけるのです。
「脳を育てること」が「子育て」ですので、皆様ももう一度、最新の脳科学における「運動と脳」の新常識をご理解ください。
前に解説していることを再度述べるかもしれませんが、子育ての皆様が「子どもの脳のことを理解しながら、「子育て」をこれからもお願いいたします。
ご注意申し上げますが、脳というと大人の皆様方は「知識脳」つまり「暗記脳」と早合点しますが、「知識脳」ではありません。
お分かりにならないとは思うますが、子育てに積極的に使うのは「運動脳」です。
もう一つ大事なのは、勝ち負けだけの「運動脳」を使うのではなく、「自分の伸びしろ値」を上げる「運動脳」を使うことです。
子育てにとても重要なことを述べました。
皆様方であれば、どのような「心地よい刺激」や「楽しい運動」を子どもへ提供していただけるのでしょうか?
「心地よい刺激」は、養育者が積極的にかかわることが重要です。
「楽しい運動」は、この子には何が「楽しい運動」なのか見つけてあげることが重要です。
前回は「脳を育てる」を再掲し、皆様方へ「子育て」のご理解を促しました。
今回のコラムは「楽しく、身体を動かす」です。
これも、「子育て」にとてもたいせつなものです。
「運動脳」の解説34
五つの心(Five Mind)
前回は、「体育」は、体を育てるためにあるのであり、そのためには、心もからだを通してみようとすることが必要であることを解説しました。
また、これを裏付けるように、「体育」は、「身体の安全を達成するための表現である。特に、身体を確実にコントロールすることによって得られる精神的な安全の表現である」とアルフレッド・アドラーの言葉を引用しました。
今までの「体育」の評価は、例えばサッカーであれば、シュートが上手いとかパスが上手いとかそのテクニック(技術)のレベルで評価していたのではないでしょうか。これでは、体を育てるものではなく、まして心は育ちません。スポーツや競技スポーツをツールとして活用しますが、そのテクニックを評価するのが「体育」ではないはずです。つまり、身体的には優れて見えますが、心(精神)はまだまだ未熟であることを理解することがたいせつです。
では、「体育」の授業で何を評価すればいいのでしょうか。それが前回コラムで紹介しました日本体育大学野井真吾教授の説く「心もからだを通してみる「体育」」であり、アルフレッド・アドラーの説く「子どもの精神的な安全の表現のための「体育」」なのです。
望ましい集団活動つまり「体育」に必要な心を紹介します。
2008年、米国ハーバード大学ハワード・ガードナー教授(心理学者)は、多重知能理論や社会的評価の獲得を本質とする創造性理論をもとに「五つの心(Five Mind)」を提唱しました。「五つの心(Five Mind)」の内容は次のとおりです。
1 熟練した心
ある分野に特有の思考方法に精通し、それを使いこなす。長期にわたって着実に物事をやり続け、技術と理解を深める。
2 統合する心
さまざまな情報源から得た情報を、客観的に理解、評価する。自分のためだけでなく、他の人びとにも役立つ形に情報を統合する。
3 創造する心
新しい発想、斬新な視点からの問題提起、画期的な考えの創出を行い、情報を豊富にもつ消費者に最終的に受け入れられる。
4 尊敬する心
個人や集団の間の差異に目を向け、それを歓迎し、異なる「他者」を理解しようと努め、共同作業を円滑に進めようとする。
5 倫理的な心
自分の仕事の性質と自分の住む社会のニーズや欲求について思索し、利己的欲求を超えた仕事の仕方を概念化して考える。
この「五つの心(Five Mind)」は、子どもの才能伸長と協調性を育むものになります。また、今まで解説してきました子どもの「生きる力」に相応するものです。
学校での「体育」の評価ですが、「知識・技術」偏重の評価ではなく、新学習指導要領の学習評価の基本構造である、どのように社会や世界と関わり、よりよい人生を送るかという「学びに向かう力、人間性等」における「主体的に学習に取り組む態度」や児童・生徒の一人ひとりの良い点や可能性、進歩の状況について(個人内評価)を鑑み評価することが重要です。
学習の評価は「目標に準拠した評価」(いわゆる絶対評価)に改められました。従来の「体育」は、表面の見た目の技術評価(いわゆる相対評価)であったと思いますが、この「五つの心(Five Mind)」を踏まえた指導計画が求められます。
実際に「体育」の授業を行うときに注意しなければならない点を述べます。先ほどの例で、サッカーの授業で卓越したボールさばきをする子どもにそのテクニックは必要がないとかそれだけでは評価しないなどは絶対に悟られてはなりません。そのテクニックはその子にとっては、勇気づけの勲章であり、プライドです。評価する先生は、その子に「五つの心(Five Mind)」の中から、例えば「統合する力」の他の人びとにも役に立つ心や「尊敬する心」の他者を理解し、共同作業を円滑に進める心を身につけるように仕向けることです。その子の勇気をくじくことのないように、そして優越コンプレックスを持たせないようにすることが肝要です。
これからの「体育」は、子どもたちが学校の活動を円滑に過ごすことができる「からだと心」をつくるためにあるべきだと考えます。
子どもたちが「朝起きられない」「夜眠れない」「疲れた」「だるい」「低体温傾向」「通学意欲がない」「キレる」「スクリーン漬け」など、からだのおかしさを発しています。脳ではストレス反応が起きています。
これまで「楽しい、心地よい運動」は心身の機能を改善すると述べてきました。でも、「体育」で「楽しい、心地よい運動」はできないという先生もいらっしゃると思いますが、子どもにとって「楽しい、心地よい運動」とは何かと皆様に問うているのです。その答えは、子どもにとっての「優越性の追求」です。「体育」の授業で先生が指導計画するのが、その方向付けです。この優越性の追求につきましては、次回に詳しく述べたいと思います。
同じことをもう一度お伝えしますが、私の願望も含めて、これからの「体育」が子どもたちの「からだと心」を健全にしてくれると考えます。また、脳科学からも実証されているように、子どもたちの脳では「脳の可塑性」や「シナプスの可塑性」が促されているのです。
次回に続きます。



