「その子の内側の体験の世界」に「楽しく心地よい刺激と運動」を加える33

吉田洋一

吉田洋一

テーマ:子育てとは

 子育てとは、「その子の内側の体験の世界」に「楽しく心地よい刺激と運動」を加えることです。
 この子育て論を訪問の皆様方へ周知したく、コラムへ掲載しております。
 「その子の内側の体験の世界」の子どもさんには、いろいろな特性があります。
 発達障害であるかどうかということではなく、また、それが何だかんだではなく、その子を理解してあげることが重要なのです。
 そのかかわりは胎児から始まります。

 前回のコラムをもう一度掲載します。

 「その子の内側の体験の世界」のキーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」でした。
  その子の特性を理解し、その子が社会に積極的にかかわることをサポートするという意味です。

 その子の特性つまり「その子の内側の体験の世界」を理解し、その子が社会に積極的にかかわることが子育てですと解説しました。
 では、それはどういうことなのかを皆様方が知りたがっていることなのでしょう。
 それは、その子に「楽しく心地よい刺激と運動」を与えることなのです。
 胎児や乳児、幼児(3歳児まで)は「心地よい刺激」です。幼児(4歳以上)以上は「楽しい運動」です。4歳以上の幼児には「心地良い刺激」は並行して内在します。 

 これが、私の研究における、育児方法であり、「子どもの心身の発達」及び「子どもの心身の伸びしろ値の向上」です。
 この取り組みは、すべて脳科学を基にするものです。
 また、テニス指導においても同様です。よって、テニス指導においては、他のスポーツ指導者とはすべて異なるものです。
 また、この画期的な指導法は「脳を育てること」につながるものです。

 「楽しく、心地よい」身体運動と刺激が、脳をつくるは、別にしてコラム掲載しています。
 また、脳をつくることが「子育て」ですと、別にしてコラム掲載しています。
 どれもこれも、子育てにつながり、またその子の特性を理解しながら、社会へとつなげていけるのです。
 
 「脳を育てること」が「子育て」ですので、皆様ももう一度、最新の脳科学における「運動と脳」の新常識をご理解ください。
 前に解説していることを再度述べるかもしれませんが、子育ての皆様が「子どもの脳のことを理解しながら、「子育て」をこれからもお願いいたします。

 ご注意申し上げますが、脳というと大人の皆様方は「知識脳」つまり「暗記脳」と早合点しますが、「知識脳」ではありません。
 お分かりにならないとは思うますが、子育てに積極的に使うのは「運動脳」です。
 もう一つ大事なのは、勝ち負けだけの「運動脳」を使うのではなく、「自分の伸びしろ値」を上げる「運動脳」を使うことです。

 子育てにとても重要なことを述べました。
 皆様方であれば、どのような「心地よい刺激」や「楽しい運動」を子どもへ提供していただけるのでしょうか?
 「心地よい刺激」は、養育者が積極的にかかわることが重要です。
 「楽しい運動」は、この子には何が「楽しい運動」なのか見つけてあげることが重要です。
 前回は「脳を育てる」を再掲し、皆様方へ「子育て」のご理解を促しました。
 今回のコラムは「楽しく、身体を動かす」です。
 これも、「子育て」にとてもたいせつなものです。


 「運動脳」の解説30

 脳科学が実証した「共同体感覚」1

 前回、「生きる力」、つまり子どもに有用な道を経験させることが、優越性の追求であり、その有用なものは「共同体感覚」であることを説明しました。そして、もちろん脳では「シナプスの可塑性」が働いていることを述べました。
 今回はその実証例を紹介します。運動での共同体感覚が脳の可塑性を生み出しているのです。前のコラム「培ってきた脳の発達」でお話ししましたが、アメリカの医学博士ジョンJ.レイティは、著書「脳を鍛えるには運動しかない」NHK出版において、少し長くなりますが、次のように述べています。

 <フィットネスを超えて>
 多くの人と同じように、わたしも体育なんかどうでもいいと思いながら育った。いくらか楽しみはしたが、覚えている限り、体育の授業でなにかを学ぶということはなかった。おとなになって、教師や医者を前にして、運動は気分や注意力、自信、社会性にプラスの影響を及ぼしますと講演するようになっても、体育がその手段になるとは思いもしなかった。わたしの経験では、体育は運動をするものではなく、むしろ逆に運動する気をなくさせるものだった。内気な子や不器用な子、病弱な子―つまり、運動の効果を最も得られるはずの子どもたち―が押しのけられ、ベンチでほかの子の活躍を眺めているなんて、なんと残酷な皮肉だろう。当時ならジェシー・ウォルフラムのような生徒はのけ者にされ、恥ずかしい思いをしながらすごすしかなかったはずだ。わたしは何年も、多くの患者から体育で屈辱を味わった話を聞かされていた。
 ネーパーヴィルの奇跡が起きたのは、ローラーとジェンタルスキの力によるところが大きい。「以前、体育では懸垂をさせていました」と、ジェンタルスキは後悔するような口調で振り返る。「うちの学区の男子生徒の約65パーセントは懸垂が1回もできなかったと思います。体育の授業に出て、しくじりなさい。というわけです。」
 ジェンタルスキは鬼軍曹から体と脳と心の彫刻家へと変身したわけだが、なにより驚かされるのは、彼が根本的なところから体育を変えようとしていることだ。たとえば、彼がセントラル高校で起こした最も革新的な変化のひとつは、スクエアダンスを新入生の必須科目に加えたことだ。それのなにが新しいのかと思うかもしれないが、その目的はダンスの習得よりむしろ社会性を身につけさせるところにあるのだ。生徒たちはパートナーと踊るだけでなく、会話することも求められる。いろいろな意味ですばらしいアイデアだ。最初の数週間は、全員、台本を与えられ、それに沿ってパートナーと会話し、一曲踊り終えるたびにパートナーを替える。授業が進むにつれて生徒たちは台本なしで会話することを指示される。最初は30秒、それをだんだん長くしていく。最終試験では、15分間パートナーとおしゃべりをしたのちにパートナーに関する情報を10件、正確に覚えているかどうかを問われる。
 内気な生徒のなかには、人と話したり友だちをつくったりする方法を学ぶ機会がなく、自分の殻に閉じこもり、とくに異性を避けようとする子がいる。しかし、ジェンタルスキはスクエアダンスのクラスに出た生徒は、ひとりだけ選び出されたり、社会性を養う特別クラスに追いやられたりせず、怖さを感じなくてすむ設定で会話や交流の仕方を練習できるのだ。この活動は気晴らしになる一方で、生徒の自信も育てる。対話のこつを身につける生徒もいれば、気後れを克服するので精一杯という生徒もいるが、皆がやっていることなので、それほど照れくさくはない。
 わたしがネーパーヴィル革命の詳細や、子どもたちが体育の授業で社会性を学んでいることを話すと、同僚たちは驚いて言葉を失う。わたしもそうだったが、圧倒されてしまうのだ。これまで長年にわたって、わたしは自ら「社会性」と名づけたものの問題をつきとめ、解決しようとしてきたが、ジェンタルスキは人とのかかわりが希薄な現代において、ますます孤独になっていくわたしたちの生活を変える完璧な処方箋を見いだしたのだ。それも、なんと体育の授業で!環境と機会とやる気を与えることで、人とのかかわりに不安を感じる生徒は、人に近づく方法や、距離の保ち方、いつ相手に話せるかを練習し、プラスの記憶をインプットしていく。運動は社交の潤滑油となり、不安を減らすので、こうした学習を進める上で重要なはたらきをする。生徒の脳は運動によって準備が整い、経験を記録する回路が作られる。その経験は、最初は難しく思えるかもしれないが、クラス全員で一緒にやっているうちにそれほどでもなくなってくる。これは直感的に考えても、自意識過剰で傷つきやすい年ごろの生徒を打ち解けさせるすばらしい方法だ。ジェンタルスキは、生徒全員を運命共同体にしたてて道具を与え、自信をもつように励ましている。ダンスをすることで、すべてがうまくいくのだ。
 ネーパーヴィルの保護者の多くが子どもの好きな教科は体育だと語る理由は、こういうところにあるのだろう。保護者のひとり、オルファット・エル=マラックの娘二人はマディソン中学校とセントラル高校に通った。「あれは単なる体育ではありません。子どもたちの内面でなにかが起きるのです」彼女は言う。「やる気を起こさせるプログラムと言っていいでしょう。娘たちは自分自身を信じています。二人とも強い自信をもっていますが、始めからそうだったわけではありません。203学区の体育プログラムのおかげです」

 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

吉田洋一プロはIBC岩手放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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