その子の内側の体験の世界25
「その子の内側の体験の世界」第41回目を解説します。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
外側から「行動」と観察されるものは、本人の内側からすれば「体験」であり、私たちは「体験」の世界を生きているのです。
つまり、子どもも同様であって、子どもを理解するとは、その体験を理解することなのです。
当然ながら、子育てをする親や保育者、学校の先生や塾関係者などは、乳幼児であれ、小学生であれ、中学生であれ、その子の内側の「体験」を理解して、子育てや学びをしていなければなりません。
これは、今後の子育てや学びには、「その子らしさ」の基本的人権を保障し、尊重し、理解して子育てや学びに対応していることが求められます。
また、「発達障害」かどうかではなく、その似たような行動や振る舞いも「その子らしさ」であることを理解し、実践することが求められています。
「その子の内側の体験の世界」を数回に分けて解説してきました。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
「その子を知る」は、前回までに解説しました。
次は、「その子にはたらきかける」です。
親が5歳になるまでに積極的にかかわることがとてもたいせつになります。
これは、子育ては「脳を育てること」で詳細に解説しました。
もう一度、読み直しましょう。
「その子にはたらきかける」1
まどろみとほほえみ
生まれたばかりの赤ちゃんにとって、外界は未知なものばかりです。
未分化で感じた外界の刺激の感覚情報がわからないままの不安定な世界です。
新生児は、生活時間の多くを「まどろん」で過ごすことで、過剰な刺激から生じる不安や混乱から護られています。
その一方、未知ゆえに、外界を知っていくことが必要になってきます。
この活動もすでに新生児から始まることになります。
この活動は「探索活動(探索行動)」といいます。
この時期は親も、「まどろみ」を妨げないようにできるだけ静かで穏やかで過剰な刺激のない環境にしようと努めます。
その穏やかな「まどろみ」のなかで、新生児は「ほほえみ」の表情を浮かべるのです。
これは睡眠中に起きる現象で、対人的な意味をもたない「生理的な微笑み」と考えられています。
けれども、親はそんなことはどうでもよく、微笑は人間だけにみられる現象で、人間が社会的な対人交流を促すうえでとてもたいせつな役割を果たしています。
実際に人の顔を見て微笑むようになるのは、3か月頃です。
ただし、まだ特定の相手を意識しての微笑ではなく、顔という形への反応と考えられています。
誰の顔に対してでも無差別に微笑みます。顔でなくても、円形の真ん中に黒い点が二つ並んでいる図形でも、赤ちゃんは微笑むことが実験で知られています。
もちろん、親はそんなふうには考えません。
つまり、自分への愛の表情ととらえて、微笑み返したり、抱っこしたりを繰り返します。
その結果、数か月くらいから、親の顔を他の人の顔とは明らかに区別して、親へ向けての微笑が生まれてきます。
次回に続きます。