子育てとは、脳を育てること4
私の研究における、「子どもの心身の発達」及び「子どもの心身の伸びしろ値の向上」は、すべて脳科学を基にする取り組みと活動です。また、テニス指導においても同様です。よって、テニス指導においては、他のスポーツ指導者とはすべて異なるものです。
また、この画期的な指導法は「脳を育てること」につながるものです。
「楽しく、心地よい」身体運動と刺激が、脳をつくる
この馴染みのない表題に、皆様方からいささか怪訝そうな顔色が垣間見えてきます。
この表題のシリーズでコラム掲載を短編的に掲載します。
また、「子育てとは、脳を育てること」における、脳を育てることの手段や方策などに関わります。
最新の脳科学における「運動と脳」の新常識を次に述べます。
「運動すると脳の機能を高める神経栄養因子(BDNF)が増加する」2
BDNFは、神経活動に依存して発現が増加することが古くから知られています。そのため、運動においては、身体運動に伴い生じる神経活動がBDNFの発現増加をもたらす機序だと考えられます。実際に運動は神経活動を上げことが示されています。
BDNF発現が自発活動量や神経活動マーカー(c-Fos)の発現量と相関することがわかっています。
こうした脳内の機序に加えて、末梢組織から出てくる因子や代謝産物も脳のBDNF発現に作用することがわかってきました。
中でも、筋で産出されたCTSBやIrisinなどのマイオカイン、肝臓由来のGpld1やケトン体(DBHB)は、血液を介して脳へ直接的または間接的に作用し、BDNFの発現を増加することが示されています。
興味深いことに、運動したマウスの血漿を運動をしていない別のマウスに投与すると、BDNFの発現や神経新生などの効果が運動をしていないマウスにもあらわれることがわかりました。したがって、運動がもたらす作用においては、脳だけでなく骨格筋や循環系も重要な役割を果たしていることが推察されます。
このように、運動は生体内の多様なシステムを介してBDNFの発現を増強することが、近年の研究で徐々にですが明らかになってきました。
次回に続きます。