その子の内側の体験の世界8
「その子の内側の体験の世界」第17回目を解説します。
キーワードは、「その子を知る」「その子にはたらきかける」「その子を見守る」です。
また、今まで解説してきたことと重複するかもしれませんので、今までのコラムも再読していただければ幸いです。
「その子を知る」16
○シェマ(ピアジェ)
人間の知性は、外界から与えられた体験を取り入れて、それによって外界や体験への自分なりの取り込みである「とらえ」を形成します。つまり「同化」です。
そうしてつくられたとらえをピアジェは「シェマ」と名づけました。シェマとは「図式」とか「構図」といった意味合いの言葉であり、分かりにくい抽象概念ですが、ものごとがあるつながりをもって構成されるイメージです。
例えば、乳児について考えてみましょう。哺乳瓶が目の前にあるとミルクが飲めます。乳児は言葉でそうとらえるわけではなく、日々哺乳が繰り返されるうちに、やがて哺乳瓶を目にしただけで嬉しそうに声を上げるようになります。何らかの「とらえ」が生まれたのです。
つまり、そこには非言語的なものですが、一つの図式的なとらえ、すなわち「シェマ」が獲得されたのです。
哺乳瓶の視覚、吸引という運動、ミルクの味覚、嚥下という運動、満腹という身体感覚という一連の感覚と運動がひとまとまりのセットとなって、頭の中で感覚的な図式となったものが「シェマ」です。
次に、哺乳瓶ではないもので、ガラガラを持たせたらどうなるのだろう。乳児はこれまでのシェマどおりガラガラを口に運んで吸おうとします。ところが美味しいミルクの味はしません。その体験によって、乳児は新たなシェマをつくり直すことになります。
ガラガラからはミルクは味わえない、哺乳瓶とガラガラは違うんだということを言葉ではないとらえ方が「調節」です。
次回に続きます。