「生きる力」にみる子どもの発達の考察
現状
今年6月にスポーツ庁の有識者会議が発表した「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」で、教員の働き方改革や負担を軽減するために部活動を民間のスポーツクラブなどに委託する地域移行に加えて、日本中学校体育連盟に対して全国大会の見直しを求めています。
全国大会の見直しが議題になっているのは、中高生の部活動における専門の顧問やコーチによる体罰や長時間にわたる練習、それを支える保護者などの負担といった“ブラック部活”問題の中心に「大会」が存在するためです。大会で勝つためには練習は過熱し、強豪校では授業そっちのけで部活動のためだけに登校する生徒もいるようです。
既にスポーツ界では、日本柔道連盟が小学生年代の全国大会を廃止するなど、若年世代での大型大会を見直す動きが進んでいます。そして、今回スポーツ庁が目をつけたのが、義務教育である中学生年代の選手が集まる「全国中学校大会」でした。
「全国中学校大会」は、各学校の運動部活動の一環の対外試合として行われています。
「全国中学校大会」の目的は、中学校教育の一環として中学校生徒に広くスポーツ実践の機会を与え、技能の向上とアマチュアスポーツ精神の高揚をはかり、心身ともに健康な中学校生徒を育成するとともに、生徒相互の親睦をはかるためです。
が、しかし「全国中学校大会」を目指すために、体罰や長時間の練習も大会に勝つことが目的で引き起こされ、そして勝つことを最優先する“勝利至上主義”の下で、部活動の熱はエスカレートしてきました。
大会で勝つことを優先し過ぎれば授業やプライベートの時間を侵食しますし、全員がどれだけ頑張っても実際に全国大会に出られる生徒はほんの一握りです。大半の生徒にとっては、出場もできない大会のために過剰に厳しい練習を強いられている状態なのです。
また、「全国中学校大会」以外に中学校の顧問だけで組織するものが、生徒を集めて土日休日に大会を開催しているものがあるそうです。教員の働き方改革や生徒の休日の部活動の在り方に逆行している典型的なあり方ですので、このような大会は即座に廃止しなければなりません。
全国大会に出られない学校や生徒から集めたお金を全国大会に使ったり、中体連がビジネス的な恩恵を受けているなども偏っていて「平等」の概念から大きくはみ出しています。
全柔道連会長の山下泰裕氏は、児童が健全に発達していくのに「目先の勝利にこだわる必要はない」といい、元陸上選手の為末大氏も「目先の勝ちを拾おうとする誘惑」であり、「中学生までは全国大会はいらないのでは」と提議している。「トータルでみると、若年層での全国大会は多くの子どもを幸せにしないシステム」だと感じているといいます。
以上、部活動が過熱したことで、生徒たちの生活が圧迫され、教員の労働環境が悪化し、パワハラの温床となっていることや、公的支援を受ける形での義務教育年代の全国大会は、廃止することが望ましいとの意見が多数あります。
次回に続きます。