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運動と体育とスポーツについて

吉田洋一

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テーマ:運動と脳

 ここで、運動という意味や理解を訪問の皆さんと共有したいと思います。
 運動というと「身体を動かすこと」と一般的には解されます。
 なので、体育もスポーツも「身体を動かすこと」ですから、皆さんもそして学校の先生もスポーツ指導者も同じだと思っているのです。ここに大きな間違いや相違があります。
 「運動」と「体育」と「スポーツ」について説明します。
 まず、「運動」についてです。
 1 物体が時間の経過と共に位置を変えること、つまり、「物体が自ら動くこと」を意味します。
 2 健康を維持するために身体を鍛えて動かすこと、つまり、「スポーツと同じ」意味です。
 3 目的があって活動すること、つまり、「目的のために自ら行動を起こすこと」を意味します。
 4 物事の状態が時間と共に変化すること、つまり、「時間が流れて動くこと」を意味します。
 5 生物の生理的な動きのこと、つまり、「生物が能動的に身体の部位を動かすこと」を意味します。
 上記の「運動」に共通するのは、ある目的のために、「自ら身体を動かす」ということです。

 次に、「体育」についてです。
 1 「適切な運動を実践して、身体の健全な発達を促したり、健康促進を目的とした教育」という意味で、知育に対する言葉です。
 2 「学校の教科の一つ」という意味で、教育機関により定められた課程の一つで、身体を使う学科のことです。
 上記の「体育」に共通するのは、身体の健全な発達を促したり、健康促進を目的とした、身体を使う教育方法で、つまり、「身体を使って教育」ということです。

 次に、「スポーツ」についてです。
 1 「勝敗を競う目的で行われる身体運動の総称」という意味で、陸上競技、水上競技、球技などの分野があります。
 2 「楽しむ目的で行われる身体運動の総称」という意味で、勝敗にこだわらずに、楽しんだり、コミュニケーションをとるために行うレクリエーションのことをいいます。
 上記の「スポーツ」に共通するのは、それぞれのルールに従い、得点や勝敗を決める身体活動などで、「勝敗を決める身体活動」ということです。
 それぞれの運動の意味について、もう一度確認しましょう。
 「体育」は、学校の先生が「身体を使って教育」する運動です。つまり、第三者的受動的な運動です。
 「スポーツ」は、部活の顧問やスポーツの指導者が「勝敗を決める」ために行う身体運動です。つまり、第三者的受動的な運動です。
 「運動」は、自ら行う「身体運動」です。つまり、自主的な能動的運動です。
 第三者からの運動のアプローチと自主的な運動からのアプローチでは、脳の記憶方法に大きな違いがあります。
 第三者からの運動では、前コラム掲載「短期記憶の運動」のとおり、脳の短期記憶に一時保存された「運動」を表出するためには、「運動」を長期記憶に移す時間、つまり長期増強するために何日も何度もその運動を繰り返さなければなりません。
 また、第三者からの運動では、脳の可塑性はほとんど望めません。
 
 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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