その子の内側の体験の世界20
一語文では、まず実体の呼び名からはじまり、やがて非実体的なものごと(運動、状態など)にも呼び名があることに気づいてその認識表現を覚えていきます。「アンヨ」「ナイナイ」「オーキイ」など、動詞や形容詞です。これがこなせるようになれば、次の「二語文の段階」に移行していきます。
代名詞についてはまだ使いこなしが遅くなります。相手は自分のことを「キミ」と呼ぶのに自分からはそれが「ボク」になるのは不思議で、それが理解できるには相手の側に立ってものを見るピアジェの説く「脱中心化」が進んでからになります。同じ対象が視点の置き方で「ボク」にも「キミ」にも「カレ」になるというややこしい相対的な呼称だからです。同じく「右/左」「上/下」など相対的な位置関係のあらわす言葉も習得に手間がかかります。同じ位置が視点によって「右」にも「左」にもなるからなのです。
あるものを別のものに見立てて遊ぶ「象徴遊び」が、言語発達に合わせてはじまるのは偶然ではありません。象徴遊びも、言語と同様「異なるものをなんらかの共通性によって同じものととらえる」というこころのはたらきのあらわれだからなのです。積み木と電車は違うものですが、でも、直方体という形や押して動かすその動きを共通のものとみれば、積み木を「電車」と見立てることもできます。お皿にのっているという共通性でとらえれば、ままごとの「ケーキ」と見立てることもできます。
「ごっこ遊び」も同じです。自分はテレビのウルトラマンではありあせんが、でも、今こうして闘っているしぐさや決めポーズの共通性によって「ウルトラマン」になりきって遊ぶことができます。
次回に続きます。