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ストレスが身体や脳に与える影響

吉田洋一

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テーマ:運動による心身の発達

 ストレスの応答反応が非常に強かったり、長い間応答が続いていると、身体にさまざまな悪影響が出てきます。
 子どものストレスサインは、寝つけない、途中で目が覚める、食欲がない、甘いものを食べ過ぎる、吐き気が起きる、頭やおなかの痛みを訴える、めまいやだるそう、爪かみをする、口数か減る、イライラする、怒りっぽい、当たり散らす、落ち着きがない、焦った感じ、忘れっぽい、すぐに泣く、感情の起伏が激しい、ぼんやりしているなどが見受けられます。
 一般的な症状は、血圧の上昇が続くため、高血圧の原因になります。また、全身の筋が緊張するため筋組織の損傷をまねき、成長抑制、免疫機能の低下なども引き起こします。うつ病や摂食障害、自律神経障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など多様な心理的障害の引き金にもなります。
 ストレスがかかるとHPT axis(視床下部-下垂体-副腎軸)によって、副腎からアドレナリンやノルアドレナリン、副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)などが分泌されます。これらのホルモンが、心拍数上昇、血圧上昇などのストレス応答を引き起こしますが、最も有害なのは、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの指令系統により分泌されるステロイドホルモンの一つ、グルココルチコイド(糖質ステロイド)です。
 このホルモンは、ストレス応答により、脳に作用して、たんぱく質分解を促進するなどで、エネルギー確保に働くと考えられていますが、ストレスが続くと、体内に血糖を蓄積する状態になり、糖尿病の原因になります。
 また、ストレスは脳を損傷させます。特に、海馬での影響が大きいのです。ラットでの研究で、ラットに短期間の強い負荷をかけ、学習能力の変化を調べた結果、ストレスによって長期増殖(LTP)が阻害され、学習能力が低下することを明らかにしています。
 長期間続くストレスの場合、その影響はさらに大きく、海馬CA1領域の神経細胞(ニューロン)が破壊されます。また、CA3領域の樹状突起が委縮するなどの研究報告があります。
 脳の成長期である子どもたちにとって、ストレスは深刻な問題です。
 ストレスの中でも深刻なものが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)です。大事故、大災害、戦争、傷害事件などを体験したり目撃をしたのち、その出来事が再び起こるように感じて、激しい恐怖や不安などの心的苦痛が発生し、通常の社会生活ができなくなる状態になります。
 心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、海馬容積の減少、偏桃体の過活動、前頭連合野の活動低下などがみられます。
 このように、ストレスが脳まで浸食しているのです。
 子どもたちの心身の発達には、「楽しい、心地よい運動」をと申し上げてきました。知識脳であれ、身体運動脳であれ、「楽しい、心地よい運動」が必要なのです。
 前のコラムで紹介しましたが、運動といいながら、運動にカモフラージュを置きながら、勝利や型を強いるスポ少などの競技スポーツが蔓延しています。
 子どもたちには、ストレスの何物でもありません。
 勝つって何でしょうか?学校教育に勝利は必要でしょうか?型ってなんでしょうか?行動の制限でしょうか?知識伝達でしょうか?
 今、競技スポーツを利用しながら、つまり、子どもたちの優越性の追求をくすぐりながら、それを「楽しい、心地よい運動」に方向付けできる指導者が求められています。
 次回に続きます。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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