「生きる力」にみる子どもの発達の考察
過日、岩手大学教育学部附属中学校の第1学年「総合的な学習の時間」の訪問学習(ヒューマンセミナー)が終了しました。
子どもたちの質問の内容と回答を掲載します。
子どもの心身の発達に悩んでいる保護者の皆さまや訪問していただいている皆さまにも参考になれば幸いです。
Q1 なぜ、岩手県で活動していますか。そして、なぜそのような活動に取り組んでいらっしゃいますか。(岩手県で活動している理由と、その活動のきっかけや動機を知りたいと思いました。)
A1 発達障害や不登校、親による虐待、心身症、うつ状態などが、自然で当たり前な子どもの発達の阻害要因となっていることから、子どもの心身の発達を社会的に支援するために取り組んでいます。
私や皆さんの故郷の良さや皆さんが故郷に住み続けられる力を養ってほしいからです。また、その力を社会に貢献してほしいと思います。
子どもたちに、同じように教え込むのではなく、子どもたちのそれぞれ特性(個性)を理解、尊重し、子どもたちの身体と心に問いかけ、コーチングしてきました。その中で、学校を休みがちな女の子に出会いました。その子は、私の活動には毎回休まず、笑顔で楽しそうに全身でボールを追っていました。その子が自ら進んでやることやそれをそばから支えることが指導者の役目でした。その子は自己決定できたのです。その子は、私と接して「認識の発達」と「関係の発達」を助長したと思っています。
Q2 現代の教育についてどのように思っていますか。(私たちの学校では、ICTを使った授業を行っていますが、そのような教育について、どのように思われますか。)
A2 今までの教育は、「知識伝達」型教育に偏重していたと思います。知識は伝達しても、子ども自身がその知識を自分なりに使うものではなかったと思います。
これからの教育は、子どもたちが社会や人生をより豊かにしていくためにはどうすべきかを自ら主体的に考えだすことができる学習が必要だと思います。つまり、「身体性を伴う自己理解」の学習です。
ICT(情報通信技術)を使った授業は、これからの社会「Society5.0(創造社会)」に沿ったものです。皆さんがこれを駆使して勉強することが、多様な想像と創造力を養い、社会の課題を解決し、価値を創造することにつながります。ただし、事前にネットリテラシーを十分に学習することと、C(コミュニケーション)は、最初に直接的・対話的な学びから始めることがたいせつです。
Q3 心地よい運動とは、具体的にどのような運動ですか。(人によって心地よい運動というのは個人差があると思いますが、その中で子ども全員が心地よい運動というのはどのような運動なのか具体的に知りたいからです。)
A3 子どもたちが自発的に行う身体運動です。
個人差があって当たり前です。個人差があるから人間なのです。たいせつなのは個人差を埋めることではなく、個人差からの「自分の伸びしろ値を高めること」にあります。このような運動を通して「自分の身体っていいな」「私って素晴らしい」と自己肯定感を高めてほしいのです。自分の身体運動から、自ら「わかる」「できる」を体験し、物事に率先して取り組む姿勢を養ってほしいのです。
なぜ、身体運動なのかですが、それは脳との関係です。人類の脳の回路には、食物と身体の活動と学習とのつながりが組み込まれています。また、脳科学の研究から、楽しい、心地よい運動が脳を発達させることが実証されました。もう一つ身体運動のたいせつなことは、子どものストレス解消のためです。ストレスとは、「スクリーン漬けの生活」「朝起きられない・夜眠られない」「低体温傾向」「通学意欲がない」「疲れた」「だるい」「キレる」などです。このような状況下で、学校生活は過ごせるのでしょうか。
現在、子どもたちには「心身を伴った心地よい運動」が欠如していると思います。
Q4 人と接する時に大切なこととはどのようなこととお考えですか。(世の中には様々な方がいらっしゃると思います。中でも、障がいをもった方に自分達は何ができるのか、お話を聞きたいと思いました。)
A4 まず、相手の人を受容(受け入れる。認める。)することです。その方と意見や考えが違うから排除するのではなく、そういう意見や考え方があるということを認識することです。通信だけに頼らないで、直接的な対話力を養いましょう。
障がい者だからといって特別なことをすることはありません。困っている方がいればお手伝いをしてくださるその気持ちがたいせつです。ノーマル(普通)にお付き合いをしていただくことができることです。また、そのような力を養うことがたいせつです。
次回に続きます。