培ってきた脳の発達2
前回、子どもに有用な道を経験させることが、優越性の追求であることを説明しました。この優越性の追求は、人間の本性であり、子どもたちの劣等感、弱さ、自信のなさなどから自分自身を解放することやより高いレベルに到達することそして平等感を得ることです。
但し、この優越性の追求を間違ってはいけない。前回の「Jr-Open」というテニスの競技スポーツであれば、勝たなければならないとか全勝しなければならないとか顧問やコーチの言う通りにしなければならないとか他の子どもよりも秀でたい、いつも一番になろうと緊張状態をつくり出しています。勝たなければならい、大人の教えたとおりにしなければならない。大人の言うことを聞かなければならない、型の動作をしなければならない。この行動を脳からみると全てが「ストレス反応」です。ストレスが身体や脳に与える悪影響は多大です。ここでは詳細は省きますが、「勝つ」とか「教えたとおり」って何でしょうか?脳に良いものでしょうか?
人生のつながりの有用な道は優越性の追求であることを前述や前回説明しました。では、優越性の追求を有用なものにするためにはどうしたらいいのでしょうか。アルフレッド・アドラーは、著書「子どもの教育」星雲社において次のように述べています。
優越性の追求を有用なものとそうでないものに区別する根拠は何か。共同体感覚というのが答えである。(p51)
これらの根本的な課題の相互連関は、社会生活を営む時に、これら三つの課題(対人関係・個人がどのようにして自分の生命を使おうとするのか、言い換えれば、労働の全般な分業においてどの役割を引き受けたいか・人類が二つの性に分けられているという事実)が社会的な、あるいは共同体の場においてのみ、言い換えれば、共同体感覚に基づいてのみ解決できるので非常に強いものになる。(p20)
多くの子どもと大人に、他の人と結びつき、仕事を家の人と協力して成し遂げ、社会的観点から自分を一般的に有用なものにしようとする傾向がみられる。このような表れは、共同体感覚という概念でもっともよく表現することができる。(p92)
個人的な優越性の追求と共同体感覚は、人間の本性の中の同じ根拠に基づいているのである。いずれも認められたいという本源的な要求の表現するものである。(p92)
「共同体感覚」とは、家庭、地域、職場などの共同体の中で人とつながっているという感覚のことです。 そして、人はこの感覚を感じられる時に、幸福を感じるとされています。この共同体感覚は、分解すると自己受容、他者信頼、他者貢献、帰属感の4つで構成されます。
当然ながら、脳では「シナプスの可塑性」が起きています。
「共同体感覚」は身近な他者から始まりますが、やがて個人が帰属(所属)する集団から、境界を超え自分とは一見関係のない他者・他集団へと広がっていきます。
この「共同体感覚」が「Jr-Open」なのです。前に説明しましたが、独りでは困難であっても、仲間と一緒なら向き合って解決できるのです。勇気を出して向き合う姿勢は、共感を呼び起こし、他者とのつながりを構築します。次回に続きます。