神経発達症(発達障害)のケア2
前回、神経発達症(発達障害)のケアには「活発に、身体を動かすこと」が必要であることを説明しました。「活発に」とは、自ら、自主的に、自分の意思で、自己決定でなど他の人が指示、命令、指導など関与しない、「心地よい身体の運動」が必要ですと解説しました。
保護者の皆さまで、わが子の神経発達症(発達障害)の原因や要因を追及してもケアにはなりません。わが子のケアを考えてみましょう。
私は、「楽しい、心地よい身体運動」という環境の中に、子どもが自分なりに「わかること」と「できること」を生み出す心の働きそのものの発達を明らかにしようとしてきました。(「子どもの発達の意欲値及び自分の伸びしろ値理論」)「わかる」と「できる」という働きは、子ども自らの気づき、発見です。
私は、子どもと対象との相互作用のなかで何らかの新しいものの産出があり、そうした創造のプロセスが子どもの心身の発達の本質であると考えています。そして、子どもが自らわかったことや自らできることに基づいて反応することが発達です。
では、「楽しい、心地よい身体運動」という環境とは何でしょうか。それは、前頭に述べました、自ら、自主的に、自分の意思で、自己決定でなど他の人が指示、命令、指導など関与しない運動が行われる環境です。
私の取り組みについて説明します。取材記事にも紹介されていますが、テニス競技のJr-Openを開催しています。これが一つ目の環境です。1回きりではなく、シーズンを通して開催しています。これが「経験を増やす」ことつまり、脳の可塑性です。たくさん経験することで脳の神経細胞のネットワークが多様に形成されます。次に競技スポーツを「楽しい、心地よい運動」に変換することです。つまり、「勝ち負けに拘らない」こと。“「競技スポーツだから勝敗に拘るのが当たり前だ」「子どもだけでは負けるから」「子どもの負けるところを見たくない」”など勝利至上主義的な昨今でいえば、ブラック部活的な大人のエゴイズムです。勝つためには手段を択(えら)ばない方が身近にもおります。子どもを自分の都合の手段に利用しているようです。
Jr-Openは「勝ち負けに拘らない」つまり、結果を重視しているのではなく、自分でどうしたのかという経過を大切にします。これを有言実行させます。ベンチコーチはありません。また、フェンス越しの身振り手振りも禁止です。声援ではなく拍手により応援することなど大人の介入なしに、「自分の力でどのくらいできるか」を実践できることになります。これが二つ目の環境です。
次に、第三者の力を借りずに「自分の力でどのくらいできるか」を実践しますと、子どもたちが自己決定と自己責任でプレーしながら自分の価値を認め、「自分っていいな」と自己肯定感をもってプレーをするようになります。子ども自ら「わかる」「できる」を感じて、物事に率先して取り組む姿勢こそが大切なのです。これが三つ目の環境です。
ここで間違った解釈をしている学校の先生や指導者、保護者など大人の方がおります。「自分の力でどのくらいできるか」を結果だけで判断していることつまり、点数がいいとか勝ったとかで判断している大人です。これは間違いです。
この第二環境の「勝ち負けに拘らない」ことと第三の環境「自分の力でどのくらいできるか」は、脳のシナプスの可塑性を促進させます。
私たち大人が介入すべきことは、子どもを信じて「楽しい、心地よい身体運動」を探し出し、実践することなのです。
今後Jr-Openのように、競技スポーツを「楽しい、心地よい運動」に変換して、活動を行う方がたくさん増えることを期待しています。次回に続きます。