診断には意味がある
脳の生物学的な基盤と環境からの物質的な条件の交流は、人間が「生物的・物質的な存在」であるということです。そして、それだけではなくて、関係への能動的な志向性とすでに精神発達を遂げている人々の関与の交流があります。ここが人間が「社会的・共存的な存在」であることを示しています。つまり、私たちはただ生物的な個体として生きるのではなく、社会的・文化的に世界を共有して生きるという特異なあり方をしています。
次に、脳の生物学的な基盤と関係への能動的な志向性の関係をみますと、発達における個体の内側、子ども側の要因をあらわすものです。脳の生物学的な基盤がどれだけしっかりしているか、人とのかかわりへの志向性、接近力をそれだけ強くもっているかという「子どもの側の発達要因」といえます。
これに対して、環境からの物質的な条件とすでに精神発達を遂げている人々の関与の関係は、発達における個体の外側、環境側の要因をあらわすものです。環境がどれだけその子の脳の成熟に必要な物質的な条件を与えているか、まわりの人たちが子どもへどれだけ社会的にかかわりを与えているかという「環境の側の発達要因」といえます。
このように諸条件の総合力が精神発達を推し進めています。裏返すと、これらのどこに不足が起きても発達のおくれが生じる可能性があります。
このように、発達を支える4つの条件のうち、どれでもその子にとって少しでも改善できるものを改善させる努力がたいせつなのです。最初の関りは保護者でになりますが、保育園や学校であれば先生方にもご理解いただく必要があります。
※参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著