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学校での精神発達③

吉田洋一

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テーマ:子どもたちへのエール

 前回②と前々回①において、学校での学習が変わることを述べました。国の学習指導要領が人間の精神発達に例えると「認識」ではなく「関係」を最重視する方向へと大転換しました。また、「子どものための精神医学」滝川一廣著を参考文献に、人間の精神発達は「認識」の発達と「関係」の発達の相互関係であることをある程度解りやすく説明しました。もう一つ大事なことは、発達障害も一つの立派な発達の「完成体」で、遅れを組み込んで完成しているため、完成体のあり方は定型発達のそれとは「ちがい」をもつことを説明しました。
 今回は、前々回①と前回②を踏まえて、社会情緒的コンピテンスつまり非認知的能力を評価する学校やその教員の資質について述べます。今までは学力テストなど第三者との「知識」の優劣で評価してきました。これは、「見える学力」ですからとても評価が簡単です。これからの評価では、見える学力もありますが、思考力や判断力、表現力など「見えにくい学力」と学びに向かう力や人間力など「見えない学力」が評価の対象になります。この評価をどのようにするかです。
 国では、学校では一人一人の評価を大切にする教育をとは言っていますが、例えば、学校での自制心の評価で、「他の子が話をしているときにその子のじゃまをした」や「授業で必要なものを忘れた」と評価された発達障害の子どもがいた場合はどうでしょうか?じゃまをしたくてしたわけではありませんね。また、忘れたくて忘れたわけでもありませんね。その子の定型の発達ではないその子なりの発達を理解しないで、それを評価する学校の方策や教員の資質が問われます。定型との評価ではない、第三者との評価ではない、それぞれ個々のそして発達障害の子を理解している評価が求められます。学校で非認知的能力を評価する場合は、発達障害の子どもで「関係」の発達にちがいをもつことを前提とした評価でなければならないと思います。2回目のコメントで説明しましたが、2022年3月に文科省の検討会議は、障害のある子どもへの教育を充実させる必要があるとして、すべての教員が採用後10年程度の間に特別支援学級の担任などを2年以上経験することが望ましいとのする報告書の案を示しましたことも、学校が発達障害の見識を深める方策の一つであると思います。
 学校の他に必要なのは教員の資質です。教員の中で「コミュニケーション力」「協調性」など さまざまな経験や体験を通して身につけることができる能力が欠如している方や身につけてこなかった方が見受けられます。このような方が非認知的能力を評価できるのかどうか疑問です。他の生徒と比べていた知識偏重評価ではない、それぞれ生徒個人の「社会情緒的コンピテンス」評価ができるでしょうか?今までやったことがないではすまされません。また、発達障害について理解できていない方も見受けられます。まず、現場の教員は自主的に発達障害の理解や非認知的能力のスキルを磨いてほしいと思います。学校や教員は「非認知的能力」が子どもの精神発達の「関係の発達」というとても繊細な事象や表象を担うことになります。

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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