「子どもの権利」について、児童・生徒と教員の意識に差がありました
前回、学校の学習が、人間の精神発達でいうと「関係」を重要視する方向へと大転換と述べました。
なぜ、国の学習指導要領が変わったのでしょうか?それは、これまでは学校でも企業でも偏差値やIQ、学力テストなどの数値ばかりが重要視されていましたが、その若者が社会や企業において、人としての忍耐力が足りなかったり、周りの人と上手く折り合いをつけられなかったり、コミュニケーションが上手くできないなど、世の中に出て柔軟に対応し、挫けることなく、巧みに対応することができなくなってしまいました。これは、詰め込み教育の弊害で、いわゆる指示待ち症候群や燃え尽き症候群などといったことが問題視され、また社会や企業においても日本の国際競争力が低下し始めました。
このような知識や論理思考だけでは、社会の発展や個人のwell-being(幸福度)につながらないことが明らかにされました。
そこで登場したのが、社会経済や個人の人生にも好影響を与える「やり抜く力」「他者との協働する力」「自己理解」「自己管理」など学歴や学校の成績では測ることのできない力、つまり非認知的能力の学習を学校の教育に委ねました。
「国の新しい学習指導要領等のあり方について」を抜粋しますと、各学校が今後、教育課程を通じて子どもたちにどのような力を育むのかという教育目標を明確にし、それを広く社会と共有・連携していけるようにするためには、教育課程の基準となる学習指導要領等が、「社会に開かれた教育課程」を実現するという理念のもと、学習指導要領等に基づく指導を通じて子どもたちが何を身に付けるかを明確に示していく必要があるとしています。
非認知的能力は社会情緒的能力とも呼ばれています。特に子どもたちの生活や発達に重要であることが、国立教育政策研究所の研究により示されています。同研究所によれば、子どもたちが日常生活の中で発揮、使用される社会情緒的能力は、「社会情緒的コンピテンス」といい、その能力を3つの領域に区分しています。1つ目は自己認識、自分の感情、自己制御などの「自分に関する領域」です。2つ目は他者の感情や思考の理解などの「他者に関する領域」です。3つ目は人間関係、コミュニケーションなどの「自分と他者や集団との関係に関する領域」です。
前述の社会情緒的コンピテンスもいかがでしょうか。気がついたことがありませんか。2と3は当然ながら第三者との関係ですね。1においても第三者という相手があっての自己認識や自分の感情、自己制御ですね。人間の精神発達に例えると「認識」ではなく「関係」を最重視していることになります。
ここで疑問が生じます。今まで学校で教えてこなかった又は重視してこなかった「関係」という「非認知的能力」すなわち「社会情緒的コンピテンス」をどう子どもたちに教えるのでしょうか?