簡単に情緒障害と言わないで
就学相談は学校であり教育です。先ほど一番誤解している方が教育関係者だと言いました。つまり、学校の先生方です。教育の場で言われる「情緒障害」は、教育上の概念・分類であり、医学用語の「情緒障害」の定義とは必ずしも一致しません。また、教育の場においてもまだ定義や概念が十分に定まってはいないのが現状です。現在、この分かりにくさを生じさせているのは、情緒障害という障害の概念が時代によって変遷していることに他なりません。過去に、公立学校に現在の特別支援学級の前身である情緒障害特殊学級が成立した1969年当時、自閉症などの先天性由来の障害も含めおおまかに「情緒障害」と定義しました。のちに、先天的な障害である自閉症は「情緒障害」から除外されたため、「情緒障害」は「後天的な心理的問題により社会に適合していない子どもたちを分類するための概念」と修正させました。「情緒障害」の内向性の問題行動の具体例として、選択制緘黙や集団行動・社会的行動をしない、引きこもり、不登校、指しゃぶり、爪かみなどの癖、常同行動などがあります。内向性の問題行動は、周囲が介入しない限り迷惑や支障を生じさせないものです。次に、「情緒障害」の外向性の問題行動の具体例として、離席、教室からの抜け出し、集団逸脱行動、犯行、暴言、暴力、反社会的行動、非行、性的逸脱行動、自傷行動などをあげています。外向性の問題行動は、周囲からの介入がなければその行動自体が周囲の人に迷惑や支障を生じる場合のことを示します。
もう一つ、学校の現場の先生方が誤解している要因として、発達障害の子どもたちの存在についてです。発達障害については後で詳しく解説したいと思いますが、発達障害は先天的な問題から生じる脳の機能障害によるものであり、心理的な要因として生じる後天的な問題の情緒障害とは相違するものです。現在、学校の担任の先生方等が理解不足により、トラブルを起こしているニュースがあります。学校の先生が教育の定義である情緒障害と誤解して「自分がこの子どもをなおしてやる」など解するのはもってのほかです。日々子どもたちと関わっている大人の皆さまには、子どもの発達の見立てつまりその子の個性や持ち味などに思いを馳せることが重要であると思います。
これを踏まえてだと思いますが、2022年3月に文科省の検討会議は、障害のある子どもへの教育を充実させる必要があるとして、すべての教員が採用後10年程度の間に特別支援学級の担任などを2年以上経験することが望ましいとのする報告書の案を示しました。