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育てる側のむずかしさ③

吉田洋一

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テーマ:子育てをめぐる問題

 <親が育てるわけ>
 強い「つながり」の意識
 子育ては、時代や社会を超えて、その子を産んだ親がするのが最も一般的な文化となっています。そこにはどんなわけがあるのでしょうか。
 哺乳動物はみな親が仔を育てます。人間も哺乳類に属することが生物的な理由かもしれません。しかし、それ以上に人間が高度に社会的・共同的な存在であることに大きな理由があります。子どもは生物的に成長するだけではなく、社会的に成長する必要があります。複雑な社会生活が可能なだけの認識の力や関係の力を身につけるには、その力を備えた大人との密接な交流の積み重ねが必要となります。そのため養育には他の哺乳類とは比較にならない手間ひまと長い期間を要します。これが人間の子育てのもつ固有の特徴で、子育てが必ずしも容易くない普遍的な理由といえます。
 その長期の手間ひまに取り組み続けられるためには、子どもへの強い「関係の意識」(つながりの意識)が必要となります。一般にはそのような関係の意識をもっとも自然に抱ける者は、わが身を分ってその子を産んだ親です。そしてこの関係の意識が、生物的な「生み手」としての親を、社会的な「育て手」としての親へと導くのです。この関係の意識は、情緒的には「情愛」というこころの動きとなってあらわれます。
 この「関係の意識」を生み出す力は3つあります。
 直接には、1身体的・肉感的なつながり感です。身を分かったもの、血を分けたものという自然の感覚で、フロイトが「性愛」と呼び、ボウルビィが「アタッチメント」と呼んだものがその生物学的な基盤となっています。
 それに加えて意味の世界を生きている私たちにとって、2「親子」という社会的な意味づけが、関係の意識をもたらします。私たちの社会には、その意識を支える有形無形のシステムが備わっています。社会(共同体)が維持されるには、その社会の次の担い手へと子どもが育つことが不可欠だからです。そして、3子ども側からの親への「なつき」が、深い関係の意識、親子のつながりを育みます。

参考文献 子どものための精神医学 滝川一廣著

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吉田洋一
専門家

吉田洋一(心身発達の心理士)

一般社団法人JSTC

子どもがテニスを通じて、身体の動かし方や潜在的な能力を引き出し、運動の基礎づくりをサポート。さらに子どもが主体的に取り組む大会を企画開催し、その中で対話的な深い学びを習得し、自律性を高める指導を行う。

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