遺産分割協議書 ひな形 ~教えて!相続のキホン⑨ @岩手 盛岡~
相続財産を分けるときこそ、仲の良かった家族・兄弟が一生しこりの残る争いを始めるものです。
そもそも財産は誰が作った誰のものでしょう?
亡くなった方(被相続人)ですよね。
日本は私有財産制が認められている国です。だから、個人が築き上げた財産を亡くなった途端に没収ということはありません。
ではどうしたら争わずに済むでしょう…。
○遺言書があれば良いのに…
まず、遺言があればほとんどの争いを未然に防ぐことができます。財産を作った本人がその処分を決めるわけですから、遺言は原則として法定相続に優先します。
<判例> 最大決平7・7.・5
「民法900条の法定相続分の定めは、(中略)法定相続分のとおりに相続が行わなければならない旨を定めたものではない。すなわち、被相続人は、法定相続分の定めにもかかわらず、遺言で共同相続人の相続分を定めることができる。」
しかしながら、日本には遺言という習慣がまだまだ浸透していません。イギリスなどでは、遺言を残さず死ぬのは紳士の恥だと思われています。日本語にしたとき、「遺書」と言葉が似ているので不吉なイメージを持つのでしょうね。
被相続人が最期の意思表示を残さずに亡くなった時、残された親族にとって遺産の配分などを決める基準がないと、不都合な事態が生じますので、社会通念上妥当と思われるルールを民法で定めています。
「書類では残っていないけど、どんな分け方をしたら故人の望みにかなうだろう…?」
と考えると、
「全員が納得する内容で仲良く分けることを故人も望んでいるだろう!」
これが遺産分割協議です。なので全員一致でなくてはなりません。多数決ではないのですね。
誤解している方が多いのですが、遺産分割協議の内容も法定相続分に縛られません。
遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して(民法906条より)話し合い、みんなが納得していれば誰か一人が多く継承しても構いません。
○話し合いの糸口としての法定相続分
でも、話し合いでもどうしてもまとまらない事があります。そんな時は裁判所に相談することになるのですが、そこで登場するのが法定相続分なのです。
つまり、争いになるまで出番の必要がないのです。
とはいえ、話し合いの糸口として活用するのは一般的に行われます。法定相続分を基準に話を始めるけど、各人の事情や貢献度を差し引きする、という具合に。
さて、どのような事情や貢献が認められるかなど興味のある方もいるかと思いますが、そちらは別の機会に説明しますのでここからは相続割合について見てみましょう。
相続人と相続順位については前のコラムを参考にして下さい。
相続人が配偶者のみ・・・・・・配偶者100%
相続人が配偶者と子・・・・・・配偶者2分の1、子(全員で)2分の1
相続人が配偶者と父母・・・・・配偶者3分の2、父母(全員で)3分の1
相続人が配偶者と兄弟姉妹・・・配偶者4分の3、兄弟姉妹(全員で)4分の1
子ども、直系尊属、兄弟姉妹が複数の場合は均等に分けます。たとえば、被相続人に配偶者と3人の子どもがいる場合は、配偶者が2分の1、子どもは2分の1を均等に3人で分けるため、それぞれ6分の1ずつの相続分になります。
○民法の改正に注意!
昭和55年の民法改正(昭和56年1月1日施行)により、法定相続分に関する規定が変更になっています。改正前にくらべて、配偶者の受け取る法定相続分が増えました。
どちらの法律が適用になるのかは、被相続人が亡くなった時期により異なります。改正後に被相続人が亡くなった場合には、改正前の場合よりも配偶者の相続分が多くなります。
改正前(昭和22年5月3日~昭和55年12月31日)と改正後(昭和56年1月1日~現在)の、相続分の違いをまとめてみました。
・相続人が配偶者と子
改正前・・・配偶者1/3、子(全員で)2/3
改正後・・・配偶者1/2、子(全員で)1/2
相続人が配偶者と父母
改正前・・・配偶者1/2、父母(全員で)1/2
改正後・・・配偶者2/3、父母(全員で)1/3
相続人が配偶者と兄弟姉妹
改正前・・・配偶者2/3、兄弟姉妹(全員で)1/3
改正後・・・配偶者3/4、兄弟姉妹(全員で)1/4
(※重要※)55年改正では、代襲相続に関しても変更があり、兄弟姉妹の子については代襲相続が1代限りとなりました。
相続人が多い場合や代襲相続が発生すると、相続人を調べて関係図を作る、相続分の計算をするというだけでも混乱してしまいますね。また、先にも触れましたが、協議は全員一致です。相続分がたとえ20分の1であっても納得してもらえなければ話がまとまりません。スムーズに、皆が納得して分けられるよう、お力になれるときはご相談ください。
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