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上總隼

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上總隼(かずさたかし) / 行政書士

ハヤブサ法務事務所

コラム

ボランティアでの責任って ~ アウトドアを楽しむために @岩手 ~

2015年8月14日 公開 / 2015年11月12日更新

テーマ:契約

コラムカテゴリ:法律関連

私は、プライベートで野外活動等のボランティアをしています。BRG・ボーイスカウト・100キロ、いくつか掛け持ちなので、週末はその活動で出かけることも…。
キャンプ・ハイキング・登山・レクリエーション・野外炊事・カヌー等々、野外の体験活動が中心になります。

先日その一つで会議があり、こんな話になりました。
「よく海外でバンジージャンプなんかするときに、『万一の事故でも主催者側に一切責任はありません』って誓約書を書かされるシーンがあるよね。」

皆さんもそんなシーンをご覧になったことがあると思います。
これは万一の事故が起こった場合、損害賠償責任を負うべき者に対し責任を追及する権利をあらかじめ放棄することを約した書面です。法律職ではこれを「免責同意書」と呼びます。
しかし、このような書面は、公序良俗違反(民法90条)の契約として、法的効力は認められません。本人の承諾・署名を得ていても無効です。参加者が「事故が起きる可能性も承知していた」という論法も認められないのです。
というのも、既に判例が出ているのです(なので海外での有効性については国によって確認の必要があります)。

○判例


①「大阪地裁判決、平成12年12月14日」(越前沖沈船ダイビング事故)
業者が書かせた免責同意書は「公序良俗に反し、無効である」とされた。さらに業者の注意義務について、「参加者との間の契約上の債務であると同時に、一定の危険を伴うダイビングツアーを営業として行い、これにより利益を得ている者として負うべき不法行為上の注意義務でもある」とされた。
本件申込書(免責同意書)に右のような記載があるからと 言って被告主張のような免責の合意が成立したとは認める事は出来ない
身体及び生命に侵害が生じた場合にまで被告の責任を免除する事を内容とする合意は、公序良俗に反し無効である

②「東京地裁判決、平成13年6月20日」
東京地裁はダイビング講習中におぼれて脳に障害を負った事故について、ダイビングインストラクターとスクールの法的責任を認定し、約1億6000万円の支払を命じた。

○ボランティア活動中の責任


さて、ボランティア活動というのは、活動のための実費を集める程度はあっても、主催者やスタッフは無償で奉仕をしているわけです。経済的な利益が無いばかりか、一方で、事故発生のときに責任だけ負わされるとなると、社会や地域に貢献したい気持ちがあっても安心して活動ができないという思いもあるかもしれません。
では、ボランティア活動の主催者・スタッフはどの程度の注意義務を果たすべきなのでしょうか。これについて、介護ボランティアにおける判例があります。

(平成10年7月28日 東京地裁判決)
「ボランティアであれ、障害者の歩行介護を引き受けた以上、右介護を行うに当たっては、善良な管理者としての注意義務を尽くさなければならず(民法644条)、ボランティアが無償の奉仕活動であるからといって、その故に直ちに責任が軽減されることはないというべきであるが、もとより、素人であるボランティアに対して医療専門家のような介護を期待することはできないこともいうまでもない。例えていうならば、歩行介護を行うボランティアには、障害者の身を案ずる身内の人間が行う程度の誠実さをもって通常人であれば尽くすべき注意義務を尽くすことが要求されているというべきである。」

これを見ると、専門家のような高度の注意義務はないが、一般人として(家族に)
つくす程度の注意義務は課せられている、と理解できます。
ここで前述の「越前沖沈船ダイビング事故」の判例を見てください。こちらの「利益を得ている者として負うべき不法行為上の注意義務」というのは専門家として果たすべき高度な注意義務が求められていると解釈できます。

もちろん、ボランティア活動といっても、判断能力のない子ども達が対象のキャンプもあれば、社会人山岳会のように、判断能力や技術もある人達が、より高度な登山技術を収得するための団体もあります。ですから、その対象となる人達の判断能力や身体的能力の程度によって、指導者や引率者の注意義務も異なってきます。
また、ボランティア活動中の事故には、被害者側にも過失があることが多く、この場合は、過失相殺といって、被害者側の過失分を差し引いて賠償額が決定されることになります

○大事なことは、保険・説明・信頼関係


さて、私が関わる野外活動では現在のところ免責同意書をもらうという事はありません。
活動に合わせて保険をかけ、その範囲内での保障になることを説明してご理解頂いて活動しています。必要であれば保険適用の範囲等も説明しています。活動の規模が大きくなれば医師や看護師の確保も必要な場合があります。
スタッフを教育する場合は、救急法等の技術だけでなく、必要であれば医療行為に関する法的な知識を教える事もあります。
また、子どもを対象とした活動の場合、保護者とスタッフの信頼関係も重要です。日ごろから些細な連絡もこまめにとり、説明会やほんの挨拶にも活動の趣旨や伴うリスクについて触れておくことが大事です。

春・夏・秋・冬、季節に応じてたくさんの体験活動が企画されると思います。リスクのない冒険というのはありません。できる限りのことはしっかりと備えて良い活動にしたいものです。



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