不妊治療は産婦人科だけとは限らない|男性不妊「勃起障害(ED)」に対する治療と漢方ケア
不妊の原因は様々あり、漢方薬を用いる場合は、症状や体質、月経周期に合わせた処方に加え、妊娠継続するための栄養が必要となります。そこで、不妊の原因とメカニズムを踏まえたうえで、西洋医学とは異なる視点から不妊症に悩む方におすすめの漢方や栄養処方についてお伝えします。
目次
1.不妊の定義
・結婚年齢の上昇に伴う妊娠力低下のリスク
2.不妊症の西洋学的原因
2-1排卵因子
2-2卵管因子
2-3頸管因子
2-4免疫因子
2-5子宮因子
2-6原因不明の不妊
3.不妊の漢方処方
3-1当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
3-2逍遥散(ショウヨウサン)・八味逍遥散(ハチミショウヨウサン)
3-3加味逍遥散(カミショウヨウサン)
3-4温経湯(ウンケイトウ)
3-5桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
3-6紅蔘(コウジン)
・[帰経]は肺経
・赤血球変形能により、末梢循環を改善
・低下したホルモン分泌を下支えし、排卵を自覚できるように
4.見落とされがちな肥満と痩せの体型
4-1肥満の場合
4-2低体重(痩せ、るい痩)の方
5.栄養補給をおすすめする理由
・妊孕性(にんようせい)の低下につながる免疫の老化は、栄養不足も関係
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「子宝相談」など、大きな目立つ文字の看板を掲げる漢方薬局を見かけたことはないでしょうか?
不妊症の悩みについては、西洋医学的なアプローチが一般的ですが、根本的な体作りから考える漢方医学的なアプローチや栄養学的なアプローチも存在します。
すでに西洋医学的なアプローチを始めておられる方は、西洋医学的なアプローチを継続しながら、授かりやすく妊娠継続しやすい体づくりをしていかれると良いです。
今回は、一般的な不妊の原因のご紹介と不妊症に悩む方におすすめの漢方処方や栄養についてお伝えします。
1.不妊の定義
日本産科婦人科学会では、不妊を次のように定義しています。
「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいいます。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義しています。
※日本産科婦人科学会のホームページより
後述するように、排卵がない、子宮内膜症、骨盤腹膜炎など妊娠しにくい原因が明らかな場合があります。
そのような場合は、1年を待たずに産婦人科の病院・クリニックで検査や治療に踏み切られると良いですが、それ以外にからだの環境つくりを漢方でされることをおすすめします。
結婚年齢の上昇に伴う妊娠力低下のリスク
不妊のカップルは10組に1人と言われていますが、実際にはもっと多いのではないかと言われています。
男女ともに結婚、出産を考える年齢が年々上昇しているためです。
男女ともに年齢が上昇すると、妊娠しにくくなることは広く知られており、治療を先送りすることで、妊娠力が上がらないリスクが増えてきます。
妊娠のピークはだいたい21~35歳くらいと言われており、その後49歳頃に閉経するまで妊娠力は低下するというのが一般的な見解です。
上記、日本産科婦人科学会が定義する「一定期間」は、2015年以前は「2年間」でしたが、結婚年齢の上昇という経緯もあり、現在は「1年間」に短縮されています。
最近では35歳以降に結婚する女性も非常に増えてきています。が、可能な限り35歳までに妊娠して欲しいと個人的には考えています。理由は、腎臓の働きが回復しにくくなるからです。
それでも、さまざまな理由で時期を選べませんから、可能なかぎり腎臓力の低下を防ぐ方法をご用意しています。
2.不妊症の西洋学的原因
不妊の原因は必ずしも女性側にあるわけではなく、男性側にある可能性もあります。
また、男性側にも女性側にも何も原因がない、はっきりしないこともあります。
一般的には、次のように考えられています。
・男性の生殖器系では、不妊症は精液の排出の問題[1]、精子の量の不足や減少、精子の形(形態)や動き(運動性)の異常などが最も一般的な原因となっています。
・女性の生殖器系では、特に卵巣、子宮、卵管、内分泌系のさまざまな異常が不妊症の原因となることがあります。
※世界保健機関(WHO)ホームページの内容を和訳
なお、男性不妊については、別記事でお伝えします。
ここではまず、西洋医学的に女性側の不妊の一般的な原因として挙げられる、排卵因子、卵管因子、頸管因子、免疫因子、子宮因子について簡単にお伝えします。
2-1排卵因子
規則的な月経がある女性の場合は、月経の約2週間前に排卵が起こり、排卵後に基礎体温の上昇があります。
極端な月経不順などでは排卵が起きず、妊娠困難となります。排卵が起きない原因には、次のようなものが考えられます。
・甲状腺など女性ホルモンを出す仕組みに影響を与える病気
・多嚢胞性卵巣症候群
・早発卵巣不全(早発閉経)
・高プロラクチン血症
・極度の肥満、体重減少
・極度の疲労、ストレス
日常のストレスや、過酷なダイエットも排卵障害の原因になるので注意が必要です。
排卵障害がある場合、基礎体温の上昇がない場合や、体温の変動が激しくグラフ化するとギザギザになる場合がありますが、この傾向によっても適切な漢方処方は変わります。
2-2卵管因子
卵管が炎症などで詰まっていると、妊娠困難となったり受精卵が子宮に下りて来れません。卵管が詰まる原因としては、以下の病気によるものがあります。
・卵管炎
・骨盤腹膜炎
・クラミジア感染症
・子宮内膜症
・虫垂炎など骨盤内の手術を受けて卵管周囲の癒着がある場合
・その他
2-3頸管因子
排卵期におりものの増加が認められます。しかし、次のように頸管粘液量が少なくなった場合、精子が子宮内を通りにくくなり、結果妊娠困難となります。
・子宮頸部の手術
・子宮頸部の炎症
2-4免疫因子
人間には、もともと細菌やウイルスから身を守るための免疫力が備わっていますが、この免疫力のために、精子を攻撃してしまう場合もあります。
これが抗精子抗体、精子不動化抗体ですが、これらの抗体を持つ女性は、精子を攻撃してしまい、妊娠力を引き下げてしまいます。
2-5子宮因子
以下のような場合、着床障害が起こり、妊娠が困難となります。
・子宮筋腫
・粘膜下筋腫
・子宮内膜ポリープ
・アッシャーマン症候群
・子宮の先天的な形態異常
2-6原因不明の不妊
不妊の原因は、主に上記の因子によるものですが、特定の原因のない不妊も増えています。
先にお伝えしたように、男女の加齢に伴い精子、もしくは卵子の機能が低下していることが考えられますが、それ以外にもあります。
3.不妊の漢方処方
不妊の原因は様々で、西洋医学的なアプローチをするにしても、漢方医学的なアプローチをするにしても、各々の原因や症状に合わせた対策が必要となります。
ここでは、現在漢方薬の服用をおすすめするような症状がある方に対してしばしばつかう漢方処方についてお伝えします。症状や体質には個人差がありますから、ご相談の上服用するようにしてください。
3-1当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
・色白・やせ型・なで肩・冷え症虚弱タイプ
・貧血、腹痛やめまいや全身倦怠感
・月経異常(生理不順、生理痛) 、帯下(おりもの、水っぽい)
・下半身の浮腫や冷え
・更年期障害に付随する諸症状(頭重・頭痛・めまい・肩こりなど)
・妊娠中の諸病(浮腫・習慣性流産・腹痛)
・頻尿・慢性腎炎
このような症状や悩みに対して、古くから処方されています。
成人女性に多く用いられていますが、漢方的に症状が合えば男性にも利用されることがあります。
服用して胃の不快感を訴えるようなときは、薬剤師に相談するようにしてください。
3-2逍遥散(ショウヨウサン)・八味逍遥散(ハチミショウヨウサン)
・ゆううつ感、イライラ感、疲れやすい
・寒くなったり、暑くなったり
・ストレスや、旅行先で便秘
・頭痛、片頭痛、めまい、口やのどの乾燥感
・月経異常(生理不順、生理痛)、生理前に乳房が張って痛む
・打撲などによる内出血の出やすい方
女性の多くが仕事を持ちストレス時代と言われる昨今、ストレスの多い環境におられる方に向きます。西洋医学的に卵管の通りが悪いと言われる方の中にもこの漢方の体調を訴える方があります。
妊娠しても服用を控えていただく必要がないので安心してお飲みいただけます。
3-3加味逍遥散(カミショウヨウサン)
・ストレス度の高い環境ある方や、ストレスを感じている方。
・顔面が紅潮したり、眼が充血することが多い方
・イライラや怒りっぽさがあり、うつ、神経症などの精神疾患
・皮膚疾患(肝胆系に沿って、かゆみの無い紅斑)
・便秘(肛門出口に切迫するようなタイプ)
・痛み、冷え、月経不順
・打撲などによる内出血の出やすい方
・頭痛・耳鳴り・耳閉感
・更年期障害に付随する諸症状(不定愁訴)
女性の更年期障害に多用されますが、ストレスが多くイライラが多いような方、PMSの出やすい方、気分の落ち込みが強い方、金属音の耳鳴りや、突発性難聴や片頭痛にも服用されます。
女性の場合、不快な症状が生理前に出やすい方に向きます。
妊娠したら服用を控えていただきます。配合成分による骨盤内臓器の充血や流産を防ぐためです。
【ポイント】
更年期障害など長期服用する場合に、成分中の甘草による副作用を心配する場合があります。偽アルドステロン症で、低カリウム血症による四肢の脱力や、血圧上昇による頭重感が懸念されます。
それ以外に、サンシシ含有製剤の長期投与(多くは5年以上)による、大腸の色調異常、浮腫、びらん、潰瘍、狭窄を伴う『腸間膜静脈硬化症』があらわれるおそれがあります。長期投与する場合にあっては、定期的にCT、大腸内視鏡等の検査を行うことが望ましいとされています。漢方薬も薬です。自己判断で連用しないよう気を付けたいものです。
3-4温経湯(ウンケイトウ)
・口唇や口の乾燥、肌の荒れやすい方の諸症状
・不妊症、排卵障害
・生理不順(月経不順)、下腹部が冷えて痛む
・更年期障害で冷えを伴うもの
・夕方の発熱、手足のほてり
長期の服用になる際には、甘草の副作用への注意が必要です。
3-5桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
・月経痛
・性器不正出血、月経過多、痔疾などの出血
・打撲などによる内出血の出やすい方
・子宮筋腫のできやすい方
・更年期障害の冷えやのぼせ、めまい、精神不安
瘀血(おけつ)改善薬で、がっしりとした体格の方に使います。血流障害から来る痛みに改善などに使いますので、男性にもよく使う漢方薬です。
この漢方薬を女性に使用する場合の目標として、あおむけに横になったときに、腹部に弾力のあるしこりを感じ、かつそのしこりを押すと痛いです。
出産後の胎盤や死胎の娩出にも使います。不妊の対策には用いられますが、妊娠したら服用を控えていただきます。
3-6紅蔘(コウジン)
・排卵に異常のある方、ホルモン値が低い方
・自分の排卵日を自覚できない方
・卵子の発育が悪い方
独蔘湯(どくじんとう)として単味で服用する場合もありますが、他のさまざまな漢方薬や栄養との併用の相性は良いので、さまざまな方法を試していて成果につながらないときに併用をおすすめします。
服用を始めて、排卵を自分のからだで自覚できるようになった報告をしばしば受けます。
[帰経]は肺経
末梢の血液循環の改善と水はけの改善に役立つばかりか、陰陽五行で言うと腎の母に相当し、腎経に力をつける働きがあるため、腎経に属する生殖器の働きの改善と衰え防止に役立ちます。
ゆえに、更年期障害にも多用されてきている漢方で、更年期の男性ホルモンや女性ホルモン値の低下をゆるやかにする働きもあります。
喘息、アトピー性皮膚炎などアレルギーのある方には、特におすすめです。
持病そのものの改善にも使われています。
赤血球変形能により、末梢循環を改善
「日本薬用人参研究会」の産婦人科領域でまず注目されたのが赤血球変形能です。
赤血球は、血液中の赤い色素を持った細胞で、酸素の運搬役をしています。
自身のからだを弾丸のように半分に折って、赤血球の半分ほどの直径の毛細血管を進みます。
赤血球変形能が弱いと、赤血球は毛細血管の入り口に詰まって十分に循環しません。
それだけで、手足の先は冷えますし、ホルモンも栄養も十分に行きわたりません。
紅参は、この赤血球変形の改善がよいことで知られています。
低下したホルモン分泌を下支えし、排卵を自覚できるように
更年期障害のコラムで別にお示ししますが、更年期障害は急激にホルモン分泌が低下した時に起きます。
紅参は、急激なホルモン分泌をゆるやかにすることによって、更年期障害の症状を緩和していきます。
この卵巣へのホルモン分泌への働きの影響で、今まで排卵日を自覚できなかった方々が、ご自身の体調変化によって排卵を自覚できるようになっています。このため、自然妊娠を望む方のタイミング法の成功例が増えています。
「健康な女性に生理痛はない」と言われます。
漢方で、健康的な体の準備をいたしましょう。
4.見落とされがちな肥満と痩せの体型
多くの場合見落とされているのが、体型によるホルモン失調です。肥満の場合と痩せの場合では、起きている事と対策が異なりますので、別々にご紹介していきましょう。
4-1肥満の場合
・体格指数BMIでいうと25以上の肥満体型の方
※ BMI(Body Mass Index):肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数。[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出される。計算方法は世界共通だが、肥満の判定基準は国によって異なる。 内臓脂肪の蓄積は必ずしもBMIと相関しないが、メタボリックシンドローム予備軍を拾い上げる意味で特定健診・特定保健指導の基準にはBMIが採用されている。
・生理不順や生理痛がある方
・起床時の体温が36℃以下の方
・起床時に体調が良くない方
このような方は、まず体重を5%落とすだけでも体調に変化が現れることがあります。原因となっているのは、肥満した脂肪細胞そのものだからです。
肥満した脂肪細胞は、単に体型を大きく見せているだけではありません。その脂肪細胞のひとつひとつにエネルギーを溜め込み、各々の脂肪細胞からホルモン分泌などを行う重要な役割をもった細胞です。
脂肪細胞から分泌されるホルモンは多数あります。大まかにご紹介すると、
・血管を収縮させるプロスタグランディン
・血液の粘度を上げるPAI-1
・インスリンの抵抗性を上げるTNF-α
・インスリンの抵抗性を上げるレジスチン
・インスリンの抵抗性を上げる遊離脂肪酸
・女性ホルモンのメリハリを悪くさせる女性ホルモン様(卵胞ホルモン:エストロゲン様)物質
・男性ホルモンの過剰分泌
・レプチンの過剰分泌
などなど
なんだか、月経困難を引き起こしていた犯人まで見つけた気がしませんか?
その上、排卵状態を悪くしていた犯人も居ましたね。
エストロゲン様物質や、男性ホルモン、レプチンは、脳の視床下部や下垂体までも過剰刺激して排卵障害の原因となります。
また、レプチンの過剰分泌はレプチン受容体の働きが鈍くなり、食べても満腹感を感じにくいばかりか、食欲を抑制しづらくなっていてさらに食べてしまい、結果として更なる肥満を招いてしまいます。
不妊治療より先にすべきことは、肥満改善ではないでしょうか?
太ると必ず生活習慣病になるとは限りませんが、太って生活習慣病になった場合は、肥満解消が必要です。
もちろん、肥満していても排卵障害がなく妊娠する場合や、医療の手を借りて妊娠することも多いです。しかし、肥満合併の妊娠の場合は、妊娠高血圧や妊娠糖尿病なども高確率で起き得ます。
自力での肥満解消が困難な方には、伴走者を探す手も!
4-2低体重(痩せ、るい痩)の方
日本肥満学会によるとBMI18.5未満
女性のからだにとって、るい痩は卵巣機能不全を招き、女性ホルモン不足による無月経・不妊・骨粗しょう症などを引き起こします。
大まかに言うと、受胎に必要な体脂肪量があるという事です。初潮を迎える頃女性の体脂肪量は8~10㎏に達しています。体脂肪量として8~10kgを下回って来ると、月経不順になることがありますが、体脂肪率として15%を境に急に無月経が増え、体脂肪率7.5%以下では、ほぼ生理が止まってしまうと言われます。
また、3か月~1年以内に元の体重の10%以上の体重減少に伴って無月経となった場合には、多くの場合にエストロゲンの低下も見られると言います。ダイエットした後やスポーツ選手などの無月経もこのような体脂肪の原因が考えられます。
女性のからだの一生は、「小児期」「思春期」「成熟期」「更年期」「老年期」と5つに大別されますが、骨代謝の早い思春期や成熟期に、無月経が6カ月以上続くと、骨塩量は低下し更年期ではなくても骨粗しょう症を発症すると言われます。
一生使う骨。その骨塩量は、若年期の蓄積量に一生左右されるのです。
太っていただくだけで・・・・
ところが、これが結構大変なのです。
今まで食べていない量を増やして食べるのは、単にお腹がいっぱいになると言うだけでなく、精神的な心の抵抗も伴う場合もあって、他人が思う以上に大変です。
痩せ過ぎは良くないことが分かっているはずの栄養学科の学生ですら、2割近くが病的やせであったと言う報告もあるほどです。
女性のからだが、正常に女性ホルモンを分泌するときに必要な脂肪量、全身の脂肪量をこのレベルまで上げて行くのです。それだけ。でもそれが大変です。分かっています。
そこで、自分のためだと思わないで、将来の赤ちゃんのため、そして子供と作る家庭のために食べていただけないでしょうか?
以前、大学生時代に生理が止まってしまって、7年間毎月病院に行きホルモン注射を打って生理を起こしていた方が来店されました。
ご結婚前でしたので、本当に悩んでご来店いただいていました。
「太りましょう」と申し上げた時には、「何のこと?」ってご様子でした。痩せた方が太るのは、周囲の方々が思っている以上に大変です。肥満解消していただく方がよほど楽なほどです。
この方には、紅参を食後に服用していただいて1年で結果につながりました。
5.妊娠と妊娠継続に必要な栄養補給をおすすめする理由
妊娠と妊娠の継続は、母体の中で遺伝子の設計図に従って連綿と母親自身と胎児のタンパク合成が行われ、母体の変化と胎児は成長があります。正常にタンパク合成を続けていくには、原料となる栄養が必要です。
その中には、正しくタンパク合成がスタートするために必要な栄養もあります。それが亜鉛です。亜鉛は、タンパク合成をスタートさせるための酵素、RNAポリメラーゼのスタートキーとなるミネラルなのです。
母体の変化と胎児の成長に必要なのは、亜鉛だけではありません。
スタートキーを亜鉛単味で見ていくのではなく、微量栄養素を複合的に多く含んだ天然の栄養素がおススメです。
妊孕性(にんようせい、妊娠するための力)の低下につながる免疫の老化は、栄養不足も関係
晩婚化に伴って、高齢出産の割合は増えていますが、高齢での出産は流産や胎盤機能異常(妊娠高血圧症候群)などのリスクも高めます。
妊娠するという事は、自分の遺伝子と他人の遺伝子の両方を持った個体(胎児)を自分の子宮の中で育てることになります。自分以外の遺伝子を持った胎児を排除しないで自分のからだの中で育てるには、免疫的に胎児を排除しないように自分自身の免疫の幅を広げる必要があります。
免疫系の中でも中心的な役割を果たしているのは胸腺です。
胸腺は胸のおよそ中央部分にあって、5歳~15歳で最大になったときでも30gほどの大きさの臓器です。
胸腺の働きは、T細胞と呼ばれる重要な免疫細胞の成熟、分かりやすく言うと自己と非自己を認識して免疫的に攻撃するように成熟させる教育機関です。
この小さくて重要な臓器胸腺は、性成熟の終了後は、老化と共に退縮します。胸腺は加齢変化が最も顕著にみられると言われている臓器で、退縮に伴って加齢による免疫機能は低下します。
それだけでなく、自己と非自己の区別がつきにくくなり、自己抗体をもつ割合が増えます。
これが胎児なら、対外排出つまり流産につながってしまうのです。
この胸腺は多くの亜鉛を必要としていて、胸腺の老化退縮は、亜鉛不足でも起きます。
亜鉛は、ストレスや添加物の多い食生活の中で、尿中排泄されることが分かっていますが、この胸腺退縮や免疫障害の症状は、亜鉛の補充により改善されることも分かっています。
5.【まとめ】症状や体質に応じて適切な漢方処方と栄養補給を
以上、不妊の原因やメカニズム、漢方処方や栄養についてお伝えしました。
不妊には様々な原因が考えられるので、今のご自身にあった方法を選びましょう。
また、病院の治療や漢方だけでなく、日常の生活習慣も大切です。日頃からストレス対策、睡眠と食事などセルフケアもしっかり行うようにしましょう。