糖尿病とがんのますます危険な関係
子育て世代の生活習慣病を考える まちかど糖尿病指導薬剤師の笠原友子です。
薬局店頭で、患者が自分でできる
肥満・糖尿病対策にとりくんでいます。
取り組みの中で、
糖尿病性網膜症の状態が改善し
視力が回復してきている方があります。
今回のお話は、この取り組みの中で
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糖尿病性網膜症の方に漢方薬と栄養療法を併用するわけ
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をテーマとしてお送りいたします。
糖尿病性網膜症で視力を失う方は
全国で毎年3000人いると言われます。
現在、中途失明者の原因では
1位が、緑内障
2位が、網膜色素変性
3位が、糖尿病性網膜症 ですが
糖尿病であること自体が、緑内障を誘発することを考えると
糖尿病が原因する網膜の状態を改善しうる方法は、視力を残すことに役立ちます。
糖尿病性網膜症にかかると改善しないと言われるらしいです。
当店の患者さんたちは、眼科で
「糖尿病性網膜症が改善するのを初めてみました!」
と言われて帰って来られています。
糖尿病網膜症とは
糖尿病網膜症は、糖尿病になったときに合併症として発症する病気です。
糖尿病になると血液の中のブドウ糖濃度があがり、甘いシロップのようなドロドロした血液になります。すると毛細血管の中で血液が非常に流れにくくなってしまい、その上動脈硬化も進むので、血管がつまって出血しやすくなります。
私たちのからだの、毛細血管が非常に集中して多い3ヶ所(腎臓、神経組織、眼の網膜)、この3ヶ所は糖尿病になると「三大合併症」と言われ、それぞれ糖尿病性の慢性疾患の発生頻度が箇所です。
※血糖値が200を超えることが多かったり、HbA1cが7.0以上で5年~10年経過すると網膜症の発症確率が高くなります。
目の奥には、「網膜」と言われるカメラのフィルムと同じような役割を持つ部分があり、ここに多くの毛細血管が広がっています。糖分が多く粘度の高い血液では、血管への負担も大きく、詰まりやすくなります。詰まった血管からは出血しやすい新生血管が現われて、眼底出血や硝子体出血などの網膜症になります。
出血した場合、しばらくすれば吸収されますが、出血にごりの為に視力低下をおこします。
また、出血の後に増殖膜が形成され、その膜が縮むと網膜剥離をおこし、失明に繋がる事があります。
•初期症状(単純網膜症)
自覚はない
血管が詰まり、切れたりする血管障害が発生
•進行してくると(増殖前網膜症)
出血した血液の脂肪やタンパク質が凝固する事により、網膜内に沈着する白斑が増えてきます。
•更に進行すると(増殖網膜症)
新生血管が現われ、血管が硝子体まで伸びてきます。その血管は非常にもろく、「牽引性網膜剥離」や「硝子体出血」の発症原因となります。
視力が低下し、進行が進むと失明する場合もあります。
糖尿病網膜症の病院での治療法
一般的に病院で行われている治療法をご紹介します。
単純網膜症の場合は内科的な血糖のコントロールが重要ですが、病状が進行し、眼底出血等が発症してくる状態になるとレーザー治療によって、新生血管の発生を防ぎます(レーザー光凝固術)。
糖尿病黄斑浮腫の状態になると、硝子体内注射によって浮腫を抑える治療法が主流になっています。(抗VEFG薬)硝子体手術の前に抗VEFG注射を行い、治らない場合硝子体手術になります。
新生血管をコントロールする漢方
糖尿病によって網膜の血管がつまると、神経は酸欠状態になります。
酸素不足を補おうと新生血管と言われる新しい血管を増やしますが、弱くて破れやすく、簡単に出血します。
この新生血管の出血で出来たかさぶたのような膜は増殖組織となって、網膜剥離の原因にもなります。
そればかりか、隅角という目の中を循環する水の出口を塞いでしまうと、水は出口を失って眼球の中に閉じこめられ、徐々に圧力(眼圧)があがって緑内障の状態になります。
緑内障になると視神経が圧迫されて視界が狭くなったり、視野に見えない部分ができたり、視力が低下して、ついには失明します。
※詳しくは、日本眼科学会糖尿病性網膜症をご覧ください。
そこで、この新生血管をコントロールできる漢方はないかと探していたところ、2本の論文に行き当たりました。
・1991年The JINSENG REVIEW No,12 28-31
血管新生に及ぼす薬用人参の効果
渡邉 聡枝(千葉大学医学部第2内科)ら
・1996年Jinseng review No,22第11回薬用人参研究会
「糖尿病性網膜症に対するコウジン末(正官庄)の治療効果(第1報)」
関西医科大学内科学第一講座 鉄谷多美子ほか
この論文は、2本とも薬用人参研究会の紅蔘(コウジン)を使った臨床研究論文です。
血管新生に対する紅蔘(コウジン)の作用
紅参は、血管の新生に対しては、促進と抑制の真逆の作用を持っています。
これは、「恒常性の維持」が強いと言われている紅参の特有の働きで、紅参には人が本来持ってる生体の状態をある一定のレベルに保とうとする力があります。
糖尿病性網膜症に対しては、新生血管の抑制の働きをしていますが、逆にけがや術後の回復に対しては新生血管促進の働きによって回復を早めます。
一本目の論文「血管新生に及ぼす薬用人参の効果」では、
紅参の成分は、容量依存的(量を多くするほど)に血管新生を促進しており、内皮細胞の増殖が認められていて、研究室内の実験結果ではあるものの、十分に生体内での血管新生を促進することが示唆されるものであったと書かれています。
つまり、紅蔘の服用によって破れた血管の修復は早まりそうです。
二本目の論文「糖尿病性網膜症に対するコウジン末(正官庄)の治療効果(第1報)」では、
研究はほぼ同じ条件の患者群に対して行われていて、他の漢方薬だけで治療した例[A]よりも、漢方薬に紅参を併用した例[B]では、3分の2は病状が進行悪化することなく、半数近くは初期症状(単純網膜症)のままとどまり、光凝固に至る例も無かったとあります。
糖尿病性網膜症のメカニズムとして考えられている効果は、
・血管新生の抑制→糖尿病性網膜症の進行を防止する
・血小板凝集能亢進の低下(千葉大:斎藤、田村ら)―血栓の予防
・血液粘度の正常化(東海大:山村ら)-血液のどろどろを改善→微小循環障害の改善
他にも、糖尿病性腎症の進行抑制やたんぱく尿の現象などの効果もあります。
紅蔘(コウジン)とは
今回のコラムに出て来る紅蔘(コウジン)と言うのは、高麗人参のコウジンの事です。
高麗人参には、その加工法の違いによって白蔘(ハクジン)と紅蔘(コウジン)があります。
白蔘(ハクジン)は、一般的に朝鮮人参と呼ばれていて、外皮をのぞいて乾燥してあるので見た目が白っぽいです。焼酎漬けや乾燥したものが売られています。対して、紅蔘(コウジン)は外皮を付けたまま、蒸して乾燥してあります。見た目が赤っぽく、外皮の直下にある成分が残っているので、成分的に充実していますが、加工に手がかかります。当店では、正官庄ブランドの紅蔘のみを扱っています。
網膜症に対する他の作用
紅参には新生血管をコントロールする作用のほかに、末しょう循環を改善する働きがあります。
その結果ではないかと思われますが、患者が医師より伝えられている報告によると、出血した血液の脂肪やタンパク質が凝固する事により網膜内に沈着してできると言われる白斑が徐々に消えて行ったと言います。
さらに、紅参は「肺経」の薬ですが、肺経の漢方は末梢の水はけを改善します。
糖尿病黄斑浮腫の状態になると、抗VEFG薬の硝子体内注射によって浮腫を抑える治療法が主流になっていますが、紅参を服用している方は浮腫が改善していると医師に言われてきます。
独参湯のように吸収の良い剤形で、少量ずつでも長期に服用していただきます。
網膜のための栄養も必要、網膜の裏の脈絡膜は亜鉛の貯蔵庫
網膜に必要な栄養があるならば
そしてもし、その栄養不足が網膜の状態に影響するとすれば、補給すればいいと思いませんか?
網膜は毎日絶えず映像を映し出す眼のフィルムに相当する部分で、日々多くの映像を処理しています。
そのため、網膜の後ろの脈絡膜には多くの亜鉛を貯蔵庫として蓄えていて、活性酸素の処理など生体酵素反応に使っています
糖尿病患者さんに必要なインスリンも亜鉛を必要とするホルモンですから、インスリンにも網膜にも必要な栄養を中心に、からだに安全で吸収の良い天然物で補給していただきます。
血管に対する作用を持つ紅参と組み合わせることで、さらに効果的になることを期待して、服用していただいています。
活性酸素の消去に必要な栄養素があります
活性酸素とは、大気中に含まれる酸素分子が、より反応性の高い化合物に変化したものの総称です。ふだん何気に呼吸をし、酸素を取りこんでいますが、その一部が反応性の高い活性酸素に変化しています。活性酸素は1 日に細胞あたり約10 億個発生し、これに対して生体の活性酸素消去能力(抗酸化機能)が働くものの、細胞のDNA損傷させます。
活性酸素の消去系には、主に3つの酵素が働いています。皆さんおなじみのSOD(スーパーオキシドジムスターゼ)のほか、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼです。これらの酵素が活性酸素を消去するためには、スタートキーとしての栄養素(ミネラル)が必要です。SOD酵素であれば、亜鉛や銅、マンガン、カタラーゼは鉄、グルタチオンペルオキシダーゼにはセレンが必要です。
これらの栄養素が不足したままですと、活性酸素は消去されず細い血管の内膜を傷つけ続けることになってしまいます。一般的に「栄養をとる」と言うと「カロリーをとる」ことと勘違いしがちです。口から入れたカロリーを消費するための栄養素が取れていないと、消費しきれないカロリー源とくに糖質や脂質はからだにとって負担になります。
日本眼科学会のホームページ「8.加齢黄斑変性の予防」にも次のように記されていますのでご紹介いたします。
「網膜の細胞を障害する活性酸素の悪影響を軽減するための抗酸化ビタミン(ビタミンE、ビタミンC、ベータカロチンなど)を含む食品、ミカン、大豆、玄米、ニンジン、カボチャや、抗酸化酵素を構成するミネラル(亜鉛など)を含む食品(牡蠣や海藻など)を積極的にとりましょう。」
「すでに加齢黄斑変性になっている方は反対の眼を守るためにも、医師と相談してサプリメン卜の服用を検討するのも良いと思います。」
インスリンに必要な栄養素(ミネラル)亜鉛
糖尿病患者に働きが不足するホルモン(インスリン)が正常に分泌し、その構造を維持して作用するためにも亜鉛が必要ですが、糖尿病の患者には亜鉛が不足していることが分かっています。
インスリンと亜鉛の関係は、自転車とそのタイヤのようなものにたとえられます。
2輪の自転車のタイヤをインスリンにたとえると、2個のタイヤ(亜鉛)がないと自転車は走りませんね。
また、インスリンはすい臓で作られ、すい臓から分泌されるホルモンですが、作られたまま垂れ流しを防いだり、必要な時にスムースに分泌するためにも亜鉛が必要です。
栄養素(ミネラル)の亜鉛は、ヒトのからだで300種とも500種とも言われる酵素の活性にかかわっています。ところが糖尿病患者の場合、高血糖が尿中への亜鉛の排泄量を増やしてしまい、亜鉛不足に拍車を掛けているのです。
先にご紹介したように、亜鉛には活性酸素を消去するはたらきがあり、糖尿病合併症の細胞障害に対しては、防御にはたらきます。実際に亜鉛・クロム・セレンなどの栄養素の補給により、糖代謝異常の改善が見られる場合があります。
からだの中でどうしても働きが必要なインスリンが作用していない糖尿病の状態では、亜鉛の貯蔵庫である網膜の後ろに位置する脈絡膜の亜鉛も不足していても不思議はありません。必要な場所に必要な量の亜鉛の補給をすることは健康な状態に一歩でも戻るために補給をおすすめします。
実際に飲んだ結果は拙著に
実際に飲んで改善して戴いています。
拙著「糖尿病は栄養をとれば健康に戻る」(経済界)にご紹介した通りです。
眼科医ではないので自分で見たわけではありませんが
「糖尿病施網膜症が改善するのを初めて見ました」
「ベタベタの出血も白斑もきれいになっています」
と言われて帰って来ています。
ただ、皆さんに用心していただきたいのは、たとえ視力が改善しても、全身の組織にこびりついた最終糖化産物(AGEs)は、こびりついた組織が一替わりするまで無くなりません。
引き続きの用心は必要ですから、お忘れなく。
【参考文献】
・ 血管新生に及ぼす薬用人参の効果
The JINSENG REVIEW No.12(1991) 28-31 第6回薬用人参研究会
渡邉 聡枝(千葉大学医学部第2内科)ら
・血管内皮細胞の増殖に及ぼす薬用人参サポエンの効果
The JINSENG REVIEW No.14(1992) 37-39 第7回薬用人参研究会
佐藤克明、東市郎(北海道大学免度科学研究所化学部門*)
・薬用人参による血管新生の作用機序
The JINSENG REVIEW No.16(1993) 64-63 第8回薬用人参研究会
手 塚 万里子ほか(千葉大学医学部第2内科)
・糖尿病性網膜症に対するコウジン末(正官庄)の治療効果(第1報)
The JINSENG REVIEW No.22(1996)119-122 第11回薬用人参研究会
関西医科大学内科学第一講座 鉄谷多美子ほか
・「亜鉛の有用性を探るー臨床での亜鉛補充による効果とその考え方ー」
糖尿病と亜鉛 坂東 浩(徳島大学大学院医学研究科生体情報内科学教室)
・人体におけるミネラルの代謝出納 Human Mineral Metabolism
西牟田 守(国立健康・栄養研究所)