糖尿病は飽食の時代の栄養失調

笠原友子

笠原友子

テーマ:糖尿病・原因・栄養素不足

なぜ薬を飲み続けても治らないのか?なぜ悪化し続けて行くのか?
そんな疑問を持ったことはありませんか?
薬剤師として薬を渡し続け、改善する方法はないものかと悶々としました。その中で得た解決法の1つ、糖尿病が改善しない原因は、意外な事に栄養素不足にあるのではないかと言う話しです。

医師の言うとおりに処方された薬を飲んでもそれだけでは治りにくい、または完治しにくいことは、以前のコラム「糖尿病は薬を飲んでも進行する病気」「糖尿病は危急の合併症を持つ慢性病であることをご存知ですか?」のとおり明らかです。
自己管理を徹底し、生活改善を行うと、糖尿病は改善に向うのでしょうか。

 そうであれば、事は難しくありませんが、それでも症状の進行を止められないケースが少なくありません。食事を抜いたり、運動療法を行っても、症状を悪化させてしまう場合があるのです。
 これはなぜなのか。食事制限を厳格にして、痩せたにもかかわらず糖尿病や合併症を悪化させる人がいるのはなぜなのか?その理由を私自身が書物や文献を探って突き詰めたところ、大きな疑問が湧きました。
「飽食の時代の栄養失調」が起きているのではないかという衝撃的な事実です。

飽食の時代の栄養失調

糖尿病は食べ過ぎが原因で起きた病気のように思われがちですが、実はまったくの逆。つまり、栄養素不足から生じた「不足病」だったのです。これなら痩せ型糖尿病患者がいることや高齢になって高血糖も可能性が無くもありません。栄養失調が起きているわけですから、必要な栄養素を補給してあげなければ、病気は改善しません。

 薬の摂取や食事療法、運動療法を実行しても改善しないならば、科学的な栄養補給をしない限り、これからいくら糖尿病薬を飲み続けても治らない可能性が高い、と私は考えています。
 小学校の家庭科で習った三大栄養素の話を思い出してみてみましょう。ここに解決のカギが隠されていました。

「人がとる食べ物は、体の中で代謝されてエネルギーに変えられます。そのエネルギーのもとになる食べ物を三大栄養素と呼びます。この三大栄養素とは糖質・脂質・タンパク質です。
 この三大栄養素がエネルギーに変わるのを手助けする物質がビタミンやミネラルです。あわせて五大栄養素と呼びます。」
 (絵が小さくなってしまいましたが)
この五大栄養素の考え方に年代が出ます。この栄養素の教育は小学校の家庭科の時間に学ぶのですが、大まかに昭和30年代前半生まれの方までは、カロリー源となる三大栄養素の教えまでしか受けていません。食事を摂る=カロリーを摂ると言う認識に陥りがちなのです。五大栄養素の知識を得たのは昭和三十年代半ば以降生まれの方々ですから無理もありません。

栄養のバランスを考えてみましょう

エネルギー源である三大栄養素に対して、見合うだけのビタミンとミネラルが摂れていれば、見合うだけのエネルギーが作られ、食べたものはみな日々のエネルギーに使われて残りません。


 代謝を促す手助け役のビタミンやミネラルが足りなければ、せっかくとった三大栄養素もエネルギーに変えられず、体の中で余ってしまいます。その余った状態が血液中に起きれば高血糖・高脂血症になるし、脂肪細胞に蓄えられれば肥満につながって、さらに血糖値を上げやすい状態を引き起こします。これが糖尿病の原因の一つになっているのです。


 ビタミンやミネラルが足りないために、高血糖になっているのであれば、糖尿病薬を飲んだり、食事の減量療法を行うだけで改善しないのは道理です。ビタミン・ミネラルを補ってあげなければいけません。
 ビタミンは、食べ物の中にごくわずかに含まれている有機物です。中でもビタミンB群が不足すると糖の代謝は進みませんが、これは人の体内で合成することができません。

 一方、ミネラル(無機物)は、体の構成要素であり、また体を正常に動かすためにも必要なものですが、多過ぎても少な過ぎても病気になります。
 例えばミネラルの中でも、鉄が不足すると貧血になるといわれますが、この貧血状態になると糖の代謝は十分に進みません。人の体は、ビタミンやミネラルが必要なだけとれていないと、健康を維持できないのです。

糖の代謝には、実際に多くのビタミンやミネラルを必要とします

下の絵は、摂った糖質をエネルギーに換えるまでの経路をしめした図です。
第二段階のクエン酸回路(TCA回路)
第三段階の電子伝達系
と、3つの経路を通ってエネルギー化されて行きますが、どの経路でも多くのビタミンやミネラルを必要としており、どれか一つでも不足すると、代謝が滞ったり別の経路に行ってしまいます。
例えば、第二経路の始まりはクエン酸から始まりますが、次の物質に換わるためにはビタミンB2・ナイアシン・パントテン酸それに鉄を必要とします。貧血の方ですと鉄不足がありますから、十分に次の物質に換われず滞ってしまいます。



このように糖質一つとっても、十分なビタミンとミネラルがないと代謝されて行きませんから、先にお示ししたようなブロックでエネルギー源である三大栄養と見合うだけのビタミンやミネラル、そして見合うだけのエネルギーを表しています。



 ちなみに、栄養素の補充が糖尿病を救うという私の発想は、「足りないものを補う」という非常にシンプルな考えに端を発しています。
「そもそも代謝経路に必要なこれらのビタミンやミネラルの栄養素が不足して、ブドウ糖がスムースにエネルギー化されるのだろうか? 
栄養素が足りなければ、体のどこかに余らないのだろうか? 
本当に代謝に栄養素が必要なら、まずこれらの栄養素を補給してみればどうなるのか?」
という私自身の素朴な疑問を発端に、導き出した解決案なのです。

 薬を飲み続けても悪化するのにもかかわらず、薬をやめることができない。そんな患者さんは大勢います。「糖尿病は一生治らない病気」となかばあきらめぎみの患者さんも少なくありません。そうした患者さんに、このコラムシリーズ[糖尿病・原因]ではとっておきの解決策をご提示したいと考えています。

次回は、不足したビタミン・ミネラルの補給で高血糖状態改善へ

いますぐ改善したい方は、こちらへ糖尿病について

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笠原友子
専門家

笠原友子(薬剤師)

笠原健招堂薬局(有限会社笠原)

漢方の選薬用質問と血液検査結果から微量栄養素の不足や日常の生活習慣をチェックし、微量栄養素補給と漢方薬の選薬だけでなく生活指導で糖尿病をはじめとする生活習慣病に対応し、特定保健指導までできるのが強み。

笠原友子プロは北陸放送が厳正なる審査をした登録専門家です

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