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中田和宏

つらい痛みを軽減し、心身の健康を導く鍼灸のプロ

中田和宏(なかだかずひろ) / 鍼灸師

トキの森鍼灸院

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コラム

つらい頭痛のはり治療、東洋医学のはりと頭痛は意外と相性がいいんです

2022年2月14日

テーマ:健康とはり

コラムカテゴリ:医療・病院

コラムキーワード: 頭痛 原因頭痛 対策筋膜リリース


はじめに

頭痛が痛い!こういった重ね言葉を重言(じゅうげん)といいます。
それはさておき。日に日にオミクロン株感染者数が増えていっています。オミクロン株感染者の56%が頭痛を訴えています。感染症による頭痛は新型コロナウイルス感染症だけでなく、インフルエンザやほかのウイルスでも起こります。

はりやお灸で痛みを緩和できる頭痛についてお話します。感染症の頭痛は原因のウイルスをやっつけないと治らないので病院におまかせします。

鍼灸院で対応できる頭痛

頭痛は一次性頭痛と二次性頭痛に分類されています。

偏頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛は一次性頭痛、二次性頭痛は脳血管障害や外傷、腫瘍など重篤な病気から起こる頭痛です。
鍼灸院で対応できる頭痛は一次性頭痛です。問題は目の前の患者さんがどの頭痛か判断できるかどうかです。おそらく重症の頭痛はそもそも鍼灸院に来ないと考えられます。ですから受診者はすべて一次性頭痛と言えます。もちろん、2時性頭痛のレッドフラグが立ちそうなら早急に専門医に紹介します。現実には頭痛で鍼灸院を訪れる患者さんはすでに病院で診察を受け一次性頭痛の診断をもらっています。

鍼灸院で対応できる3つの頭痛の特徴

片頭痛


頭部の片側に起こる頭痛だから片頭痛。私の知り合いが長いこと変頭痛だと思ってたそうです。

こんな症状があると片頭痛かも

  • 頭痛が起こる前に光を見たり眠気があったり気分がよくなかったり、前兆がある
  • 片側の頭痛、でも40%は両側
  • ドクンドクンと心臓の動きにリンクした痛み
  • 寝込みたくなるような生活に支障がある痛み
  • からだを動かすとひどくなる
  • 吐き気や嘔吐が起こる
  • 光や音に過敏
  • 頭痛は慢性でお薬をずっと飲み続けている

緊張型頭痛


以前は首の筋肉の緊張が原因で頭痛が起こるから緊張型頭痛と言われてましたが、最近のガイドラインでは筋肉の緊張や炎症、代謝障害は関与していないとされています。では何が緊張しているのでしょうか。この「緊張」は筋肉が緊張しているという意味ではなく締め付け感のことやストレスによる精神的緊張を言っています。ヘルメットをかぶっているようなどと表現されます。

こんな症状があると緊張型頭痛かも

  • 女性で色白、細身の美人(症状ではないですね)
  • 低血圧や貧血がある
  • うつむき姿勢を続ける作業が多い
  • 高い枕をしている(朝起きたら頭痛がある)
  • ストレスが多い


群発頭痛

あまり聞きなれない頭痛です。有病率全人口の0.1%、アジア人の3%未満です。目の奥の激しい痛みが特徴です。

こんな症状があると群発頭痛かも

  • 片目の奥や眼球に激しい痛みがある
  • いつも同じ側の目に痛みが出る
  • 痛くなると汗が出て目が充血し鼻水や鼻詰まりが起こる
  • 明け方に痛みが出て毎日同じ時刻に目を覚ます
  • 年に1~2回、一日に1~2時間、それが1~2か月続く
  • お酒がきっかけで起こる

実際にはこれらの頭痛が混在していることがあり、しっかりと見分けないと対応を間違って余計頭痛がひどくなる場合があります。

頭痛の分類が新しくなりました


2021年に『頭痛の診療ガイドライン2021』が出版されました。その中で一時性頭痛は上記の3つ以外に多くの頭痛が紹介されています。
そして鍼灸についても言及されています。

  • 難治性の頭痛診療において鍼灸師を含めた集学的チーム医療が推奨される
  • 緊張型頭痛の非薬物療法の一つに鍼灸が紹介されていてメタアナリシスでは有効性が確認されているものの、エビデンスの確実性はC
  • 緊張型頭痛の予防療法の一つに鍼灸が紹介されている

というように鍼灸治療は頭痛に対し期待がされているわけですけれど、解決しなければならない課題あります。

  • 医療と連携できる鍼灸師が少ない
  • 高いエビデンスレベルの研究が少ない
  • 鍼灸治療といってもいろいろなやり方があってどれが頭痛の治療にいいのかわからない

など。鍼灸学会が中心となって連携と勉強を進めています。

頭痛と現代医学と東洋医学

現代医学は対処療法的に痛みを止めるためのお薬、湿布、マッサージ、リハビリなどが行われます。
東洋医学では血流を改善する漢方薬や筋肉や精神的緊張を軽減させるための鍼灸やあんま・指圧を行います。からだのバランスの偏りをなくすよう治療します。

患者さんとよく相談して生活習慣の改善を進めながらバランスの偏りを是正していくのが東洋医学のホントの力です。
もちろん、痛みがひどいときには対処療法として新薬の服用を勧めます。

東洋医学でいうバランスとは

「気・血・水」
。人体はこの3つの要素が循環することで生きていると考えます。生まれてきて親からもらったからだに、食べて胃から入ってきたもの、呼吸で肺から入ってきたものが合わさって「気・血・水」となり人体ができています。
「気」
はエネルギーと解釈できます。目に見えないエネルギーで「気」が作用することで神経の伝達が起き、からだが動きます。電気を含む何かのエネルギーです。そもそも「気」(氣)は米を炊いたときに出る水蒸気がおかまのふたを持ち上げることを見た昔の人が、白くて湿っていて熱くて手でつかめない(湯気のこと)何かが力を出してふたを持ち上げている!ということでできた漢字です。

「血(けつ)」
は血液です。それも赤い色の。赤血球。肺から換気された酸素を運ぶというのは現代の医学ですが、赤い血は「気」と栄養を運ぶとされています。
「水」
は赤くない血液とリンパ液、漿液などの水分です。これは「血」が運ぶ以外の栄養と水分を運んでいます。
からだはこの3つの要素が順調に循環することで健康を保っているというのが東洋医学の考えで、どれか一つでも滞ると体のバランスが崩れてつらい症状や病気が起こります。
ですので治療としては流れを良くすることと足りないものを補ってやることになります。
漢方薬は体に不足している栄養を補い余分なものを排泄させる作用があります。鍼灸は臓器のつながりをスムーズにするため「気・血・水」が流れやすくするよう通路(経絡)を調節しコリを取ります。結果として血流改善、筋緊張緩和、リラクゼーション効果があります。
つらい痛みを早く軽減するための現代医学と、体のバランスを考え是正していくことで頭痛を軽減し起こりにくくする東洋医学。両方をうまく活用することがポイントです。

頭痛に対する鍼灸治療の研究

頭痛の鍼灸治療に関する研究の第一人者である鳥海春樹先生(慶應義塾大学 理工学部大学院 理工学研究科 特任准教授、医学部 神経内科 講師)★6に、数年前金沢に来ていただき頭痛の鍼灸治療について講義と実習をしていただきました。頭痛患者さんの特徴はとにかく背中に強いコリがあることです。脊柱起立筋や僧帽筋がガチガチに緊張しています。これを柔らかくすることで頭痛が軽減すると教えていただきました。
それ以来、頭痛の患者さんや耳鳴り・難聴を訴える方には背中を確認して施術しています。
鳥海先生はNHKの「東洋医学 ホントのチカラ」にもご出演されています。
ちなみに「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」に鍼治療が有効という放送もありました。慢性頭痛の患者さんはお薬の治療しかしていらっしゃらない方が多いです。一度鍼灸を試してみて、お薬を減らしても頭痛がひどくならないことを知っていただきたいと思います。

頭痛と鍼灸治療

頭痛の鍼灸治療は東洋医学的な考えからツボを選んで行う方法と、鳥海先生が推奨されている現代医学的な観点からツボを選ぶ方法があります。
東洋医学的では、冷えとのぼせ、ストレスによる興奮が頭痛を引き起こすと考えます。風邪や感染症(現在感染拡大しているウイルスなど)から起こる頭痛は除きます。
冷えを取るツボ、のぼせを引き下げるツボ、リラックスするツボを選択します。
現代医学的な観点から行う鍼灸治療は、三叉神経の興奮を沈めることと背部のコリや筋緊張を軽減することで頭痛を改善しようとするやり方です。
多くの鍼灸師は両方をうまくブレンドして治療しています。鍼灸師によってブレンドの配分が違ってきますが効果はおなじです。

頭痛と筋・筋膜疼痛症候群の関係(頭痛を起こす筋肉)

トリガーポイントが生じることで筋・筋膜疼痛症候群を発症し、それが原因で頭痛を起こしているものがあります。トリガーポイントが胸鎖乳突筋、僧帽筋、後頭下筋群にできると頭痛が起きます。頭を支える首の筋肉です。



また食べ物をかむときに働く側頭筋にトリガーポイントができると側頭部や上の歯に痛みが起きます。
トリガーポイントはツボに似ていて一致するものもありますが、ツボとは別の位置にできることもあります。トリガーポイントの発見にはツボと経絡の存在からヒントを得たと、トラベルとサイモンズがその著書『トリガーポイント・マニュアル』に記載しています。

慢性頭痛を訴えて来院された女性のケース

39歳、女性、会社員、主訴は頭痛と肩こり。仕事で20歳代後半ぐらいから現在まで頭痛が続いています。デスクワークと出張・営業をしています。性格的に人と接するのはちょっと苦手で、出張後は頭痛がひどくなります。お天気にも影響され、雨降りや気温の低下、低気圧で頭痛がひどくなります。痛みは側頭部にあり締め付けられる感じの痛みです。鎮痛剤やマッサージでしのいできたけれど、今回の頭痛はそれでもよくならないため、とりあえず楽にしてほしくて当院を受診されました。
一般所見、生活症状、理学的検査に異常ありません。
お話しと触診所見から緊張型頭痛と判断しました。足の冷えがあり、ストレスによる交感神経が緊張していてやや興奮気味なことが脈診やからだの硬さから推測されました。

後頚部や肩甲上部、肩背部の筋緊張とコリをとりリラックスすること、冷えの改善を目的に10分間置鍼しました。
施術後は頭痛がなくなり筋緊張とコリが取れました。「とりあえず楽にしてほしい」という目的を達したので終了としましたが、頭痛の原因がコリとストレスによる緊張だから定期的にメンテナンスをしていく必要があることをお話ししました。
メンテナンス治療は気象や疲労に影響されない体づくりをめざします。ストレスについてはご自身で対処法を勉強していただき(マインド・フルネスなど)、当院でアシストする形でストレッサーに対して影響を受けにくいココロを育てていく必要があることをお話ししました。
目が明るくなり、体が楽になって頭痛がなくなりすっきりしたと言って帰られました。体が楽になると心も楽になる、それが鍼灸治療の良いところです。

まとめ

  • 頭痛は原因によっていろいろなタイプがある
  • 新しい頭痛の診療ガイドラインができた
  • 鍼灸が対応できるのは一時性頭痛
  • 慢性の難治性頭痛には鍼灸を含む集学的チーム医療で対応する
  • 東洋医学のからだの診方
  • 鍼灸治療と頭痛
  • 緊張型頭痛は筋緊張だけが原因ではなくいろんな緊張がかかわっている

この記事を書いたプロ

中田和宏

つらい痛みを軽減し、心身の健康を導く鍼灸のプロ

中田和宏(トキの森鍼灸院)

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