鍼灸師の具体的な仕事って?
私は手のお手入れを専門職として昔から行っており、手指や肌・爪について考察し日々研究しています。
東洋医学において爪は、手軽に観察しやすく、その時の人間の体の状態を知る大きな手がかりです。古来から人間の爪は健康を映す大きなバロメーターであり、身近な生活習慣を見直すことで、体を常に元気に維持することができます。
手は、毎日見ることができる健康のバロメーター
特に爪に関しては、非常に体の不調の兆候が出やすい部位になります。体調が悪い人の爪を見てみると、ひび割れや変形、出血等の変化が出ていることが多く、知っておくだけで大きな予防にもなります。今回は、伝統医学から見た、爪の健康維持の秘訣や現代の我々に役立つ生活習慣への取り入れ方を紹介します。
東洋医学は、人間の体は三要素である「気・血・水」のバランスが体の土台であり、病変部位はその偏りによって起こるという考え方です。人間の体の気も「陰陽」のバランスを維持し、体の水や気が循環することを重要視しています。そして、体の中でも5本の大黒柱にあたる、「五行」5つの臓器の機能を分類し、体の臓器の働きの些細な異変を見逃さないようにし、整えていきます。五行は、「肝・心・脾・肺・腎」の臓器を指し、この5つの臓器の働きをバランス良くしていきます。イメージするなら、基礎が気と血と水のバランスであり、陰陽が日当たりや風通し、五行が大黒柱といった役割を持って、快適な家ができるイメージです。そのため、どの要素もバランス良くなければ人間の健康は成り立たず、元々の人間の体の状態である「元気」を作り出す医学です。
西洋医学とは異なったアプローチで、病気の原因を解明し治療していきます。西洋医学の場合は、病気になった原因の部位の変化を局部的な感染や特定の栄養不足等を調べ、補っていくことで病気を治していきます。そのため、即効性があり、病気の部位を治すことに特化しているのが特徴です。
しかし、東洋医学には西洋医学ほどの即効性はないといわれています。東洋医学は、治すスピードよりも、その病気になりにくい体を作ることに関しては非常に優れています。病気になっている土台を治し、本来の人間の体の機能に戻すということを意識しているのです。特に、東洋医学は「未病」という症状の対策には非常に敏く、冷え性や倦怠感といった病気にはなっていないものの、体が本来の機能に戻っていない状態を改善には非常に適しています。大きな病気ではないものの、放置すると体の大きな異変や病気の温床になりやすい状態を改善するのに非常に優れているのです。
「観察をすること」「自分の身体を知ること」がいかに大切か
自分の体をよく見て、些細な異変がある場合、それを見逃さずに生活習慣等を見直すことで、体の調子を元気に戻すことを意識しています。その観察する体の部位の中で、手の爪は普段から様子の観察がしやすく、加えて、東洋医学でも爪から病気を診断し治療していくことも行われてきました。
爪は、東洋医学において「肝」のグループに入ります。これは、人間の肝臓の働きのバロメーターであり血色の変化や爪自体の症状を知ることで主に肝機能と関連付けて考えられているためです。
爪の症状の中、爪の色が白い・紫、爪が割れるという症状は、人間の血行が悪くなると肝臓の解毒や代謝機能が低下することで滞ることが起こるためだと言われています。特に、爪は手先の末端のため、血が届きにくくなるため症状が発生しやすいのでしょう。
私は、このような東洋医学的な考え方を学ぶようになり、考えたことがあります。それは「自分の爪の状態を観察することで、生活習慣や日頃食べる食べ物を意識して見直すきっかけになるかもしれない」ということです。
今日から、爪を観察することから始まるヘルスマネジメントをはじめてみましょう。
さて、私の現在の爪の状態を散々たる状態です。どれだけ手のお手入れをしていても日々ネイル用品の検証実験を行っているので常に乾燥している状態です。時には爪に筋が入る、爪が割れるといった状態の時もあります。
これも主に体の不調を示す爪のサインになります。爪に縦筋が入る現象は加齢のサインでもありますが、私は若い頃から縦線が目立っていました。思い返せば、爪の生育に必要な十分な睡眠が取れていない、異常なストレスがある場合が多かったように思います。睡眠不足の解消や筋トレ等をやって、睡眠の質を上げるストレス源から避難する等原因を取り除くことが大切です。
また一時期、過度なダイエットをした際には爪に横線が目立つようになりました。皮膚科で診察していただいた際に「横線が入っている時は、爪が成長する際に十分な栄養が不足しているから。過度なダイエット等食事制限がひどい場合に起こりやすいので、爪に良いとされている栄養素を取るように」とアドバイスを受けたこともありました。
加えて私は幼少期より貧血や立ち眩みに悩まされており、特に貧血が続く時には爪が割れるという症状が目立つような気がします。特に女性は月経等の関係で鉄分が不足しがちになります。そのため、割れる場合は鉄分を意識して摂ることが改善への一歩です。
このように爪には様々な身体の状態が反映されますが、特に女性は末端冷え性の方が多く、指先が冷たい、爪の色が健康的なピンクではなく紫や血色が悪いという症状に悩まされている方が多いと聞きます。指先に十分な血液が行き渡っていないため、マッサージや手を洗面器で温める等を行って血行を良くするケアを日常的に取り入れてはいかがでしょうか。
日常的に負担なく出来ることと言えば、例えば血液の材料になるレバー等を食べる、それとともに新鮮な野菜を摂るなどです。肝の機能を助け、血の材料となるものを食べつつ、水の循環を良くする働きがあります。老廃物が溜まると摂取した栄養素が爪に行きにくくなります。そのため、元気な爪が育ちにくい環境となってしまうのです。
東洋医学において爪は、手軽に観察しやすく、でもその時の人間の体の状態を知る大きな手がかりです。爪には、人間の体の血行の状態や肝機能の働きによって睡眠の質やストレスの状況といったことまでわかるようになります。古来から人間の爪は健康を映す大きなバロメーターであり、身近な生活習慣を見直すことで、体を常に元気に維持することができるのです。血色がよく薄ピンクから肌色で、爪自体にも艶があり程よい厚みがある健康的な爪を目指しましょう。