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魔法のいす

坂部智子

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テーマ:母の介護

グズグズといつまでも弱っている間に、GWも終わってしまい、
5月もはや8日・・・まだ体調は未復活のまま・・・と、私のコトはいいのだ。

母、である。
母も不調のままで、起き上がれない、立ち上がれないことがどんどん増えている。
今朝は、トイレで立った瞬間に床にへたり込んだ。
父に足を持ってもらい、トイレのマットごと後ろから押し出して、
居間までひっぱり、そのまましばらくごろんと横になっててもらった。

見えるところに食卓がある。
すでにもう朝ご飯がセッティングされているので、
ちらっちらっと見てる。
「お腹すいた~?」「ごはん食べる~?」と声をかけてみると
ちょっと頭を持ち上げて、「ふ~ん・・・」と言う。
背中を起こして座らせて、そこから手を持ってひっぱると、
さっきとちがって、びっくりするぐらい簡単に立ち上がる。やれやれ・・・

しかし、いつ力が抜けて立てなくなるか、
歩いていても、どんどんお尻が引けてしゃがみこんでしまうのかは、全くわからない。
予測がつかず、しかもこれだけ頻度が増えると、こちらの負担も大きい。
移動の手段の確保・・・が必要かな。

昔、退院した時に、ワタシ用に作ってもらった椅子がある。
全く立てず、歩けず、首も自分では支えられなかったので、
背もたれを高くして、キャスターを付けた木の椅子。
そのままお風呂場に行って、シャワーができるようにと、
座面に隙間をあけて「ヒノキ」で作ってもらった。
まだ、シャワーキャリーなどがあることも知らなかったし、
車いすでは、狭い家の中では動きづらいので、とにかく、必要最低限の移動が
少しでも私も介護してくれる母にも負担が少ないように・・・と
入院中に一緒にいろいろ考えて、知り合いの大工さんに作ってもらったのだ。

私が元気になってからは、長いこと庭で雨ざらしになっていたので、
キャスターは錆びて動かず、色あせてみすぼらしい。
さっそく父がキャスターを付け替え、真っ白のペンキを塗った。
すっかりみちがえるようにきれいになって、なんだかとてもかわいらしい椅子になった。
まさか、また出番があるなんて、思っていなかった。



今度は私が、母をのせて動かそう。
母はもう何も覚えていないけど。
この椅子に座ると、すぅ~って、家の中はどこでも行けるんだヨ。
「魔法の椅子」
そう呼んでた。

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