車いすで
朝は、どちらかというと集中力が無くてボーっとしていることが多いので、
できるだけ簡単に食べられるものにしている。
基本は果物。
メインはバナナ。
それプラス、季節の果物・・・ちょっと前までは梨、今朝からはみかん。
母は、私の記憶にある限り、みかんの薄皮を出すタイプだった。
(ちなみに父も)
この薄い皮の、いったいどこが固くて食べられないのだか、私にはわからないが・・・
病状がある程度進んできても、みかんやトマトは、
口の中でもごもごしていたら、ちゅっと、皮だけ器用に出してきていた。
ので、美的感覚の問題でもなく、やはり、口が上品なのだなぁと納得していた。
しかし、とうとう、今季からは、皮を出さなくなった。
縁の立ち上った、例の“食べやすい器”に、
父が毎日、母がお箸で挟む仕草を観察?研究?し、切るサイズを工夫しているバナナと、
ばらしたみかんを入れている。
母は、お箸で器用に一つずつ挟み、口の中に放り込んで、ワイルドに食べている。
そのペースの速いこと。
あれだけ「モゴモゴ・・・ちゅっ」を、延々繰り返していたのに、
その記憶はもうすっかり抜け落ちているよう。
ハイスピードで食べ終えて、今朝の一言。
「全部食べたら、もうおしまい!!」
そう・・・そのとおり。
私は、あっけにとられて、ずっと横で母の食べるのを見ていたので、
まだ、ほとんど手つかず・・・
次の瞬間、手を伸ばして、丸ままのみかんをお箸で挟みにきた・・・
すばやい・・・
母の中に、まだまだ機敏な動作は残っている・・・
食欲の秋かな、
油断大敵。